老後にいくら必要かが語られるとき、多くは夫婦二人での生活費が仮定されています。例えば、2019年に世間を大きくにぎわせた「老後資金2000万円問題」も高齢夫婦二人暮らしを仮定としていました。それでは独身で老後を過ごす場合にはいくら必要となるのでしょうか。独身の場合に必要となる老後資金とその貯め方について紹介します。
目次
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独身の場合に必要な老後資金は?
独身の場合に必要な老後資金を算出するために、何年生きるか(平均余命)、生活費はいくらかかるか、公的年金はいくらもらえるかを知る必要があります。結論としては、老後資金として男性は1100万円、女性は1380万円は必要となります。
何年生きるか(平均余命)
老後資金に必要な額を計算するためには平均余命を知る必要があります。生きる期間が長くなるほど老後に必要な金額も大きくなっていきます。なお、ここでは65歳以降を老後とします。
厚生労働省「令和5年簡易生命表」によると、65歳での平均余命は男性が19.52年、女性が24.38年です。ざっくりと、男性は65歳から20年間、女性は65歳から25年間生きるとして計算していくこととします。女性の方が長生きなので必要な老後資金も大きくなると考えられます。
生活費はいくらかかるか
次に、老後の生活費にいくらかかるかです。ここでは総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年」より高齢単身無職世帯の平均的な支出額を紹介します。あくまで平均ですが、一つの目安となるでしょう。
また、支出の項目は消費支出だけでなく税金等の非消費支出も紹介しますが、これも収入の額によって変わるものなので絶対的な金額ではないことに注意してください。
項目 | 月平均額 |
---|---|
食料 | 42,085円 |
住居 | 12,693円 |
光熱・水道 | 14,490円 |
家具・家事用品 | 6,590円 |
被服及び履物 | 3,385円 |
保険医療 | 8,640円 |
交通・通信 | 14,935円 |
教育 | 15円 |
教養娯楽 | 15,492円 |
その他消費支出 | 30,956円 |
消費支出合計 | 149,286円 |
直接税 | 6,585円 |
社会保険料 | 6,001円 |
非消費支出合計 | 12,647円 |
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年」
上表より、老後の消費支出は月に149,286円、非消費支出は12,647円かかることがわかります。なお、平均値であるため住居費が月に12,693円となっています。賃貸住宅の場合は家賃がもっと多くかかるでしょう。家賃は住む場所や専有面積などによって大きく変わりますが、「令和5年住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の単身世帯の1カ月当たりの家賃は44,183円です。持家ではなく賃貸で生活するという場合、消費支出は月に180,776円必要ということとなります。
公的年金はいくらもらえるか
老後に必要な生活費はすべて現役時代の貯蓄で賄うわけではありません。現役時に年金保険料をきちんと払っていれば国民年金・厚生年金が支給されます。公的年金がいくらもらえるのかは保険料を支払っていた期間や金額によりますが、令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、令和5年度末時点の厚生年金の平均年金月額は147,360円(基礎年金を含む)、国民年金の平均年金月額は57,700円です。
老後資金はいくら用意する必要がある?
それでは老後資金にいくら必要か計算します。老後に必要な生活費から公的年金の受給額を引いた金額が老後資金として用意する必要がある金額です。正確ではありませんが、支出は賃貸の場合で非消費支出も含めた金額、収入は厚生年金とします。
男性(賃貸・厚生年金):(180,776+12,647-147,360)円/月×12カ月×20年=11,055,120円
女性(賃貸・厚生年金): (180,776+12,647-147,360)円/月×12カ月×25年=13,818,900円
より、男性は1100万円、女性は1380万円は必要だという結果となりました。賃貸の更新費用や介護費、平均余命よりも長生きした場合などに備えると1500万円は用意するとよいでしょう。厚生年金ではなく国民年金だという場合や家賃がもっと高額だという場合には必要な金額はさらに必要になります。
老後資金はどうやって貯める?
老後に必要な約1000万円、介護や長生きした場合などに備えて1500万円をどのように貯めていくのがよいのでしょうか。老後資金の貯め方を紹介します。
収支の状況・目標を明確にする
まずは家計の収支の状況と月にいくら貯めればよいのかを明確にしましょう。何となく老後資金を貯めるつもりで貯金しているだけでは、なかなか必要な金額を貯めることはできません。現在月にいくら貯めることができているのか、目標とする金額にいくら足りないのかを明確にし、足りない金額については固定費を削る、無駄遣いをなくすなどして確保しましょう。
なお、勤めている会社で退職金が出る、65歳以降も働くことができるのであれば現役時に用意する必要がある金額は少なくなります。現在の稼ぎではどうしても貯められないという場合は退職金の有無や定年の時期、定年後も働けるかを確認してみましょう。
収入-貯蓄=生活費

生活費の余りを貯蓄するのではなく、収入から先に貯蓄額を引いて残りで生活をするようにしましょう。こうすることによって月によって貯蓄額がぶれることなく着実に貯蓄していくことができます。また、貯蓄はできるだけ崩しにくいもので行っていくとよいでしょう。意志が弱い人ほどお金を崩すのにひと手間必要であったり、すぐにお金を崩すと損してしまったりするようなもので貯めていくのがよいと思います。
いくつか候補を紹介しますので、参考にしてみてください。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、私的年金の一種で、毎月一定の掛け金を拠出して自分自身で運用し、その資産を60歳以降に年金または一時金で受け取る制度です。iDeCoは月額5,000円から始められ、掛け金の上限額は職業等で決められています(自営業:月額6万8000円、公務員:月額1万2000円など)。

運用というとリスクがある商品ばかりかと思いがちですが、定期預金などの元本確保型の金融商品でも運用することができます。ただし、手数料があるので必ず元本が確保できるというわけではないことに注意してください。
iDeCoのメリットとしては掛け金の全額が所得控除の対象となることが挙げられます。これにより、所得税や住民税の負担を軽くすることができます。また、原則として60歳まで引き出すことができないので途中で他のことに使ってしまうということが起こりません。ただし、これは急に大きな出費が必要となったときに対応しづらくなるというデメリットでもあるので注意してください。
NISA
NISAとは、日本在住で18歳以上の人を対象に、合計1800万円まで購入した株式・投資信託等から得られた運用益や配当・分配金が非課税となる制度です。2023年までの一般NISAとつみたてNISAが一本化され、2024年から新しい内容となっています。NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、年間の投資上限額は「つみたて投資枠」で120万円、「成長投資枠」で240万円まで非課税で投資することができます。
iDeCoで投資を行うのと比べたメリットとしては、年間の投資可能額がNISAの方が大きいこと、途中で資金を引き出すことができること、受取時に税金がかからないことが挙げられます。一方で、投資中の所得控除はないこと、60歳前に売却して引き出せる分、他の目的に使用してしまう可能性があることなどには注意が必要です。
個人年金保険
個人年金保険とは、 契約時に定めた保険料を支払っていき、一定の年齢になったら年金が受け取れる貯蓄型の保険です。何年間かけて積み立てるのか、一括で受け取るのか5年や10年と分けて年金を受け取るのかなど個人の事情に合わせて選ぶ事ができるのが一般的です。
個人年金保険のメリットでもありデメリットでもあることとして、契約時に利率が固定されて、途中解約や保険会社の倒産などがなければ決まった金額を受け取れるということがあります(変額個人年金や外貨建て個人年金などを除く)。金額が決まっているので将来の見通しが立てやすい一方で、インフレに弱く、物価が上昇した場合に受取額が実質的に目減りすることになります。
老後資金を貯めるうえでどれか一つの手段しか使えないということはないので、個人年金保険で老後資金のベースを作り、余裕資金を使ってiDeCoやNISAの枠内で投資にチャレンジするという方法も考えられるでしょう。
まとめ
独身の場合、老後資金として男性は1100万円、女性は1380万円は必要です。長生きした場合や介護費などに備えて、余裕をもって1500万円ほど用意しておくとよいでしょう。老後に必要なお金は「収入-貯蓄=生活費」の考え方を基本として、すぐに崩してしまいにくいiDeCoやNISA、個人年金保険などの貯蓄型の保険などで貯めていくと失敗せずに貯めていきやすいです。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。