個人年金保険の魅力の一つに個人年金保険料控除がありますが、これを受けるためには「個人年金保険料税制適格特約」をつける必要があります。税制適格特約とはどのようなものか、デメリットはないのかなどについて紹介していきます。
目次
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個人年金保険料税制適格特約とは?
個人年金保険料税制適格特約とは、個人年金保険の保険料を生命保険料控除の中の個人年金保険料控除の対象とするための特約です。生命保険料控除の対象となる保険の保険料を払い込むと、その年に支払った保険料の金額に応じて所得控除を受けることができ、所得税や住民税が安くなります。
生命保険料控除には一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3つの枠がありますが、この特約をつけていないと個人年金保険料控除ではなく一般生命保険料控除の枠となってしまい、終身保険や学資保険などと保険料控除の枠がかぶってしまうことになります。それぞれの枠で年間の保険料が8万円が上限となるので、枠がかぶっていると所得控除を十分に活かせない可能性があります。
個人年金保険料税制適格特約の条件
個人年金保険料税制適格特約はどのような個人年金保険にもつけられるわけではなく、以下の条件を満たしている必要があります。
- 年金受取人が契約者またはその配偶者であること
- 年金受取人が被保険者と同一人であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であり、かつ年金の受取期間が10年以上であること
ちなみに、変額個人年金は一般生命保険料控除の方の対象となります。外貨建ての個人年金は上条件を満たして個人年金保険料税制適格特約をつければ個人年金保険料控除の枠になります。そうでなければ一般生命保険料控除の枠です。
途中でつけることはできる?
個人年金保険料控除は先ほど紹介した4つの条件を満たしていれば途中でつけることもできます。逆に言えば、すでに保険料を一時払で支払ってしまっている場合や年金の受取期間が5年など10年未満で固定されている場合には条件を満たすことができないので途中でつけるということはできません。
個人年金保険料控除税制適格特約を中途付加した場合、個人年金保険料控除の対象となるのは特約をつけた後に払い込んだ保険料のみです。それ以前に払い込んだ保険料については一般生命保険料控除の対象となります。
税制適格特約をつけるデメリットはある?
個人年金保険料控除を受けるために必要な個人年金保険料税制適格特約ですが、いくつかのデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか紹介します。
特約の条件を外れる契約内容の変更ができない
個人年金保険料税制適格特約をつけた後では、その前提となる4つの条件を満たさない契約内容に変更することができません。年金受取人を子供に変更したい、10年経っていない時点で保険料の残りを一時払で支払いたいというような要望はかなえられません。また、それゆえに10年以上の期間にわたって保険料を払い込んでいない場合は払済保険へ変更することができません。
配当金がある場合や減額などによる返戻金がある場合も即座に受け取れない
個人年金保険の契約により配当金がある場合や減額などで返戻金がある場合でも、保険料払込期間中には支払われず、増額年金の買い増しなどに充てられます。教育資金や住宅購入費用など他の資金に減額して得た解約返戻金を充てるというような使い方はできなくなるので注意してください。
税制適格特約だけの解約はできない
個人年金保険料税制適格特約のみを解約するということはできません。年金受取人を変更したい場合や解約返戻金を得たい場合などでは個人年金保険そのものを解約する必要があります。
個人年金保険料控除でどれくらい税金が安くなる?
個人年金保険料控除の対象となれば保険料の払込額に応じて所得控除を受けられ、所得税や住民税が安くなります。それではどの程度安くなるのか紹介します。
まずは保険料の払込でどれだけの所得控除を受けられるのか紹介します。個人年金保険料控除による控除額は以下の通りです。
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除金額 | 年間払込保険料額 | 控除金額 |
2万円以下 | 全額 | 1万2千円以下 | 全額 |
2万円超~4万円以下 | (払込保険料×1/2)+1万円 | 1万2千円超~3万2千円以下 | (払込保険料×1/2)+6千円 |
4万円超~8万円以下 | (払込保険料×1/4)+2万円 | 3万2千円超~5万6千円以下 | (払込保険料×1/4)+1万4千円 |
8万円超 | 一律4万円 | 5万6千円超 | 一律2万8千円 |
※2012年1月1日以降の契約分
例えば月5千円の保険料で年間6万円支払っているという場合は、所得税では3万5千円、住民税では2万8千円の所得控除を受けられます。月1万円で年間12万円という場合では、所得税で4万円の所得控除、住民税で2万8千円の所得控除を受けられます。
この控除額の分だけそのまま所得税・住民税が安くなるというわけではありません。所得税額や住民税額を計算するための所得を減らすものなので、実際に安くなる金額は控除額に税率をかけた金額です。住民税の税率は地域によって微妙に差異がありますが、全国的にほぼ10%となります。所得税の税率は課税所得によって異なります。所得税額の速算表は以下の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円超 4000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
※平成27年分以降の税率
参考:国税庁
例えば、課税所得が200万円の場合、本来は「195万円×5%+5万円×10%」と計算するのですが、計算が大変なので速算表を用いて「200万円×10%-97,500円」と計算します。計算に用いるのは課税所得金額なので給料などで得る年収と同じではなく、基礎控除や給与所得控除、社会保険料控除などの各種控除を引いたものです。
以上から個人年金保険料控除によって、所得税・住民税がどれだけ安くなるか計算したものが以下の表となります。なお、年間の払込保険料が8万円以上の場合で、住民税の税率は一律で10%としています。
課税所得 | 所得税軽減額 | 住民税軽減額 | 合計軽減額 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 2,000円 | 2,800円 | 4,800円 |
195万円超 330万円以下 | 4,000円 | 2,800円 | 6,800円 |
330万円超 695万円以下 | 8,000円 | 2,800円 | 10,800円 |
695万円超 900万円以下 | 9,200円 | 2,800円 | 12,000円 |
900万円超 1800万円以下 | 13,200円 | 2,800円 | 16,000円 |
1800万円超 4000万円以下 | 16,000円 | 2,800円 | 18,800円 |
4000万円超 | 18,000円 | 2,800円 | 20,800円 |
まとめ
個人年金保険料控除の対象となるには個人年金保険料税制適格特約をつける必要があります。この特約をつけないと一般生命保険料控除の枠となり、他に契約している保険と控除枠がかぶりやすくなってしまいます。いくつか制限がありますが、自分や配偶者の老後資金のために個人年金保険を契約するときには個人年金保険料控除の条件を意識して検討するとよいでしょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。