介護が必要となる原因として最も多いのは認知症であり、また、2025年には高齢者の5人に1人は認知症になるという推計もあります。それでは、認知症の介護期間は平均してどれくらいになるのでしょうか?
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認知症の発症後の生存期間は平均5年~12年
認知症の生存期間に関する研究は様々にあり、その結果は研究ごとに異なりますが、おおむね5年~12年くらいの結果になっています。例えば、公益社団法人「認知症の人と家族の会」の調査では、認知症の介護年数は平均で6〜7年となっており、アメリカの60歳以上を対象とした調査では、認知症の診断がついた時点で平均余命は約5年となっています※1。
しかし、あくまでも平均の期間であり、10年以上生存するケースもあります。例えば、日本の久山町研究では、診断からの10年生存率はアルツハイマー病で18.9%、血管性認知症で13.2%、レビー小体型認知症では2.2%となっています※2。この研究によれば、アルツハイマー病の場合は6人に1人以上は診断から10年以上生存することになります。
※1 Larson EB, Shadlen MF, Wang L, McCormick WC, Bowen JD, Teri L, Kukull WA. Survival after initial diagnosis of Alzheimer disease. Ann Intern Med. 2004 Apr 6;140(7):501-9.
※2 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2009[PMID:18977814]
最期は肺炎や衰弱死など
認知症患者の直接的な死因としては肺炎が多いです。嚥下機能の低下により誤嚥性肺炎を起こしてしまいやすいです。一度肺炎を治すことはできても、根本的な原因を治すことはできず、誤嚥性肺炎を繰り返すことになります。また、他の最期のパターンとしては、認知機能が衰えて寝たきりとなり、食べ物を食べられなくなって衰弱死するというものもあります。このようにして死亡した場合、日本では死因は誤嚥性肺炎や老衰とされることが多く、統計上ではアルツハイマー病や血管性等の認知症の死因順位はそれぞれ9位、10位とそれほど高いわけではありません。(出典:令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況)
アルツハイマー病に関して、進行の段階についてニューヨーク大学のバリー・ライスバーグ博士により7段階の枠組みが考案されています。アルツハイマー病がどのように進行していくのか、これをもとに紹介します。
段階 | 症状 |
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段階1: 認知機能の障害なし | 認知能力に障害のない人は記憶能力の低下を経験しておらず、医療専門家との問診において問題がみられない。 |
段階2: 非常に軽度の認知機能の低下 | 度忘れしたように感じる。特に慣れていた言葉や名前、鍵やめがねなど、日常的に使用する物の置き場所などを忘れる。 しかしながら、これらの問題は健康診断において明白ではなく、友人、家族、あるいは同僚にとっても明白ではない。 |
段階3: 軽度の認知機能の低下 | このような症状を持つ人の一部が初期段階のアルツハイマー病として診断される。 友人、家族、同僚などが変化に気づき始める。 記憶あるいは集中力における問題が臨床試験で計測可能な場合がある、あるいは詳細な問診において識別される場合がある。 一般的には次のような困難が見られる:
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段階4: 中等度の認知機能の低下 | この段階では注意深い問診により次のエリアにおいて明白な障害が発見される:
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段階5: やや重度の認知機能の低下 | 記憶に主要な欠落箇所が見られ、認知機能における障害が見られる。 日常活動においてサポートが必要となる。 この段階では次のような症状が見られる:
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段階6: 重度の認知機能の低下 | 記憶障害が進行し、性格の大きな変化が見られたり、患者は通常の日常活動に大幅な手助けを必要とする。この段階では次のような症状が見られる:
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段階7: 非常に重度な認知機能の低下 |
これはアルツハイマー病の最終段階であり、患者は環境に反応したり、会話したり、最終的には体の動きを制御する能力を失う。 この段階でも単語や文章を口にする場合がある。 この段階の患者には、食事やトイレの使用を含めたほぼ全般に渡っての日常介護が必要である。 微笑んだり手助けなしに座ったり頭を正面に向けて保つことができなくなる場合もある。 異常な反射反応をとるようになる。 筋肉が硬直する。 嚥下に障害が出る。 |
出典:段階(Alzheimer's Association)
認知症の医療費・介護費は?
もし認知症になった場合、医療費や介護費でどれくらいの費用がかかるのでしょうか。慶応大学と厚生労働科学研究の共同研究グループによる推計から紹介します。
医療費
認知症に関する医療費として、1人あたりの入院医療費は34万4300円/月、外来医療費は3万9600円/月かかります。これは、全国の医療保険のレセプトデータから推計されています。
なお、この費用が全額自己負担となるわけではありません。所得水準によって1割~3割負担となります。また、高額療養費制度を利用することで、1カ月の医療費の自己負担額には上限が設けられます(上限額は70歳以上か否かと所得によって変わります)。
介護費
認知症に関連する介護サービス利用者1人当たりの介護費は、在宅介護費219万円/年、施設介護費353万円/年です。なお、公的介護保険による自己負担額は、1割~3割です。所得水準によって自己負担割合は変わります。また、医療費と同様に高額介護(介護予防)サービス費によって月の自己負担額に上限が設けられています。自己負担額の上限を超えた分については払い戻されます。高額介護サービス費による月の負担の上限は以下の通りです。
対象 | 負担の上限(月額) |
---|---|
世帯のどなたかが市区町村税を課税されている方 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市区町村税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市区町村税を課税されていなく、 ・合計所得金額と課税年金収入額の合計額が80万円以下の方 ・老齢福祉年金を受給している方 |
24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方など | 15,000円(個人) |
インフォーマルケアコスト
インフォーマルケアとは、家族等が無償で実施するケア(介護)のことです。認知症の介護者を対象とした調査票による調査でインフォーマルケア時間を推計し、それに市場で購入していたら発生していた代替費用や介護の時間を労働に充てていたら得られるであろう賃金を組み合わせて計算した介護単価をかけてインフォーマルケアコストを推計しています。
この結果、インフォーマルケアにかかる時間は要介護者1人あたり24.97時間/週、インフォーマルケアコストは要介護者1人あたり382万円/年と推計されています。
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2025年には高齢者の5人に1人は認知症に…医療費・介護費はいくらかかる?
近年、高齢化の進展とともに認知症の高齢者の数が増えていて、今後も増加していくことが予想されています。2000万円という数字が独り歩きしてしまった感のある、いわゆ ...続きを見る
まとめ
認知症発症後の生存期間は研究によって結果が異なるものの、おおむね平均5年~12年くらいの結果になっています。あくまでも平均なのでもっと早く死亡してしまう場合もありますし、もっと長く生きる場合もあります。認知症患者の最期としては肺炎や食事をとらなくなって衰弱死という形が多いです。アルツハイマー病の病状の進行についてはニューヨーク大学のバリー・ライスバーグ博士が考案した7段階の枠組みを参考にするのがよいでしょう。また、認知症になると医療費や介護費として多くのお金がかかります。全額自己負担が必要なわけではないですが、貯蓄が十分にない場合は民間の介護保険などで備えておくとよいでしょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。