終身保険に加入するときに決めなければならないものの一つに保険金の受取人を誰にするかということがあります。何を目的に加入するか、誰にお金を残したいかによっておのずと決まる項目ではありますが、契約者と受取人の関係で保険金の受取にかかる税金の種類が変わります。税金面ではどのような形だと一番得になるのでしょうか。
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受取人を誰にするかで税金が変わる
終身保険で保険金を受け取った場合は税金がかかりますが、どのような税金がかかるかは契約者と保険金受取人の関係によって変わります。かかる税金の種類は以下の表の通りです。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻や子 | 相続税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税(一時所得) |
相続税の対象となる場合
契約者=被保険者≠受取人の場合、受取人が受け取った保険金は相続税の課税対象となります。夫が自分の死亡後の生活のために妻や子供に保険金を遺すようなケースです。
相続人が受け取った死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があり、これを超えた分についてが課税対象となります。また、死亡保険金の非課税枠を超えたとしても相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)があります。相続税の一般的な計算方法については国税庁のサイトをご確認ください。
贈与税の対象となる場合
契約者≠被保険者≠受取人の場合、受け取った保険金は贈与税の課税対象となります。夫が妻の死亡時に備えて、あるいは妻が夫の死亡時に備えて契約し、保険金の受取人を子供としているようなケースです。
暦年課税の場合、贈与税には110万円の基礎控除があります。保険金以外に1月から12月の1年間で受け取った財産と合算して110万円以下であれば贈与税はかかりません。110万円を超えていた場合は110万円を引いた後の金額に応じて10%~55%の税率で贈与税がかかります。
所得税の対象となる場合
契約者=受取人≠被保険者の場合、受け取った保険金は所得税(一時所得)の課税対象となります。夫が妻の死亡時に備えて、あるいは妻が夫の死亡時に備えて契約し、保険金の受取人を自分としているようなケースです。
他に一時所得がない場合、保険金と支払った保険料の累計の差額から特別控除50万円を引いた金額が一時所得となり、一時所得の1/2が総所得金額に算入されて他の所得と合わせて所得税の税額が決まります。所得税の税率は課税される所得金額に応じて5%~45%の7段階に区分されています。
どのように契約すると税金が少なくなる?
上述の通り、契約者・被保険者・受取人の関係によって保険金にかかる税金の種類が変わります。受け取れる保険金が同じであっても税負担によって実質的に受け取れる保険金の額は大きく変わります。どのように契約すると税金が少なくなるかというと、一般的には相続税の対象となる契約者=被保険者≠受取人のケースが一番税金が少なくなります。
その理由は、非課税枠の存在や基礎控除の大きさにあります。死亡保険金を受け取る人が相続人である場合、500万円×法定相続人の数の金額が非課税となります。保険金がこれを超える場合でも、超えた部分の金額と他の相続財産の合計が3000万円+600万円×法定相続人の数という相続税の基礎控除の金額以下である場合は相続税がかかりません。さらには、配偶者が受け取った相続財産は1億6000万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額分までは相続税はかかりません。
このように、非課税となる金額や基礎控除の大きさから相続税の課税対象となる形が税金が少なくて済むケースが多いと考えられます。
リビング・ニーズ特約には注意が必要
リビング・ニーズ特約とは、被保険者が余命6カ月以内と診断された場合に死亡保険金の一部または全部(上限3000万円)を生前給付金として受け取れる特約です。死亡時には、リビング・ニーズ特約で受け取った分については保険金から減額されます。
リビング・ニーズ特約で受け取った保険金は非課税です。しかし、受け取った保険金を死亡するまでに使い切れなかった場合には相続税の課税対象となります。そして、リビング・ニーズ特約で受け取った分については死亡保険金の相続税の非課税枠の対象とはなりません。相続税の面だけから考えると、リビング・ニーズ特約で使い切れないほどの保険金を受け取るのは避けた方がよいでしょう。
保険金の受取人は変更できる?
結婚した場合や離婚した場合など契約した当初と家族の状況が変わった場合、保険金を遺したい人が変わることがあると思います。そのような場合、契約者は被保険者の同意があれば保険金の受取人を変更することができます。保険会社に連絡して必要書類を提出してください。また、法的に有効な遺言でも死亡保険金の受取人を変更することができます。ただし、被保険者の同意が必要であり、法的に有効な遺言書の作成もひと手間必要であることから、できる限り生前に変更手続きをした方がよいでしょう。
離婚した場合は?
離婚した場合、終身保険の解約返戻金は財産分与の対象となります。財産分与が行われて解約が必要となった場合は、解約してしまうので受取人の変更の問題は生じません。
一方で終身保険を契約したままとなった場合、受取人が配偶者となっている終身保険は受取人の変更が必要です。そのまま契約を続けると、死亡時に元配偶者に保険金が支払われることとなります。変更後の受取人は親や子供にすることが多いですが、兄弟など2親等以内の血族にすることも可能です。また、再婚した場合は必要に応じて再婚後の配偶者に受取人を変更しましょう。
受取人が死亡した場合は?
受取人が死亡してしまった場合は速やかに受取人の変更が必要です。契約する保険会社に連絡して受取人の変更の手続きをすすめましょう。変更の手続きをする前に被保険者が亡くなってしまった場合は受取人の法定相続人が保険金を受け取ることとなります。法定相続人が複数いる場合、それぞれの法定相続人が均等に保険金を受け取ります。法定相続割合に従うのではなく均等に配分されることに注意してください。
まとめ
終身保険の保険金の受取にかかる税金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって変わります。契約者=被保険者≠受取人の場合は相続税、契約者≠被保険者≠受取人の場合は贈与税、契約者=受取人≠被保険者の場合は所得税(一時所得)の対象となります。非課税枠と基礎控除の大きさから相続税の対象となる形での受取が税金が一番少なることが多いです。
保険金の受取人は被保険者の同意があれば変更することができます。結婚や離婚、受取人の死亡などで受取人の変更の必要が生じた場合には保険会社に連絡して受取人の変更の手続きを行いましょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。