緩和型医療保険のコラム

潰瘍性大腸炎は医療保険に入りにくい?入りやすい保険は?

投稿日:2021年8月13日 更新日:

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。一度発症すると完治は難しく、寛解を維持するための治療を継続することになります。潰瘍性大腸炎に罹患しても医療保険に入れるのでしょうか?

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潰瘍性大腸炎とは?

国の指定難病である潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。平成25年度末時点での国内の患者数は166,060人で、人口10万人あたり100人程度の希少な病気です。この病気の原因は明らかになっておらず、遺伝や食生活等さまざまな要因が関与していると考えられています。また、一度発症すると完治せず、症状が治まった状態である寛解を目指して治療することになります。

潰瘍性大腸炎でよくみられる症状は、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛などがあり、これらの症状が治まったり(寛解)ぶり返したり(再燃)を慢性的に繰り返します。重症になると発熱や頻脈、体重減少、貧血など、全身に症状が現れてきます。

出典 難病情報センター「潰瘍性大腸炎(指定難病97)」

潰瘍性大腸炎と大腸がんの関係

潰瘍性大腸炎は一度発症すると寛解を維持するために継続的な内科治療が必要になります。多くの場合は内科治療で症状が改善しますが、重症で内科治療が無効な場合や、がんの疑いがある場合等は外科手術が行われます。

更に、大腸の状態を的確に把握するため、症状がなくてもある程度定期的な内視鏡検査が必要となります。特に発病から7~8年以上経過した全大腸炎型(広範囲の炎症)の患者は大腸がん化の危険性もあるため、1~2年に1回の検査が必要となります。

潰瘍性大腸炎でも医療保険に加入できる?

潰瘍性大腸炎は通常の医療保険には入りづらい

潰瘍性大腸炎は一度発症すると完治することがなく、内科治療や定期的な検査により寛解状態を維持するしかありません。そのため、新規に医療保険に入るのは難しいでしょう。もし通常の医療保険にどうしても入りたいというのであれば、特定部位不担保で加入できるか保険会社に相談の上、審査を受けることになります。

潰瘍性大腸炎はがん保険への加入も難しい

潰瘍性大腸炎から大腸がんになるのは一部の患者のみとはいえ、がん発症リスクがあるためがん保険に加入するのは難しいでしょう。どうしてもがんに対する保障を付けたい場合は、がん保険への加入ではなく、がん診断特約を付帯できる保険会社を探してみるのも良いでしょう。

引受基準緩和型なら加入しやすい

通常の医療保険への加入を断られた場合は、引受基準緩和型の医療保険も検討してみましょう。引受基準緩和型医療保険は通常の医療保険に比べて加入条件が緩やかになっており、持病や既往歴のある人でも加入しやすくなっています。

どのように入りやすくなっているかというと、健康状態に関する告知が3~5項目程度の「はい」か「いいえ」で答えられる質問になっていて、その質問にすべて「いいえ」と答えられれば申し込みが可能です(過去に保険料を払わなくて契約を解除されたなど健康状態に関すること以外で契約できないこともあります)。告知項目は保険会社によって異なりますが、以下のような内容になっています。

  • 現在入院中ですか?
  • 過去3か月以内に入院や手術、検査をすすめられたことはありますか?
  • 過去2年以内に病気やケガで入院したことや手術をしたことはありますか?
  • 過去5年以内にがん(悪性新生物)で入院または手術をしたことはありますか?

※あくまでもイメージです。告知項目は保険会社によって異なります。

直近で入院・手術をしていたり、すすめられたりしている場合は引受基準緩和型医療保険でも加入は難しくなりますが、そうでなければ通常の医療保険を断られたり条件が付いたりした方でも問題なく加入できる可能性があります。保険会社によって告知項目は異なるので複数の会社のものを比較してみましょう。

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潰瘍性大腸炎は医療費助成制度を利用できる

国が指定する難病である潰瘍性大腸炎は重症度が「重症」、「中等症」、「軽症」の3つに分けられ、中等症以上は医療費助成の対象となります。住所地を管轄する最寄りの保健所にて所定の手続きを行い認定されると、医療費受給者証が交付され、自己負担上限額を超過した医療費の払い戻しが受けられるようになります。

医療費助成における自己負担上限額(月額)
階層区分 階層区分の基準
()内の数字は、夫婦2人世帯の
場合における年収の目安
患者負担割合:2割
(1割負担の人はそのまま)
自己負担上限額
(外来+入院+薬代+訪問看護等)
一般 高額かつ長期 人工呼吸器等装着者
生活保護 - 0円 0円 0円
低所得I 市町村民税
非課税
(世帯)
本人年収
~80万円
2,500円 2,500円 1,000円
低所得II 本人年収
80万円超~
5,000円 5,000円
一般所得I 市町村民税
課税7.1万円未満
(約160万円~370万円)
10,000円 5,000円
一般所得II 市町村民税
7.1万円以上25.1万円未満
(約370万円~810万円)
20,000円 10,000円
上位所得 市町村民税
25.1万円以上
(約810万円~)
30,000円 20,000円
入院時の食費 全額自己負担

※「高額かつ長期」とは、月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上ある者(例えば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円を超える月が年間6回以上)。
出典 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」

自己負担の限度額は患者の世帯の所得に応じて設定されます。潰瘍性大腸炎の治療費が心配で医療保険への加入を検討するというのであれば、医療費助成制度が活用できるということを念頭に置いて検討したほうがよいでしょう。

クローン病・過敏性腸症候群との違い

潰瘍性大腸炎は治療法が現時点で見つかっておらず、完治が難しい指定難病です。
症状が似ている指定難病に「クローン病」があります。また、症状が似ていてきちんと治療すれば完治する「過敏性腸症候群」があります。症状からすると潰瘍性大腸炎かもしれないけど、もしかしたら過敏性腸症候群の可能性もあるので、きちんとお医者さんに診てもらいましょう。
この3つの疾患についての違いを紹介します。

潰瘍性大腸炎 クローン病 過敏性腸症候群
指定難病有無 指定難病あり
完治する治療法は見つかっていません。
指定難病あり
完治する治療法は見つかっていません。
指定難病なし
治療すれば完治します。
症状 粘血便、下痢、腹痛、食欲不振、体重減少
発熱など
腹痛、下痢、体重減少、発熱、肛門病変など
肛門病変によって発見の契機となることがある。
ときに虫垂炎類似症状、腸閉塞、腸穿孔など
腹痛、腹部不快感および膨満感、下痢、便秘、嘔吐、背部痛、泌尿器系症状、婦人科系症状
合併症 皮膚病変、抹消関節炎、強直性脊椎炎、原発性硬化性胆管炎、大量出血、中毒性巨大結腸症、 肛門病変、狭窄、瘻孔、腹部膿瘍形成、穿孔、大出血、中毒性巨大結腸症

①消化管合併症:逆流性食道炎、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患

消化管外合併症:慢性疲労症候群、間質性膀胱炎、月経前症候群、パーキ ンソン病、精神疾患など

原因 遺伝、免疫機能の異常、環境因子(腸内細菌叢、幼少期の感染、食習慣、虫垂切除歴、経口避妊薬の服用、抗菌薬の使用など) 環境因子、遺伝、感染、食事成分に対する腸管の異常反応、腸管微小血流障害説 ・精神的・身体的ストレス
・内臓神経の知覚過敏
・遺伝・幼少期の環境要因
治療法 ①薬物療法
②薬物療法が無効な重症の場合や、合併症の症状が著しい場合は外科的治療(手術)の適応になります。
①薬物療法
②栄養療法
③閉塞症状や瘻孔に伴う症状が改善しない場合は外科的治療(手術)の適応になります。
①生活指導などの非薬物療法
②薬物療法
代表的な薬剤 ・アミノサリチル酸製剤(ペンタサ)
・ステロイド剤(プレドニン)
・免疫抑制剤(イムラン)
・アミノサリチル酸製剤(ペンタサ)
・ステロイド剤(プレドニン)
・免疫抑制剤(イムラン)
・抗コリン剤
・胃腸運動調整薬
・止痢剤
・整腸薬
・抗不安薬
・自律神経調整薬

生命保険の新規加入と給付金請求は?

クローン病についても指定難病であるため、潰瘍性大腸炎と同様に生命保険の新規加入は難しいです。
過敏性腸症候群については治療すれば治る疾患なので、完治後時間が経過していれば加入もしくは部位負担の条件付き加入できる可能性はありますので、きちんと正確に告知をして加入しましょう。
なお、クローン病も「特定疾患治療研究事業」の対象疾患になっている為、医療費は公費で助成されます。

3つの疾患とも保険契約の責任開始後に発症し、給付金支払い事由に該当すれば、もちろん給付金の請求は可能です。
潰瘍性大腸炎とクローン病は基本的に薬物療法や栄養療法の内科的治療にて、症状が現れることを予防することが中心となり、症状が悪化した時に外科的治療(手術)および入院することになります。腸の炎症程度や栄養状態にもよりますが、1ヵ月程の入院を要することが多いです。
一般的な医療保険の場合、手術・入院して初めて給付金の請求対象となります。完治する病ではなくいつまで入院するかも分からないので、民間の保険が利用できるのはとても心強いです。また、薬物療法がメインとなる為、通院特約も付帯されていれば請求対象となるため、より安心ですね。

食事・日常生活のポイント

潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群の3つの疾患の症状には、「下痢」と「便秘」が共通しています。
これらの症状はいつどんな時に発症するか分からない為、いずれの疾患においても、症状をコントロールして日常生活に支障をきたさないようQOLを低下させないことが重要です。
では、この2つの症状における食事療法のポイントを紹介します。

下痢の食事療法のポイント

下痢の症状がひどい時は腸の運動を鎮めるために安静にすることが大切です。
また、冷たい飲み物や食べ物を避け、体を冷やさないようにしましょう。

【避けたい食品】
・冷たい飲み物、食べ物
・脂質の多いもの:揚げ物、バター、脂質の多い肉や魚、脂ののった魚、うなぎなど
・繊維の多いもの:さつま芋、ごぼう、たけのこ、切干大根、わらび、ぜんまい、菜っ葉、果物、海藻、こんにゃく
・発酵しやすいもの:砂糖が多く含まれているもの(ケーキ、お菓子、カステラ、チョコレート、プリン)、さつま芋、豆類
・消化しにくいもの:貝類、いか、たこ、ラーメン
・刺激の強いもの:炭酸飲料、香辛料、アルコール、コーヒー
→コーヒーや香辛料等の刺激物は胃酸を過剰に分泌させるため、摂りすぎには注意しましょう。アルコールは飲みすぎると胃の運動機能を低下させたり胃酸の分泌を増やし、胃の粘膜に直接作用して粘膜に障害を起こしますので、空腹時をさけて適量を守りましょう。
また、たばこも食道や胃の運動機能を低下させ、胃酸の逆流を招くので控えましょう。

【食べてもよい食品】
★下痢が激しいとき
・湯ざまし、スポーツ飲料などの水分などを十分にとりましょう。
・重湯、野菜、スープ、酸味の少ない果汁などの流動食も同時に摂りましょう。
★下痢が回復してきたとき、長引くとき
体力の消耗を防ぐため良質な蛋白質を十分にとり、ビタミン、無機質も不足しないよう注意しましょう。
・お粥、柔らかい米飯、パン、うどん
・脂肪の少ない肉、魚、卵類、豆腐類、納豆
・ヨーグルト、チーズ、柔らかく煮た野菜、じゃがいも

便秘症の食事療法のポイント

規則的な排便の習慣をつけることが大切です。毎日時間を決めて一定時間トイレに入る、便意をもよおしたときは我慢せずにトイレに行く等、時間をとって体に覚えさせましょう。
お菓子などの甘いものや、揚げ物など脂っこいものは胃の中に留まりやすです。食べ過ぎには注意しましょう。

【便秘を改善させる食品】
・乳製品(牛乳・ヨーグルト)
・油脂類(バター・ごま油)
・炭酸飲料・ビール
・糖類を多く含む食品(ケーキ・菓子類)
・香辛料
・繊維質の多い食品(野菜類・果物・豆類・こんにゃく・寒天・海藻)

【便秘を悪化させる食品】
・肉類に偏った食事
・渋柿、ココア、赤ぶどう酒

日常生活のポイント

・便秘の症状がある時は、朝食をゆっくりとたくさんとって朝の排便を習慣づけ、適度な運動、腹部マッサージを心がけましょう。
・下痢の症状がある時は、体を冷やさないようにしましょう。
・ストレスは腸の状態に影響します。趣味の時間を作ったり休日に旅行に行く等のストレス解消法を身に付け、睡眠や休息を十分にとりましょう。

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