関節リウマチは治療が長く続き、毎月の医療費が家計の負担になってしまうこともあります。また、関節の痛みやこわばり以外にも、症状が悪化すると肺炎などの入院リスクが高い合併症を引き起こすこともあります。しかし、入院・手術に備えようと思っても、持病がある方は医療保険に入るのは難しくなります。関節リウマチでも入れる医療保険はあるのでしょうか。
目次
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引受基準緩和型なら入れるかも
関節リウマチになると一般の医療保険への加入は難しくなります。関節リウマチの患者は入院や手術をする確率が持病や既往症がない方と比べて高くなるので加入者間の公平を保つためにも一般の医療保険に入るのは難しくなるのです。
しかし、医療保険の加入をあきらめる必要はありません。引受基準緩和型の医療保険であれば加入できる可能性があります。引受基準緩和型医療保険とは、漢字の通り保険会社が契約を引き受ける基準を緩和している医療保険です。健康状態に関する告知が「はい」か「いいえ」で答えられる3~5個程度の質問になっていて、そのすべてに「いいえ」と答えることができれば申し込むことができます。告知項目は以下のようなイメージです。
- 現在入院中ですか?
- 過去3か月以内に入院や手術、検査をすすめられたことはありますか?
- 過去2年以内に病気やケガで入院したことや手術をしたことはありますか?
- 過去5年以内にがん(悪性新生物)で入院または手術をしたことはありますか?
※あくまでもイメージです。告知項目は保険会社によって異なります。
関節リウマチの患者でも、直近に入院や手術をしていない、すすめられていない(関節リウマチ以外の病気・ケガを含む)のであれば加入できる可能性があります。また、引受基準は保険会社によって異なるので、A社には契約を断られたけどB社には加入できたというようなことも起こりえます。保障内容を比較する意
引受基準緩和型のメリット・デメリット
引受基準緩和型医療保険にはどのようなメリット・デメリットがあるのか紹介します。
メリット
持病・既往症があっても入りやすい
通常の医療保険は持病や既往症があると加入することが難しくなりますが、引受基準緩和型医療保険であれば、通常の医療保険の加入を断られた人や部位不担保となった人でも加入しやすくなっています。関節リウマチなど持病や既往症があるけれども医療保険に入りたいという人におすすめです。
持病や既往症の悪化・再発も保障される
引受基準緩和型医療保険では持病が悪化した場合や過去にかかっていた病気が再発した場合でも保障の対象となることが多いです。ただし、責任開始日前に入院・手術をすすめられていたというような場合には保障の対象にはならないので注意してください。
デメリット
保険料が割高
引受基準緩和型医療保険は通常の医療保険と比べて保険料が高くなっています。持病や既往症がある人は健康な人と比べて入院や手術をする可能性が高いです。つまりは給付金が支払われる可能性が高く、保険を破綻せずに成り立たせるためには通常の医療保険よりも保険料を高くする必要があります。
一定期間内は給付額が半額(50%)になるものが多い
多くの引受基準緩和型医療保険では、1年以内に支払事由に該当した場合の給付額が50%に削減されます。持病や既往症とは関係ない理由で病気やケガをした場合でも給付額は半額になります。健康状態に関する告知が少ないので、保険会社のリスクを減らすためにこのような制度をとっている保険商品が多くあります。ただし、最近は保障1年目から給付金が全額受け取れるような商品も出てきています。
公的支援制度も知っておこう
関節リウマチは治療が長引き、入院や手術をしなくても医療費が高額となってしまうことも考えられます。そうした場合に活用できる公的制度についても紹介します。
高額療養費
同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた分について後で払い戻しがされる制度です。事前に医療費が高額になることがわかっている場合は、病院に「限度額適用認定証」を提示することで支払金額を自己負担限度額までに抑えることも可能です。
自己負担限度額
自己負担限度額は年齢や所得区分に応じて変わります。70歳未満については以下の表のように設定されています。70歳以上についてはこちらのコラムにてご確認ください。
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高額療養費制度があるから緩和型医療保険は不要?
日本の公的保険制度には高額療養費制度があり、医療費の自己負担額が高額になった場合でも一定額に負担を抑えられます。この制度を前提として引受基準緩和型に限らず医療保 ...続きを見る
70歳未満の自己負担限度額
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回該当の場合 |
---|---|---|
年収約1160万円以上の所得者 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:年間所得※901万円超 |
252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
年収約770万円~約1160万円の所得者 健保:標準報酬月額53万~79万円 国保:年間所得※600万~901万円 |
167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
年収約370万円~約770万円の所得者 健保:標準報酬月額28万~50万円 国保:年間所得※210万~600万円 |
80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
年収約370万円以下の所得者 健保:標準報酬月額26万円以下 国保:年間所得※210万円以下 |
57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
※年間所得とは、「旧ただし書き所得」のことで、前年の総所得金額と山林所得、株式の配当所得、土地・建物等の譲渡所得金額などの合計から基礎控除(33万円)を除いた額です。 ただし、雑損失の繰越控除額は控除しません。
※過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合は4回目からの自己負担上限額は「多数回該当の場合」の金額が適用されます。
世帯合算も可能
1人の1回のみの窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、窓口でそれぞれ支払った自己負担額を1カ月単位で合算することができます。ただし、69歳以下の方の受診については21,000円以上の自己負担のみ合算されます。
傷病手当金
傷病手当金は会社員や公務員などが加入している健康保険から支給される制度です。病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。支給額は標準報酬月額の3分の2で支給される期間は最長1年6か月です。傷病手当金は次の4つの条件をすべて満たした時に支給されます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
参考:全国健康保険協会
医療費控除
その年の1月1日から12月31日までの間に自分や生計を同一とする配偶者、その他親族のために医療費を支払った場合に、支払った医療費の合計が一定額を超える場合は所得控除を受けることができます。
医療費控除の金額は、「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円」です(最高200万円)。保険金などで受け取った額を除いて実質的に負担した額が10万円を超えた場合について、超えた分を確定申告で申告すると課税所得がその分低くなって税金が還付されます。なお、その年の所得が200万円未満の場合は10万円ではなく所得の5%を計算に用います。
参考:国税庁
介護保険制度
要介護認定を受けた後、要支援1・2、要介護1~5の要介護度に応じて所得により1~3割の自己負担額で介護サービスを受けることができます。介護保険制度の利用は原則として65歳以上の第1号被保険者が対象ですが、関節リウマチは特定疾患の指定を受けているので40歳からでも介護保険によるサービスを受けることができます。
参考:厚生労働省
障害者福祉制度
関節リウマチが進行して日常生活に支障が出ている状態であれば、身体障害者手帳の交付を受けられる可能性があります。身体障害者手帳の交付を受けることで医療費の軽減や手当の支給、福祉サービスなどを受けられます。受けられるサービスは地域や障害の程度によって異なりますので、詳細については住民票のある市区町村にご確認ください。
参考:厚生労働省
関節リウマチとは
関節リウマチは関節内に存在する関節滑膜という組織が異常増殖することによって慢性・持続性・骨破壊性の多発関節炎を特徴とする全身炎症性疾患です。本来ウイルスなど外からの病原体から自分を守るはずの免疫が何らかの原因で自分を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つで、特に関節を攻撃してしまう病気であり、また、関節のみにとどまらず、全身症状や様々な臓器病変(関節外症状)の合併を認め、リウマトイド因子など種々の自己免疫異常を認める全身性自己免疫疾患です。
原因
はっきりとした原因は不明ですが、遺伝的要因と環境要因(ウイルス感染など)が考えられています。
特徴
日本の患者数は60万~70万人(有病率0.6%)と推定されています。エストロゲンなどの女性ホルモンが免疫の働きを乱すため、男女比は1:3~4と女性が多く、また、好発年齢は30歳~50歳代となっています。
病態
初期症状
関節リウマチの初期症状は以下の通りです。当てはまるものがないかチェックして早期発見・早期治療を心がけましょう。
- 朝のこわばりが1時間以上続く
- 3か所以上の関節が腫れている、疼痛
- 左右対称性の手・膝・肘関節の腫脹
- 易疲労感、微熱、体重減少
①関節症状
関節リウマチは全身の滑膜関節が障害され、対称性・多発性の関節炎を呈します。通常は慢性・遷延性であり、持続性の頑固な関節炎が特徴です。軟骨・骨および周囲の組織を破壊しながら進行し、関節変形や強直をきたして機能障害を残します。
手の関節炎はもっとも高頻度で障害の程度も大きい部分です。発症の初期から朝起床時に手のこわばりを訴えることが多いです。関節炎が長期間持続進行すると、手指にスワンネック変形やボタン穴変形などの特徴的な関節の変形をきたすことがあります。肘関節、股関節、肩関節、膝関節、足関節、足趾関節はすべて滑膜関節であり、関節リウマチの障害となり得ます。
②関節外症状
以下のような全身の様々な関節外症状も認められています。
・全身症状:発熱、体重減少、全身倦怠感、易疲労感
・血管炎:紫班、皮膚潰瘍、壊疽、多発性単神経炎、下血など
・眼症状:強膜炎、虹彩毛様体炎、乾燥性角結膜炎
・肺病変:間質性肺炎、胸膜炎、肺内リウマトイド結節
。二次性アミロイドーシス:蛋白尿、ネフローゼ症候群、腎不全、消化管障害(下痢と便秘、下血など)
③検査値異常
関節リウマチは全身性炎症疾患であり、また、種々の免疫異常や自己抗体が検出される自己免疫疾患であるため、活動性に応じて種々の炎症反応が高値を示しています。
治療法
治療法は主に以下の4つの方法が行われています。
①基礎療法:十分な休息、安静、運動療法、生活指導など
②薬物療法
③外科療法:滑膜切除術、関節形成術、関節固定術、人口関節置換術など
④リハビリテーション:理学療法、作業療法、装具療法など
薬物療法
関節リウマチの薬物療法は主に以下4種類の薬剤が使用されています。
特徴 |
治療薬 |
|
---|---|---|
非ステロイド系 |
軽症例など比較的早期の段階で積極的に使用されており、慢性の関節炎にともなう疼痛・腫脹を主訴とする場合は第一選択薬として用いられる。主な副作用は胃腸障害、腎障害です。 |
ボルタレン、ロキソニン、オステラック、モービックなど |
ステロイド薬
|
NSAIDsでも関節の疼痛と炎症が改善されない場合には少量のステロイド薬の使用が考慮されます。強力な抗炎症作用と免疫抑制作用の効果を持つため炎症を迅速かつ効果的に抑制しさせる。 |
プレドニン、メドロールなど |
抗リウマチ薬(DMARDs)
|
炎症自体を抑える作用はないが、免疫異常を是正することによって関節リウマチの活動性をコントロールする。また、関節破壊の進行を抑制する作用があり、とくに骨びらんが出現する以前、また関節リウマチの罹患期間が短いほど効果が高いため、関節リウマチの診断から3か月以内の早期からの使用が勧められている。 副作用:血液障害(さむけ、高熱、のどの痛み、手足にあざが出来る、出血しやすい) |
免疫調整薬:リドーラ、シオゾール、リマチル、メタルカプターゼ、カルフェニールなど 免疫抑制薬:プレディニン、リウマトレックス、アラバ、プログラフ、イムランなど |
生物学的製剤
|
効性の顕著な抗炎症効果が認められ関節破壊の進行も抑えられるとの期待も大きい。副作用のリスクはほかの抗リウマチ薬に比べて高い。 |
エンブレル、レミケード、ヒュミラなど |
日常生活と食事療法
関節リウマチは規則正しい日常生活が重要な基礎治療法になりますので、日々の生活を見つめなおして病気を上手くコントロールしていきましょう。
①バランスの良い食事
食べてはいけないものはありませんが、全身病のため規則的でバランスのとれた食事により病気に対して体力を保持することが大切です。具体的には牛乳・卵・肉・野菜・果物等の高蛋白・高ビタミン食を太りすぎない程度に摂取し、骨を強くする意味でカルシウムを摂取することを心がけましょう。
②正しい姿勢
楽になる姿勢は関節の強直や変形を助長してしまいます。寝ているときも、座っているときも正しい姿勢を心がけましょう。
③適度な運動
リウマチは適度の安静を保ちながら全身の状態をよくすることが大切ですが、安静にしすぎると関節は固まり、筋肉は縮み、ますます症状を悪化させてしまいます。そこで治療としての運動は関節の変形を予防し、関節の動きをよくし、弱った筋肉に力をつけることを目的として行われます。病気の状態に即したリウマチ体操等を行うことが大切です。
④湿気を避け関節を温める。
冷えと湿気は症状を悪化させることがあるので、身体の保温には十分に気を付けましょう。サポーターの着用や入浴、温水シャワー等が効果的です。
特に入浴は全身の血液循環をよくし、心身の疲れを和らげます。また、関節の痛みやこわばりを軽減させ、体も軽くなる為、湯上りの運動は効果的です。
給付金はおりる?
罹患した関節リウマチが契約の責任開始日以降に発症しており、治療を目的に入院もしくは手術を施行した場合であれば、基本的に生命保険の給付金を受け取ることが出来ます。
関節リウマチの平均入院日数は、手術が伴う場合は24日、手術が伴わない場合は11日とのデータがあります。また、手術は「人口関節置換術」「滑膜切除術」「関節形成術」「関節固定術」等が施行されています。
これだけの入院と手術があると、入院・手術費用だけでなくその他食費や日用品などの費用がかかり、退院後もリハビリの為の通院のための通院交通費もかかってしまいます。
そこで入院・手術・通院給付金が受け取れるのはとても心強いですよね。
まとめ
関節リウマチの場合、一般の医療保険には入るのが難しくなります。しかし、引受基準緩和型医療保険であれば加入できる可能性があります。公的支援制度も活用しつつ、入院や手術の費用負担に備えたいのであれば引受基準緩和型医療保険も検討してみましょう。また、保険会社によって引受基準も異なるので、各社の保障内容を比較する意味も込めて複数社の商品の資料請求をしてみるとよいでしょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。