入院が長引いた場合、医療費の負担が増えていくだけでなく収入減少のダメージも大きくなってきます。しかし、最近は入院日数が短くなってきているという話を聞くこともあります。長期入院に備える保険は必要なのでしょうか?
目次
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長期入院が必要となる割合はどれくらい?
厚生労働省「令和2年患者調査」によると、入院日数の平均は32.3日です。「入院日数が短くなってきている」と聞いたことがある人もいるかと思いますが、調査結果の推移を見てみると実際に入院日数が短くなっている傾向にあることが分かります。
しかし、入院日数の平均が下がっているからといって長期入院の可能性がなくなったというわけではないです。同じく、厚生労働省「令和2年患者調査」から入院期間の割合を調査したものが以下のグラフとなります。
大半は14日以内の入院ですが、入院日数が1か月以上にわたる人も約13%います。高齢者の方が入院日数が長くなる傾向がありますので、若いうちは短期間の入院がより増えますが長期間の入院が全くないわけではないというのは変わりません。15~34歳でも約3%、35~64歳では約7%が1か月以上の入院となります。
0~14日 | 15~30日 | 1~3月 | 3~6月 | 6月以上 | 不詳 | |
---|---|---|---|---|---|---|
15~34歳 | 89.1% | 5.8% | 3.8% | 0.5% | 0.6% | 0.3% |
35~64歳 | 77.8% | 15.5% | 7.5% | 1.3% | 1.2% | 0.1% |
65歳以上 | 58.9% | 19.4% | 16.5% | 2.8% | 2.2% | 0.1% |
全年齢 | 66.5% | 16.3% | 13.0% | 2.2% | 1.8% | 0.1% |
出典:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査」を加工
入院が長期になりやすい傷病は?
どのような病気やケガが長期の入院となりやすいのでしょうか?平成29年患者調査より、傷病分類別にみた平均日数が全体平均の32.3日より長い傷病を紹介します。
傷病分類 | 総数 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 |
---|---|---|---|---|---|
総数 | 32.3 | 8.9 | 11.1 | 12.2 | 40.3 |
呼吸器系の疾患 | 34.5 | 8.2 |
8.9 |
15.3 |
42.9 |
肺炎 | 38.0 | 7.0 | 15.5 | 21.9 | 41.0 |
骨折 | 38.5 | 5.5 | 10.6 | 21.3 | 46.2 |
循環器系の疾患 | 41.5 | 17.7 | 26.3 | 25.3 | 45.8 |
高血圧性疾患 | 47.6 | 6.3 | 25.2 | 10.7 | 83.6 |
慢性閉塞性肺疾患 | 52.7 | 38.7 | 12.8 | 15.3 | 55.1 |
慢性腎臓病 | 53.4 | 29.7 | 25.7 | 25.3 | 66.8 |
結核 | 59.5 | 3.2 | 36.6 | 38.7 | 66.8 |
脳血管疾患 | 77.4 | 31.3 | 61.7 | 51.8 | 83.6 |
神経系の疾患 | 83.5 | 11.8 | 32.5 | 50.4 | 118.6 |
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) | 137.4 | 42.5 | 40.1 | 116.7 | 193.5 |
アルツハイマー病 | 273.0 | ― | 159.7 | 190.1 | 274.6 |
精神及び行動の障害 | 294.2 | 32.5 | 69.3 | 214.9 | 497.1 |
血管性及び詳細不明の認知症 | 312.0 | - | 109.0 | 271.0 | 313.7 |
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 | 570.6 | 60.3 | 153.3 | 334.4 | 1,147.7 |
出典:厚生労働省「令和2年患者調査」表6 傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数
入院時の自己負担・収入減はどれくらい?
上で紹介した通り、長期入院は少ないとはいえ可能性として十分に考えられる範囲です。長期入院の可能性があるとすると気になってくるものに長期入院時の費用があります。あまりかからないのであれば特別備える必要もありませんが、多くの費用がかかるのであれば何かしらの備えをしておく必要性が生じます。また、長期入院時には治療費などの負担だけではなく働けないことによる収入の減少も考えられます。どれくらいの自己負担額および逸失収入が発生するのか、生命保険文化センターの生命保険文化センター「令和4年度『生活保障に関する調査』」より紹介します。
生命保険文化センター「令和元年度『生活保障に関する調査』」によると、過去5年以内に入院し、自己負担費用を払った人の入院日数別の入院時の自己負担と逸失収入の合計は以下の通りです。
n | 平均 | 5万円未満 | 5~10万円未満 | 10~20万円未満 | 20~30万円未満 | 30~50万円未満 | 50~100万円未満 | 100万円以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 510 | 7.6% |
23.3% |
32.0% | 13.7% | 10.8% | 7.5% | 5.1% | 26.8万円 |
5日未満 | 104 | 9.6万円 | 22.1% | 39.4% | 25.0% | 11.5% | 1.0% | 1.0% | 0.0% |
5~7日 | 143 | 18.9万円 | 4.2% | 29.4% | 35.0% | 15.4% | 11.2% | 3.5% | 1.4% |
8~14日 | 119 | 26.3万円 | 5.9% | 21.0% | 38.7% | 14.3% | 9.2% | 5.0% | 5.9% |
15~30日 | 101 | 38.6万円 | 2.0% | 8.9% | 33.7% | 12.9% | 19.8% | 12.9% | 9.9% |
31~60日 | 29 | 44.8万円 | 3.4% | 6.9% | 20.7% | 17.2% | 20.7% | 20.7% | 10.3% |
61日以上 | 10 | 96.5万円 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0.0% | 50.0% | 30.0% |
※自己負担費用は治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
※自己負担費用がない場合、逸失収入がない場合は0円として平均を算出
出典:生命保険文化センター「令和4年度『生活保障に関する調査』」
長期入院時には自己負担費用と逸失収入を合わせて数十万円の負担が必要となることが分かります。10人の結果ではありますが、入院日数が61日以上の場合は10人中3人が自己負担額と逸失収入の合計が100万円以上となっています。こうした費用を貯蓄から出せない、出せはするけれども家計に与えるダメージが大きいという場合は長期入院に備えた保険を検討してみましょう。
公的保障はどのようなものがある?
そもそもとして公的保険により医療費が3割負担となっていますが、長期の入院となると自己負担額が大きくなりがちです。長期間の入院が必要となったときにどのような公的保障を受けられるのか紹介します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた分について後で払い戻しがされる制度です。事前に医療費が高額になることがわかっている場合は、病院に「限度額適用認定証」を提示することで支払金額を自己負担限度額までに抑えることも可能です。
自己負担限度額
自己負担限度額は年齢や所得区分に応じて以下の表のように設定されています。
70歳未満の自己負担限度額
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合 |
---|---|---|
年収約1160万円以上の所得者 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:年間所得※901万円超 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
年収約770万円~約1160万円の所得者 健保:標準報酬月額53万~79万円 国保:年間所得※600万~901万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
年収約370万円~約770万円の所得者 健保:標準報酬月額28万~50万円 国保:年間所得※210万~600万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
年収約370万円以下の所得者 健保:標準報酬月額26万円以下 国保:年間所得※210万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
※年間所得とは、「旧ただし書き所得」のことで、前年の総所得金額と山林所得、株式の配当所得、土地・建物等の譲渡所得金額などの合計から基礎控除(33万円)を除いた額です。 ただし、雑損失の繰越控除額は控除しません。
70歳以上の自己負担限度額(平成30年8月以降)
70歳以上については外来だけの上限額も設けられています。
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合 | |
---|---|---|---|
外来(個人ごと) | 入院および外来(世帯ごと) | ||
年収約1160万円以上の所得者 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:課税所得690万円以上 |
252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 | |
年収約770万円~約1160万円の所得者 健保:標準報酬月額53万~79万円 国保:課税所得380万円以上 |
167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 | |
年収約370万円~約770万円の所得者 健保:標準報酬月額28万~50万円 国保:課税所得145万円以上 |
80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 | |
年収156万~約370万円の所得者 健保:標準報酬月額26万円以下 国保:課税所得145万円未満等 |
18,000円 (年間上限14万4千円) |
57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 8,000円 | 24,600円 | - |
住民税非課税者 (年金収入80万円以下など) |
8,000円 | 15,000円 | - |
世帯合算も可能
1人の1回のみの窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、窓口でそれぞれ支払った自己負担額を1カ月単位で合算することができます。ただし、69歳以下の方の受診については21,000円以上の自己負担のみ合算されます。
多数回該当の場合は上限額が下がる
過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合は4回目からの自己負担上限額が下がります。上の表の「多数回該当の場合」の列の金額が適用されます。なお、70歳以上の住民税非課税の区分の方については多数回該当の適用はなく、外来(個人ごと)は8,000円、外来+入院(世帯ごと)は24,600円または15,000円の上限のままです。
傷病手当金
傷病手当金は会社員や公務員などが加入している健康保険から支給される制度です。病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。支給額は標準報酬月額の3分の2で支給される期間は最長1年6か月です。傷病手当金は次の4つの条件をすべて満たした時に支給されます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
傷病手当金は加入する健康保険から支給されるので、自営業者やフリーランスの方は支給を受けられないことに注意が必要です。
医療費控除
1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費から保険金や高額療養費、出産育児一時金などで受け取った金額を引いた額が10万円以上であれば、200万円を上限として所得控除を受けることができます。当てはまる場合は確定申告を行うことで所得税額を安くすることができます。
長期入院をカバーできる保険は?
割合としては小さいですが、長期間の入院が必要となると治療費に関して多額の自己負担が必要となり、また、逸失収入も大きくなります。合計して100万円超の負担となることもあるので、これを貯蓄から出すことができない、出すことによる家計へのダメージが大きい場合は保険の加入を検討した方がよいでしょう。長期入院をカバーできる保険にはどのようなものがあるでしょうか?
医療保険(支払限度日数に注意)
入院・手術のための保険といえばまず医療保険が思い浮かぶでしょう。入院1日あたり〇円という形で給付金を受け取れるので入院日数がある程度長期間になっても安心できます。ただし、医療保険は1入院での支払限度日数が定められているのでこれを超える入院の場合は給付金が不十分ということになる可能性があります。最近は支払限度日数が60日という医療保険が多くなっています。多くの場合はこの限度日数でも十分ですが、入院が60日より長くなる可能性も存在します。より長期間の入院に備えたいという場合は支払限度日数がより長い商品を探すか、次に紹介する就業不能保険を検討しましょう。
就業不能保険
就業不能保険は病気やケガで長期間働けないときの収入減少に備える保険です。就業不能保険では、契約で定める支払対象外期間(免責期間)を超えて、入院しているなど保険会社が定める働けない状態(就業不能状態)が継続している場合に、あらかじめ決めた金額を毎月給与のように受け取ることができます。支払対象外期間は60日というような商品が多いので、医療保険とは逆に短期間の入院には備えることができません。とはいえ、長期間の入院はダメージが大きく、特に自営業やフリーランスの場合は傷病手当金がないので就業不能保険などの働けなくなったときに備える保険の必要性は高いといえます。
がん保険
がん保険はがんに特化していますが、入院給付金に医療保険のような支払限度日数がなく無制限であることが普通です。入院日数が短くなってきているのはがんも例外ではなく、また、入院ではなく外来の治療も増えてきていますが、長期間の入院が必要となる場合もあります。平成29年患者調査によると、がん(悪性新生物)で在院期間が1か月以上となった割合は12.9%、3か月以上となった割合は1.8%です。がん保険はこうした長期入院以外にも、契約する保障内容によりますが、外来でがんの長期治療が必要となった場合にも対応可能なので、がんの治療費が心配であるならば検討してみるとよいでしょう。
まとめ
平均の入院日数は短くなってきていますが、長期間の入院が全くなくなったわけではないです。長期間の入院が必要となると治療費のほかに収入の減少も大きくなります。長期入院では合計して数十万円、100万円以上の負担となることも十分に考えられるので、こうした負担に耐えられないのであれば就業不能保険などの保険で備えておくのがよいでしょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。