がん保険の診断給付金や治療給付金、手術給付金などの受取人は被保険者本人のみとなっているのが一般的です。それでは、被保険者にがんを告知されていないなど本人が給付金を請求できない場合にはどのように対応すればよいのでしょうか?
目次
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がん保険の給付金の受取人は被保険者本人
冒頭にも書いた通り、がん保険の診断給付金や治療給付金、手術給付金といった給付金の受取人は被保険者本人となっているのが一般的です。被保険者というのは保障の対象となる人のことをいいます。例えば、がん保険の場合では、被保険者となっている人ががんと診断されたりがんの治療を目的として放射線治療を受けたりした場合に給付金を受け取れます。
念のため、契約にかかわる「契約者」、「被保険者」、「受取人」について整理しておきます。
- 契約者:保険会社と保険の契約を結ぶ人のことです。契約内容を変更する権利を持ちますが、保険料の支払の義務を負います。
- 被保険者:保障の対象となる人のことです。被保険者ががんの診断を受けた場合などに、保険金や給付金が支払われます。契約者と被保険者が異なる場合は契約時に被保険者の同意が必要です。
- 受取人:保険金や給付金を受け取る人のことです。
がん保険の被保険者となれるのは基本的に、がん保険の契約者本人、契約者の配偶者、契約者の二親等以内の血族です。保険会社・商品によっては多少異なる場合もありますが、それでも契約者自身か血縁上近い人と考えておきましょう。
死亡保険金の受取人は被保険者以外になる
最近は主流ではありませんが、被保険者死亡時に死亡保険金が支払われるがん保険もあります。死亡保険金の受取人についてはもちろん被保険者以外で指定します。とはいえ、誰でもよいわけではなく、原則的に配偶者または二親等以内の血族を指定することになります。二親等というのは父母・子・祖父母・孫・兄弟姉妹が含まれます。この範囲外以外の人も事情によっては受取人にすることも認められる場合があります。保険会社の対応によりますので、保険会社にご確認ください。
指定代理請求人を指定しておこう
がん保険の受取人は被保険者本人であることが一般的ですが、がんの告知を本人が受けておらず給付金の請求ができない、意識がはっきりとせずに給付金の請求ができないというようなことも考えられます。このように受取人である被保険者が給付金等を請求できない特別な事情があるときに、あらかじめ指定した代理請求人が給付金の請求をできるようになっています。
指定代理請求人は契約者が被保険者の同意を得て契約の申し込み時などにあらかじめ指定します。契約途中でも被保険者の同意を得て指定代理請求人の指定や変更ができます。最近はがんの告知を患者本人にすることも多いですが、絶対に本人に知らされるとは限らず、また、何らかのほかの事情で給付金を請求できない事態になることも考えられるので、指定代理請求人の指定は行っておいた方がよいでしょう。
指定代理請求人には誰がなれる?
指定代理請求人には誰でもなれるわけではありません。被保険者の同意を前提として、指定代理請求人となれるのは次のいずれかの要件を満たす方1名です。
- 被保険者の戸籍上の配偶者
- 被保険者の直系血族
- 被保険者の3親等以内の親族
- 被保険者と同居または同一生計の方
- 被保険者の療養看護に努めている、または、財産管理を行っている方
- 死亡保険金の受取人
- その他4.~6.と同等の特別な事情があると保険会社が認めた方
※保険会社や保険商品によって異なる場合があります。
指定代理請求人が保険金を請求できるのは被保険者が意思表示できないような状態に限られますが、そのような状態のときに請求できるからこそ、意思に反した保険金の使い方がされないように信頼のおける人を指定することが大切です。
指定代理請求特約の注意点は何かある?
指定代理請求特約にはいくつか注意しておいた方がよいこともあります。どのようなことに注意が必要なのか紹介します。
指定代理請求人に伝えておく
指定代理請求人を誰にするかについて被保険者の同意は必要ですが、指定代理請求人がその事実を知らなくても契約すること自体は可能です。当然ながら指定代理請求人となっていることを知らなければ必要なときに請求することなどできません。代理請求できるということやどのような場合に代理請求できるのかといったことはあらかじめ指定代理請求人に伝えておくようにしましょう。
指定代理請求人が請求しても被保険者に連絡されない
指定代理請求人が保険金等を請求しても被保険者には保険金等を支払ったことは連絡されません。被保険者が保険金等を請求できない状態ではありますが、保険金の請求によって被保険者が知らないうちに保障内容が変わってしまったり契約が消滅してしまったりする可能性があります。また、指定代理請求人による請求後、被保険者本人から保険会社に契約について問い合わせがあった場合、保険会社としては事実をそのまま伝えざるを得ません。結果としてがんの告知などを被保険者に伏せていても分かってしまうことも考えられます。
指定代理請求人による請求後、本人から請求があっても重複して支払われない
指定代理請求人が保険金を請求後、被保険者の状態が回復したりがんの告知を受けたりして、被保険者本人から保険金の請求を行っても重複して保険金は支払われません。指定代理請求人と被保険者との間でトラブルとならないように、指定代理請求人は信頼できる人で連絡を取りやすい人を選ぶのがよいでしょう。
誰の口座に振り込まれるのか要確認
指定代理請求人が請求した保険金について、指定代理請求人の口座に振り込みすることを認める保険会社と本来の受取人である被保険者の口座にしか認めない保険会社があります。被保険者の口座にしか振り込まない保険会社の場合、保険金が振り込まれる口座情報を知らなければ保険金を有効に活用することができません。誰の口座に振り込まれるのか事前に確認しておくことが大切です。
指定代理請求人の見直しも必要
指定代理請求人の見直しが必要となることもあります。結婚や離婚で家庭環境が変わり、資格がなくなってしまった場合やふさわしくなくなった場合、指定代理請求人が死亡してしまった場合、重い病気等により代理で請求できないような状態となった場合などです。
特に指定代理請求人の要件を満たさないようになった場合は、実際に請求が必要となったときに指定代理請求人が保険金を請求できずに手続きが煩雑となることが考えられます。契約時と状況が変わった場合はそれに合わせて指定代理請求人も見直すようにしましょう。
給付金・保険金を受け取った場合の税金は?
がん保険で保険会社から給付金・保険金を受け取った場合、何がもととなって支払われた給付金・保険金かによって課税対象となるのか、非課税となるのか変わります。どのような給付金・保険金に税金がかかって、どのような給付金・保険金にはかからないのか紹介します。
基本的にがん保険の給付金は非課税
がん保険の診断給付金や治療給付金、入院給付金、手術給付金、通院給付金などがん保険で受け取れる給付金は基本的に非課税です。ただし、一部の保険会社にある無事故給付金などは課税対象となります。課税対象となるか非課税となるのかを分けているのは、「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」にあたるか否かです。「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」については、所得税法施行令第30条第1号《非課税とされる保険金、損害賠償金等》の規定により非課税とされています。
無事故給付金は所得税(一時所得)の対象
保険会社・商品によっては、一定期間給付金の請求をしなかった場合に無事故給付金が契約者に支払われる場合があります。この無事故給付金は身体の傷害に起因して支払われているわけではなく、課税対象となります。保険料を負担した人と給付金を受け取った人が同一なので所得税の対象です。分類としては一時所得になります。一時所得の場合、50万円の特別控除があるので、受取に要した保険料相当額と給付金の差で年間50万円超の利益が出ていなければ所得税はかかりません。ほかに一時所得があるなどして50万円を超えた場合、50万円を超えた分について1/2にした額を一時所得として所得税の計算に用いられます。
死亡保険金も課税対象
死亡保険金があるがん保険の場合で被保険者が死亡して死亡保険金を受け取った場合、その保険金は課税対象となります。ただし、税金の種類は契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の関係によって変わります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税 |
A | B | C | 贈与税 |
契約者=被保険者が夫、受取人が妻など契約者=被保険者≠受取人の場合、相続税の課税対象となります。ただし、受取人が法定相続人の場合には、「500万円×法定相続人数」という死亡保険金の相続税非課税枠があります。
契約者=受取人が妻、被保険者が夫のように契約者=受取人≠被保険者の場合、受け取った保険金は所得税の課税対象となります。一時金で受け取った場合は一時所得、年金形式で受け取った場合は雑所得です。保険金を受け取ったことによる利益、つまり、保険金と保険料の差益に対して課税されます。
契約者が夫、被保険者が妻、受取人が子のように、契約者≠被保険者≠受取人の場合、受け取った保険金は贈与税の課税対象となります。暦年贈与の場合、年間110万円の基礎控除がありますが、税額が大きくなりがちなのでご注意ください。
まとめ
がん保険の給付金の受取人には基本的に被保険者がなります。ただし、死亡保険金の受取人については配偶者や二親等以内の血族といった範囲の中で受取人を定めます。がんであることを患者本人に告知されないなど、受取人である被保険者本人が給付金を請求できない場合はあらかじめ指定していた指定代理請求人が給付金の請求をすることが可能です。給付金の請求ができない状態に陥る可能性はゼロではないので、指定できる範囲内で信頼のおける適当な人を指定代理請求人として指定しておきましょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。