介護保険のコラム

介護の備えとして何をすべき?介護費用はいくらかかる?

投稿日:2021年1月21日 更新日:

高齢化が進む中、介護の問題は避けては通れない話題となっています。介護は徐々に必要になっていくばかりではなく、ケガや病気などで急に必要になることもあります。介護が必要になったときに慌てないためには事前の備えが必要です。どのような備えをしておくべきなのでしょうか。また、介護をするうえでネックとなってくる介護費用はどれくらいかかるものなのでしょうか?

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介護の備えとして何が必要?

介護費用の準備

介護には大きな費用が必要となります。詳しくは後述しますが、生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、過去3年間に介護経験がある人は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計として平均74万円、月々の費用として平均8.3万円かかっています。これだけの費用をかけるには事前に準備が必要という方も多いのではないでしょうか。

また、介護が必要になる原因で一番多いのは認知症ですが、認知症になると仮に本人が介護のために貯めていたお金があってもその存在が分からなくなってしまうことも考えられます。どこにどれくらいのお金があるのか資産の整理はしておいた方がよいでしょう。

介護や医療の相談先の確認

介護や医療について相談できる先を確認し、まとめておきましょう。一人で抱え込んでしまうと、自分が病気になってしまったり、悪い場合だと虐待を行ったり、介護殺人や心中を考えてしまったりします。これは決して大げさなことではありません。厚生労働省による調査では、令和3年度において市町村等が養護者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)からの虐待と判断した件数は16,426件、市町村等が相談・通報を受けた件数は38,768件もあります。また、養護者による殺人や虐待による致死、心中も毎年20~30件起こっています。

こうした悲劇的なことを避けるためにも、一人で抱え込まずに相談できる先を見つけておくのが大切です。家族や親類、友人などの身近な人、それができなければ、市区町村の介護保険の相談窓口、地域包括支援センター、NPO法人、ボランティア団体、民間の企業などさまざまなところが介護についての相談を受け付けています。頼れる先があると分かっているだけでも心の負担は取り除けるので、事前にどのようなところで相談できるのか探しておきましょう。

本人の希望の確認

介護はできるだけ本人の希望に沿ったものにしてあげたいところです。できる限り在宅で介護を受けたいのか、施設での介護を希望するのか、家族中心の介護がよいのか、専門のスタッフにがっつりとサポートしてもらうのかなどの希望により、介護の方針や費用なども変わってきます。実際に介護が始まってからだと本人も言い出しづらいので事前に確認しておけるとよいでしょう。

なかなか直接尋ねにくい話題だとは思いますが、まずは意識して会話を増やしていくようにするのが大切です。普段の会話の延長から本人の希望が見えてくることもあります。また、ニュースの話題から派生させたり、「自分だったらこうしたいと思うけど、どう思う?」などと一方的に聞き出す形にせずに工夫してみたりすることも考えられます。

公的介護保険だけでは足りない?

初めにも紹介しましたが、生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、過去3年間に介護経験がある人は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計として平均74万円、月々の費用として平均8.3万円かかっています。同調査によると、介護期間の平均は61.1か月(5年1か月)という結果なので、全体では74万円+8.3万円×61.1か月で581.1万円かかることになります。これらの費用は公的介護保険サービスの自己負担費用を含んでいるので、逆に言えば、公的介護保険による支給を受けても全体で平均約600万円のお金がかかることになるのです。

約600万円という金額は一度にかかるわけではありませんが、用意をしておかないとなかなか支払っていくのも厳しく、自身の老後資金や生活費などを削ってしまうことになるかもしれません。公的介護保険だけではなく、自分で何かしらの介護費用に対する備えをしておくのがよいでしょう。

介護費用(一時的な費用の合計)
費用なし15万円未満15~25万円未満25~50万円未満50~100万円未満100~150万円未満150~200万円未満200万円以上不明
15.8%18.6%7.7%10.0%9.5%7.2%1.5%5.6%24.1%

※平均:74万円(「費用なし」は0円として算出)

介護費用(月額)
費用なし1万円未満1万~2万5千円未満2万5千~5万円未満5万~7万5千円未満7万5千~10万円未満10万~12万5千円未満12万5千~15万円未満15万円以上不明
0.0%4.3%15.3%12.3%11.5%4.9%11.2%4.1%16.3%20.2%

※平均:8.3万円(「費用なし」は0円として算出)

介護期間
6か月未満6か月~1年未満1~2年未満2~3年未満3~4年未満4~10年未満10年以上不明
3.9%6.1%10.5%12.3%15.1%31.5%17.6%3.0%

平均:61.1か月
出典:生命保険文化センター「令和3年度『生命保険に関する全国実態調査』」

民間の介護保険でも備えられる!

介護費用に対する備えの一つとして、民間の介護保険があります。民間介護保険とは、民間の保険会社が提供する介護保険で、40歳から強制加入となる公的介護保険を補う目的で加入することになります。公的介護保険では対象とならない年齢での保障が欲しい場合や介護サービス費用以外の費用、公的介護保険の自己負担部分を補てんするために加入するのです。

民間の介護保険では、保険会社の定める要介護状態になったら一時金や年金形式で保険金を受け取れます。公的介護保険は現物給付なのに対して民間の介護保険は現金給付なので自分の思うとおりに使いやすいという特徴もあります。十分な貯蓄がないのであれば、介護費用の備えの一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

公的介護保険民間介護保険
加入義務あり(40歳以上)なし(任意加入)
加入条件65歳以上の人
40歳~65歳未満の健康保険加入者
各保険会社の規程による
給付方法現物給付
(所定の介護サービス)
現金給付
(一時金、年金など方法は契約内容による)
給付条件65歳以上の場合は要支援状態・要介護状態になった場合
40歳~64歳の場合は老化が原因とされる特定疾病で要支援状態・要介護状態になった場合
保険会社との契約内容による
公的介護保険に準じる場合と保険会社が独自に定めた基準による場合がある

まとめ

介護には大きな費用がかかります。介護者の負担を減らすためにも事前にお金の目途を立てておくことが大切になります。また、介護や医療に関する相談先を確保しておくことも心労を減らすのに役立ちます。そして、事前に本人の介護に対する希望を聞いておけるとお互いに介護によるストレスを減らすことができるでしょう。残念ながら、介護の養護者による虐待は毎年数多く起こってしまっています。自分もその中の1例に加わらないためにも介護に対してしっかりと備えておくことが大切です。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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