近年、高齢化の進展とともに認知症の高齢者の数が増えていて、今後も増加していくことが予想されています。2000万円という数字が独り歩きしてしまった感のある、いわゆる「老後2000万円報告書」においても認知症の人の増加が一つの問題として取り上げられています。今後、認知症の人はどれくらい増えるのでしょうか。また、認知症になってしまった場合、医療費・介護費としてどれくらいかかるのでしょうか。
どんな保険が必要か、いくらの保障が必要なのか分からない方へ
簡単な質問に答えるだけで、あなたに必要な備えと保障金額がすぐにわかります。
最短1分、無料でご利用可能ですので、ぜひお試しください!
\自分に必要な保障がわかる!/
2025年には65歳以上の5人に1人は認知症に
近年、高齢化の進展に伴って認知症の人の数が増えてきています。2012年における65歳以上の認知症の人は約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)と推計されていますが、2025年には認知症の人は約700万人、65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症となることが推計されています。
また、認知症には至らないものの正常な物忘れよりも記憶などの能力が低下している、いわゆる軽度認知症(MCI)の高齢者も2012年時点で約400万人と推計されています。認知症の人と合わせると2012年時点で65歳以上の約4人に1人が認知・判断能力に何らかの問題を抱えていることとなります。
出典:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)
認知症にかかる費用は?
もし認知症になった場合、医療費や介護費でどれくらいの費用がかかるのでしょうか。慶応大学と厚生労働科学研究の共同研究グループによる推計から紹介します。
医療費
認知症に関する医療費として、1人あたりの入院医療費は34万4300円/月、外来医療費は3万9600円/月かかります。これは、全国の医療保険のレセプトデータから推計されています。
なお、この費用が全額自己負担となるわけではありません。所得水準にもよりますが、70歳以上75歳未満の高齢者は2割負担、75歳以上の後期高齢者は1割負担となります。また、高額療養費制度を利用することで、1カ月の医療費の自己負担額には上限が設けられます。毎月の上限額は70歳以上か否かや所得水準によって分けられています。70歳以上の方の上限額は以下のようになっています。
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合 | |
---|---|---|---|
外来(個人ごと) | 入院および外来(世帯ごと) | ||
年収約1160万円以上の所得者 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:課税所得690万円以上 |
252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 | |
年収約770万円~約1160万円の所得者 健保:標準報酬月額53万~79万円 国保:課税所得380万円以上 |
167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 | |
年収約370万円~約770万円の所得者 健保:標準報酬月額28万~50万円 国保:課税所得145万円以上 |
80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 | |
年収156万~約370万円の所得者 健保:標準報酬月額26万円以下 国保:課税所得145万円未満等 |
18,000円 (年間上限14万4千円) |
57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 8,000円 | 24,600円 | - |
住民税非課税者 (年金収入80万円以下など) |
8,000円 | 15,000円 | - |
介護費
認知症に関連する介護サービス利用者1人当たりの介護費は、在宅介護費219万円/年、施設介護費353万円/年です。なお、公的介護保険による自己負担額は、1割~3割です。所得水準によって自己負担割合は変わります。また、医療費と同様に高額介護(介護予防)サービス費によって月の自己負担額に上限が設けられています。自己負担額の上限を超えた分については払い戻されます。高額介護サービス費による月の負担の上限は以下の通りです。
対象 | 負担の上限(月額) |
---|---|
世帯のどなたかが市区町村税を課税されている方 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市区町村税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市区町村税を課税されていなく、 ・合計所得金額と課税年金収入額の合計額が80万円以下の方 ・老齢福祉年金を受給している方 |
24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方など | 15,000円(個人) |
インフォーマルケアコスト
インフォーマルケアとは、家族等が無償で実施するケア(介護)のことです。認知症の介護者を対象とした調査票による調査でインフォーマルケア時間を推計し、それに市場で購入していたら発生していた代替費用や介護の時間を労働に充てていたら得られるであろう賃金を組み合わせて計算した介護単価をかけてインフォーマルケアコストを推計しています。
この結果、インフォーマルケアにかかる時間は要介護者1人あたり24.97時間/週、インフォーマルケアコストは要介護者1人あたり382万円/年と推計されています。
認知症保険で費用負担に備える
最近では、民間の保険会社から認知症保険と呼ばれる商品が販売されています。認知症を発症したときに一時金を受け取れるなど介護等に多くの費用がかかる認知症に備えることができる保険です。保険商品によっては、認知症の予防・早期発見に役立つサービスを受けることができるものもあります。
保険金を受け取れる条件は保険会社や商品によっても異なりますので、各商品の条件をしっかりと確認するようにしましょう。
まとめ
高齢化の進展で認知症の患者数は増加しており、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるという推計もあります。このように、決して他人ごとではない認知症ですが、認知症になると医療費・介護費で多くの費用がかかります。また、介護のために転職したり労働時間を抑えたりして収入が減ることも考えられます。多くの時間・費用がかかる認知症の介護に備えて認知症保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。
-
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。