近年、高齢者の心身の衰えを表す言葉として「フレイル」という単語が使われるようになってきました。超高齢化が進む日本では重要なキーワードであるフレイルですが、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか?また、フレイルを予防するにはどのようなことができるのでしょうか?
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フレイルとは
フレイルとは、加齢とともに運動機能や認知機能などが低下して、慢性疾患などの影響もあり、生活機能障害や要介護状態、死亡などに陥りやすい状態のことです。健常な状態から要介護状態へと移る中間の段階といえます。
海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty」という単語がもととなっており、日本語に直訳すると「虚弱」や「老衰」、「衰弱」などとなりますが、適切に介入・支援すれば生活機能の維持向上が可能であることから不可逆というイメージをつけないよう、「フレイル」と日本語訳することが日本老年医学会により提言され、これが使われています。
フレイルの3要素
加齢による衰えというと身体的な衰えをイメージしがちですが、フレイルは「身体的要素」のほかに認知症やうつなどの「精神的・心理的要素」、孤独や経済的困窮などの「社会的要素」によって構成されます。これらの要素が相互に影響しあうことでよりフレイルの状態が進んでいき、そのまま改善できないと転倒や骨折、慢性疾患の悪化をきっかけに要介護状態へと進む可能性が高くなります(フレイルサイクル)。
フレイルサイクルの例
- 高齢になり社会との関係が希薄になる
- 行動範囲が狭くなり、閉じこもりがちになる
- 筋力の低下により身体機能が衰える
- 疲れやすく出かけるのが億劫になる
- ますます閉じこもりがちになる
- 運動量が少なくなり食事量が減る
- 栄養が十分に取れず筋力が落ちる
- ますます活動量や社会的交流が減る
「コロナフレイル」が心配されています
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、外出の自粛が求められる状態が続いています。社会的交流が減ってしまったり、動かない時間が増えたりしているため、高齢者のフレイルの進行が心配されている状況です。要介護状態へと陥らせないためにも家族や親せき、周囲の方が気にかけてあげてフレイルの負の連鎖を止めることが大切です。
フレイルの基準は?
フレイルの判定基準はいくつかありますが、国際的にはFriedらによるCHS基準がよく使われています。日本ではCHS基準をもとに日本人高齢者に合うように修正したJ-CHS基準が作成されています。
日本版CHS基準(J-CHS基準)
3項目以上に該当:フレイル、1~2項目に該当:プレフレイル、該当なし:健常
項目 | 評価基準 |
---|---|
体重減少 | 6か月で2kg以上の(意図しない)体重減少 |
筋力低下 | 握力:男性<28kg、女性<18kg |
疲労感 | (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする |
歩行速度 | 通常歩行速度<1.0m/秒 |
身体活動 | ①軽い運動・体操をしていますか? ②定期的な運動・スポーツをしていますか? 上記の2つのいずれにも「週に1回もしていない」と回答 |
出典:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター フレイル研究部
サルコペニア・ロコモとの違いは?
高齢者の身体機能の衰えを表す言葉としては「サルコペニア」や「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」もあります。これらとフレイルとの違いは、サルコペニアやロコモが身体機能のみに関する言葉であるのに対し、フレイルは精神・心理的側面や社会的側面も含んだ概念となっています。
サルコペニア
サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉を表す「sarx(sarco)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせてできた造語です。加齢や疾患により筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態を示す言葉です。歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるといった症状が現れます。フレイルの身体的要素に影響を及ぼす状態の一つです。
ロコモ
ロコモとはロコモティブシンドロームの略で、日本整形外科学会が2007年に提唱した言葉です。「運動の」という意味の「locomotive」と「症候群」という意味の「syndrome」から成っています。人間が立つ、歩く、作業するといった運動のために必要な骨・関節・筋肉・神経などの障害で、立ったり歩いたりするための身体能力が低下した状態がロコモです。サルコペニアと同様、フレイルの身体的要素に影響を及ぼす状態の一つです。
フレイルを予防するには
フレイルは身体的要素、精神的・心理的要素、社会的要素が影響します。ありきたりではありますが、食事・運動・社会的交流がフレイルの予防に重要となります。加えて慢性疾患がある場合はその悪化をさせないこと、口腔ケアも気をつけるようにしましょう。
持病を悪化させない
持病として糖尿病や心臓疾患、呼吸器疾患など慢性疾患がある場合はそれを悪化させてしまわないように気をつけましょう。持病の悪化は心身ともに弱くなる原因となり、フレイルの進行につながります。かかりつけ医などと相談して持病を悪化させないような生活を心がけるようにしましょう。
バランスの良い食事
加齢で食が細くなると毎日きちんと食べていても栄養が不足してしまうことも多いです。低栄養の状態が続くと筋肉量の低下で運動量も減ったり基礎代謝が落ちたりして食べる量が減り、ますます栄養不足の状態に陥ってしまう場合があります。意識的に1食の中で「主食・主菜・副菜」をそろえて食べるようにして、バランスの良い食事を心がけましょう。
また、高齢者はたんぱく質が不足しがちです。たんぱく質は筋肉の維持に重要です。日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、「フレイル及びサルコペニアの発症予防を目的とした場合、高齢者(65 歳以上)では少なくとも 1.0 g/kg 体重/日以上のたんぱく質を摂取することが望ましいと考えられる。」と書かれています。つまり、体重50kgの高齢者の場合は1日に50g以上のたんぱく質を摂ることが望ましいです。肉や魚、乳製品、豆類を意識して食べるようにしましょう。
口腔ケア
加齢によって歯が抜けるなどすると、硬いものが食べられなくなったり、食べ物をうまく飲み込めなくなったりすることがあります。そこから低栄養へとつながり、フレイルへと進むことにもなります。自分の歯を80歳になっても20本以上残せるように、しっかり噛んで食べるようにし、食後の歯磨きや定期的な歯科医の検診も忘れずに行いましょう。また、口周りの筋肉の衰えを防ぐためにも歌を歌ったり早口言葉を練習したりするのもよいでしょう。
定期的な運動
筋肉の維持のためにも無理のない範囲で定期的な運動を続けましょう。激しいトレーニングは必要なく、むしろ身体を痛めて十分に動けなくなり逆効果となることも考えられます。フレイル予防のための運動としては、ウォーキングや水泳などの有酸素運動とスクワットや上体おこしなどの筋力トレーニング、片足立ちなどのバランストレーニングを行うとよいでしょう。コロナ禍では難しいかもしれませんが、一緒に運動できるウォーキング仲間などがいると次に紹介する社会的交流も含めてより効果的です。
社会的交流
社会とのつながりが薄れて家に閉じこもりがちになると運動量が減り、身体的フレイルへとつながります。また、社会との交流は認知機能を保つのにも効果的です。自分が趣味としているもののサークル活動や地域のボランティアなどに参加してみるとよいでしょう。フレイルサイクルで社会との交流が希薄になるところからスタートした例を紹介しましたが、逆に社会的交流を行えば自然と運動量が増えるなど好循環も期待できます。義務感から参加するのは精神的に良くないので、楽しんで参加できるものを見つけられるとよいでしょう。
まとめ
フレイルは健常な状態から要介護状態へと移る中間の状態ともいうことができ、身体的・精神的・社会的に弱さを抱えた状態です。フレイルの状態が続くと転倒や骨折などをきっかけとして要介護状態へと陥ってしまいやすくなります。しかし、「虚弱」という日本語訳を避けて「フレイル」と訳したように、フレイルは不可逆の状態ではありません。意識的にバランスの良い食事、定期的な運動、社会的交流を行うようにしましょう。家族の方や近所の方もそれとなく気にかけてあげるとよいでしょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。