終身保険の大きな目的として、自分に万が一のことがあったときに遺された家族が生活に困らないようにするということがあります。終身保険は貯蓄目的で入ることもありますが、死亡保障の必要性が薄い独身の場合でも終身保険に入る必要はあるのでしょうか。死亡保障目的と貯蓄目的とに分けて説明します。
目次
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基本的に高額な死亡保障は不要
死亡保障を目的とする場合、独身者は自身が亡くなったとしてもそれによって生活に困る人がいるということはほとんどないと思います。誰かに大きなお金を残さなければならないということがなければ、死亡保障を目的として終身保険に入る必要性は薄いでしょう。
独身の方で死亡保障を目当てに終身保険に入るのは葬儀費用目的であることが多いです。せめて葬儀費用で迷惑をかけないようにしたいという気持ちから加入するようです。そうした場合、死亡保障は200万円程度で十分でしょう。もちろん、貯蓄が十分にあって葬儀費用くらいで迷惑をかけることはないという場合や他の手段で用意ができるという場合は死亡保障目的で終身保険に入る必要性はほぼないといえます。
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子供がいる場合などは死亡保障が必要
独身であっても、母子家庭や父子家庭など子供がいる家庭の場合や両親に仕送りをしていて自分が亡くなった場合に両親が経済的に困窮するというような場合は死亡保障が必要といえるでしょう。特に、子供は基本的に自分で稼ぐということができないので、母子家庭や父子家庭の場合は死亡保障の必要性が高いです。終身保険に限る必要はなく、収入保障保険など他の死亡保障のある保険でもよいですが、何らかの死亡保険は検討するのをおすすめします。
一点注意が必要なこととして、保険金の受取人を誰にするかということがあります。基本的にお金を遺したい人でよいのですが、受取人が未成年の場合は保険金請求の手続きができません。他の親権者や未成年後見人が行う必要があります。未成年後見人は自分の意思とは異なる人が選定されることもあるので、そうしたリスクを避けるのであれば子供が成人するまでは信頼のおける他の人を受取人にしておくというのも一つの手です。また、高齢な親を受取人にした場合は認知症のリスクを考える必要があります。認知症となってしまって保険金の請求ができないことも考えられるので、信頼のおける人を指定代理請求人に設定するなどのカバーをしておきましょう。
貯蓄目的の場合は他の手段と比較しよう
終身保険は死亡保障目的ではなく貯蓄目的で加入することもあります。保険料払込期間を10年や15年、あるいは60歳までなどと設定して、保険料払込期間満了後に解約することで大きな解約返戻金を得るのです。加入期間が長くなるほど解約返戻金の額も上がり、また自分で解約時期を選ぶことができるというメリットがありますが、保険料払込期間中に解約すると支払った保険料よりも少ない金額しか得られないというデメリットもあります。
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貯蓄目的として終身保険に加入することを検討する場合、インフレに弱い、短期間の貯蓄には向かないといったデメリットもあるので他の貯蓄の手段とも比較するのがよいでしょう。参考までに銀行預金やつみたてNISAでの投資との比較を紹介します。
銀行預金との比較
終身保険と銀行預金とでどちらが増えるかは期間によります。短期間であれば銀行預金が有利で長期間であれば終身保険が有利です。終身保険は早期解約した場合は保険料払込総額よりも少ない額しか解約返戻金を得られません。銀行預金の利率は非常に低いですが、現時点ではマイナスにはなっていないので短期間であれば銀行預金が有利です。しかし、保険料払込期間終了以後に解約するのであれば終身保険の方が利率が高いことが多いです。
つみたてNISAとの比較
金融庁が力を入れているつみたてNISAとも比較します。つみたてNISAとは少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。長期の積立・分散投資に適した投資信託を対象として、毎年40万円を上限に購入した投資信託の分配金と値上がり益について購入してから20年間非課税となる制度です。
つみたてNISAで購入する投資信託は利率の期待値でいうと終身保険よりも高いことが多いです。しかし、あくまでも期待値であってそれを上回ることも下回ることもあり得ます。マイナスになる可能性もあります。それに対して終身保険は外貨建てや変額などの商品を除いて契約時に将来の返戻率が決まります。そのため、20年後に絶対にこの金額が必要だというように使う時期と金額が決まっている場合は終身保険が有利といえます。しかし、金額の変動を許容することができ、低い利率で固定されてしまうことを嫌うのであればつみたてNISAの方が有利でしょう。
終身保険以外の保険は?
終身保険以外の保険についても独身の場合に必要なのか考えてみます。
個人年金保険
個人年金保険は老後資金を貯めるために使われることが多い保険です。現役の間に保険料を支払い、老後に年金形式で保険金を受け取ります。老後資金については婚姻状況にかかわらず考える必要があります。老後資金は個人年金保険でなくても用意することができますが、自分で貯蓄していくのが苦手だという人や投資に忌避感がある人は豊かな老後の生活のためにも加入を検討してみてもよいでしょう。
がん保険
がん保険はがんとなってしまったときの医療費や生活費の負担に備える保険です。独身ならがんにならないということはないので、がんになったらどうするのかは考えておく必要があるでしょう。しかし、日本には高額療養費制度があるので自己負担額には一定の金額で収まります。貯蓄が十分にあるのであればがん保険で備えなければならないということはありません。貯蓄があまりなく、がん治療のための支出の増加や収入の減少に耐えられそうもないという場合はがん保険の加入を考えてみるとよいでしょう。
就業不能保険
就業不能保険は病気やケガで長期間働けなくなった場合に備える保険です。病気やケガで60日間などの一定期間を超えて保険会社が定める働けない状態であった場合に、回復するまで毎月保険金を受け取ることができます。独身であっても病気やケガで働けなくなる可能性はあります。貯蓄が十分になく、そうした場合の備えが何もないという場合は加入を検討してみてもよいでしょう。特に自営業者やフリーランスの方は傷病手当金がないので「働けない=無収入」の危険性がより高いです。何らかの備えはしておいた方がよいでしょう。
まとめ
終身保険は死亡保障目的と貯蓄目的で入ることがあります。死亡保障について、独身の場合、子供や両親を養っているということがなければ大きな死亡保障は必要ありません。貯蓄が少ない場合に葬儀費用目的で加入することを検討する程度でしょう。貯蓄目的の場合は、他の貯蓄手段と比較したうえで、長期間加入すれば銀行預金よりも大きな利率を得られることが多い、株式投資や投資信託のように資金が必要な時期にマイナスとなっているという可能性を小さくできるということなどに利点を感じるのであれば加入を検討してみるのもよいでしょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。