
国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集」によると50歳時の未婚割合は男性28.2%、女性17.8%となっており年々結婚をしない人の割合が増えています。老後を独身で迎える人も今後増えていくことが考えられますが、老後を過ごす場合はいくら必要になるのでしょうか。独身の場合に必要となる老後資金とその貯め方について紹介します。
記事の要約
- 独身の老後資金は賃貸なら約2200万円、持ち家なら約1700万円が目安。
- 老後資金として生活費、医療費、修繕費(持ち家の場合)、介護費、葬儀費用などが必要になるが、賃貸は修繕費がない代わりに家賃が発生するため必要金額が大きくなる。
- 準備方法として、家計見直しから先取り貯金を基本に、iDeCo、NISA、個人年金保険などを併用して計画的に積み立てていくことが大切。
独身の老後資金はいくら必要?

65歳以降を老後とした場合、老後資金はいくら必要になるのでしょうか。まず、一人暮らしでの老後に必要な額を計算するためには、老後期間や収入、支出を確認する必要があります。結論を先に伝えると、賃貸の場合は約2200万円、持ち家の場合は約1700万円の老後資金が必要になります。
老後期間
老後が長いほど必要な金額も大きくなっていきます。厚生労働省「令和6年簡易生命表」によると、65歳での平均余命は男性が19.47年、女性が24.38年です。ざっくりと、男性は65歳から20年間、女性は65歳から25年間の備えが必要になるということです。女性の方が長生きなので必要な老後資金も大きくなると考えられます。
老後の支出
老後にかかるお金はライフスタイルや持ち家の有無によって大きく変わります。ここでは、生活費、医療費、修繕費、介護費をメインに解説します。
生活費
老後の生活費は人によって様々ですが、一つの目安として総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年」より高齢単身無職世帯の平均的な支出額を紹介します。
| 項目 | 月平均額 |
|---|---|
| 食料 | 42,545円 |
| 住居 | 11,416円 |
| 光熱・水道 | 15,565円 |
| 家具・家事用品 | 6,069円 |
| 被服及び履物 | 3,049円 |
| 保険医療 | 8,388円 |
| 交通・通信 | 13,601円 |
| 教育 | 0円 |
| 教養娯楽 | 16,132円 |
| その他消費支出 | 31,681円 |
| 消費支出合計 | 148,445円 |
| 直接税 | 7,072円 |
| 社会保険料 | 5,912円 |
| 非消費支出合計 | 12,990円 |
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年」
上表より、老後の消費支出は月に148,445円、非消費支出は12,990円かかることがわかります。
なお、持ち家を所有する方も含まれているため住居費が11,416円となっていますが、賃貸住宅の場合は家賃が必要になるためもっと多くかかるでしょう。家賃は住む場所や専有面積などによって大きく変わりますが、「令和5年住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の単身世帯の1カ月当たりの家賃は44,183円となります。そのため、賃貸で暮らす場合は一カ月の支出は181,212円必要ということになります。
医療費
若い時は健康に過ごしていても、高齢になるとケガや病気をするリスクが高くなるため医療費の備えも欠かせません。厚生労働省「令和4年度 生涯医療費」によると、一生涯にかかる医療費は2,755万円となっており、特に65歳以降にかかる医療費は1,554万円と半分以上を占めています。健康保険があるため全額かかってくる訳ではなく、医療費は3割負担(75歳以上は所得に応じて1~3割負担)となります。老後にかかる医療費として、200万円~500万円程度をみておきましょう。
修繕費
持ち家を持つ場合でも、ローンを完済すればお金がかからないという訳ではありません。戸建てでは家の外壁や屋根の修繕や、老後に備えて手すりの設置や段差解消などのリフォームが必要になるケースもあります。戸建ての修繕費として500万円ほどをみておき、計画的に用意していきましょう。
マンションでは住宅ローン完済後も毎月管理費や修繕積立金を支払う必要があります。月2~3万円程ですが、20年住むと480~720万円かかることになります。
介護費
介護にかかる平均費用は約500万円ですが、介護期間が長い場合や介護施設に入居する場合はこれ以上の費用がかかることもあります。
独身の場合、介護が必要な状態になった時に身近に頼れる親族がいないケースも想定されます。介護サービスの利用や介護施設への入居に備えて、計画的に用意しておく必要があるでしょう。
葬儀費用
鎌倉新書の「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」によると、葬儀費用の平均は118.5万円となっています。葬儀の規模が大きくなるほど費用も高額になりますが、家族や親族、近親者が参列する「家族葬」であれば100万円程が相場になっているようです。
老後の収入

国民年金や厚生年金は原則65歳から支給されますが、いくらもらえるのかは保険料を支払っていた期間や金額によっても変わります。令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、令和6年度末時点の厚生年金の平均年金月額は151,142円(基礎年金を含む)、国民年金の平均年金月額は59,431円です。
独身に必要な老後資金額

独身に必要な老後資金は持ち家の有無によって大きく差があります。そこで住居形態別に老後資金にいくら必要か算出してみました。
賃貸の場合
賃貸で厚生年金を受給する場合、家賃を含めた老後に必要な生活費から公的年金の受給額を引くと毎月約4万3千円不足することになります。男性は20年分の生活費として約1000万円、女性は25年分で1300万円不足しています。さらに賃貸の更新費用で50万円、医療費として300万円、介護費用が500万円、葬儀費用が100万円かかってくるとすると、老後資金として約2200万円必要ということになります。
持ち家の場合
持ち家があり厚生年金を受給する場合、年金から老後に必要な生活費を引くと毎月約1万円不足します。男性は20年分の生活費として約250万円、女性は25年分で300万円不足しています。さらに持ち家の修繕費として500万円、医療費が300万円、介護費用で500万円、葬儀費用が100万円かかるとなると、約1700万円の老後資金が必要になると考えられます。
上記のシミュレーションはあくまで平均的な数値で、平均余命よりも長生きした場合や国民年金を受給する場合、家賃が高額な場合には足りない可能性があります。趣味や旅行などゆとりある生活を送りたい方はさらに多くの資金が必要になるため、計画的に貯めていくことが大切になります。
老後資金の準備方法
老後資金の目安として賃貸の場合は約2200万円、持ち家の場合は約1700万円となりましたが、どのように貯めていくのがよいのでしょうか。そこで老後資金の貯め方を紹介します。特に独身者は自分ひとりで生活費などの支出を賄う必要があるため、早いうちから準備を始めていきましょう。
家計を見直す
まずは家計の収支の状況と月にいくら貯めればよいのかを明確にしましょう。何となく老後資金を貯めるつもりで貯金しているだけでは、なかなか必要な金額を貯めることはできません。現在月にいくら貯めることができているのか、目標とする金額にいくら足りないのかを明確にし、足りない金額については固定費を削る、無駄遣いをなくすなどして確保しましょう。
なお、勤めている会社で退職金が出る、65歳以降も働くことができるのであれば現役時に用意する金額は少なくなります。現在の稼ぎではどうしても貯められないという場合は退職金の有無や定年の時期、定年後も働けるかを確認してみましょう。
先取り貯金をする

生活費の余りを貯蓄するのではなく、収入から先に貯蓄額を引いて残りで生活をするようにしましょう。貯金に回すお金を使ってしまう心配なく、着実に貯蓄していくことができます。
また、せっかく貯めた貯金を使ってしまった…という経験はありませんか?貯金が長続きしない、貯まってもすぐに使ってしまうという方は、お金を崩すのに手間がかかる方法で貯めていくのがおすすめです。次に紹介する方法を試してみるのもよいでしょう。
資産運用をする
金利が低い現在では、銀行預金だけでは大きくお金をふやすことが難しいです。ある程度の貯金ができたら、投資や保険を活用して用意していくことも考えてみましょう。
iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、掛け金を自分で運用しながら積み立てていき、60歳以降に年金または一時金で受け取る制度です。運用中の利益や利息は非課税となるため、運用する商品によっては大きく増やすことも可能です。リスクがある商品だけでなく、定期預金などの元本確保型の金融商品でも運用することができます。ただし、手数料があるので必ず元本が確保できるというわけではないことに注意しましょう。さらに掛け金が全額所得控除になるため、所得が高い人ほど節税効果が大きくなります。
原則60歳まではお金を引き出せず途中解約もできません。そのため途中で他のことに使うことも起きにくく老後資金の準備に向いていますが、急に大きな出費が必要となったときでも引き出せないということでもあるので気を付けましょう。
NISA
NISAとは、合計1800万円まで購入した株式・投資信託等からの運用益が非課税となる制度です。NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、年間の投資上限額は「つみたて投資枠」で120万円、「成長投資枠」で240万円まで非課税で投資することができます。
iDeCoと比べるとNISAの方が年間の投資可能額が大きいこと、途中で資金を引き出すことができること、受取時に税金がかからないことがメリットとして挙げられます。一方で、投資中の所得控除はないこと、60歳前に売却して引き出せる分、他の目的に使用してしまう可能性があることなどには注意が必要です。運用がうまくいけばお金が大きくふやせる可能性がありますが、マイナスになるリスクもあることを心得ておきましょう。
個人年金保険
個人年金保険とは、保険料を積み立てていき一定の年齢になったら年金が受け取れる貯蓄型の保険です。契約時に利率が固定されるため、将来受け取れる金額が決まっていることが多く将来の見通しが立てやすいというメリットがあります。一方で、インフレに弱く、物価が上昇した場合に受取額が実質的に目減りすることになります。
また、何年間かけて積み立てるのか、一括で受け取るのか5年や10年と分けて年金を受け取るのかなどを選べることが多いです。公的年金の不足分をカバーするだけでなく、繰り上げ受給などで年金をもらうまでのつなぎとして活用することも可能です。
老後資金の準備を始めよう
老後資金を貯めるうえで一つの手段だけに頼るのではなく、他の方法と併用することも可能です。個人年金保険で老後資金のベースを作り、余裕資金を使ってiDeCoやNISAの枠内で投資にチャレンジするのもよいでしょう。
まとめ
独身に必要な老後資金として、賃貸の場合は2200万円、持ち家の場合は1700万円が必要です。長生きしたり介護が長引いたりした場合や、自営業で年金が少ない場合はさらにこれ以上の金額がかかる可能性があります。老後資金の準備が出来ていない方は、「収入-貯蓄=生活費」の考え方で先取り貯金を貯めることから始めましょう。ある程度の生活費が貯金できたら、すぐに崩してしまいにくいiDeCoやNISA、個人年金保険などの貯蓄型の保険などで貯めていくと失敗せずに貯めていきやすいです。

-
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。
