目次
はじめに
両親のこと…知っているようで知らないことばかりではありませんか?
もしもの時はある日突然やってきます。その突然が入院の場合、まず健康保険証の場所がわからない。薬は何を飲んでいるの?入院の準備をしないといけないけど服のサイズや趣向がわからないなど、待ったなしで準備をしないといけないことが襲ってきます。いざという時に慌てないためには親が元気な時から情報収集を行っておくことです。これらを知っておくと入院や介護施設に入るときに役立ちます。両親とコミュニケーションを取りながら必要な情報を集めていきましょう。
入院患者の73%が65歳以上の高齢者です。入院の原因も高齢者特有の病気が多いのが特徴です。
(参照:厚生労働省:平成29年(2017年)患者概況の調査)
65歳以上になると、高齢者特有の病気による入院の割合が増えます。「脳梗塞」「心不全」や「転倒による骨折」など、突然倒れて入院してしまうケースが多くなるのが特徴です。
また、入院をきっかけに介護状態となり、自宅に戻れず介護施設にそのまま入所してしまうことも多くみられます。
意外と知らない親のこと…親から情報収集をすること
①親の基本データや個人情報を押さえておこう。
親が倒れた時、あるいは介護施設を探そうとした時、基本データや個人情報を押さえておくと、役所や病院などの手続きがスムーズになります。「脳梗塞」や「心不全」などの急病で倒れた場合は、急性期病院からリハビリ病院へ転院など病院を変わることもあります。また、自宅に戻る時や介護施設に入所する場合は、入院中に介護保険の要介護認定を申請する必要があります。あらゆる場面で必ず聞かれるのが、親の基本データと個人情報です。できるだけ多くの情報を把握しておきましょう。
親の基本情報
- 生年月日(和暦が出てれば、西暦が思い出せなくても大丈夫)
- 住所
- 本籍地
- 携帯番号(家族が暗記していないことも多いのでは…)
親の個人情報
- 健康保険や後期高齢者医療の被保険者証の番号
- 介護保険証の番号
- 診察券やお薬手帳
- 印鑑
病院に行く時に備えて上記の「親の個人情報」はあらかじめポーチなどにひとまとめにして入れておくと忘れ物を防ぐことができます。お薬手帳のほかに、血糖値や血圧などを記録している手帳があれば入院時に持参しましょう。親からそのポーチなどの保管場所を聞いておくことが大切です。
②親の好きなものを知っておく
親が入院したら、身の回りのものをそろえる必要があります。また、介護施設に入所時にも施設によってそろえるものが違います。その際に、親の好きなもの、気に入っているものやサイズなどを把握しておきましょう。あらかじめその情報があると代わりに買い物に行ったときに役立ちます。また、購入違いなどの無駄遣いを防ぐことができます。
病院や施設に親の好みを伝えることで早く関係者が慣れてくれるメリットもあります。
- 服のサイズ(上着とズボンのサイズ)
- 好きな色や柄
- 下着のサイズ(上下のサイズや好みのメーカーなどがないか)
- おむつのサイズ(パットの有無)
- 靴のサイズ(高齢者向けの靴がいいかなど)
- 食べ物の好み(好きな食べ物・嫌いな食べ物・味付け、ご飯の固さなど)
救急車で運ばれた…入院時に必要なこと
親が倒れて入院!あるいは手術を受けることになった時、ほかにかかっている病院の情報や病歴など必ず聞かれる情報があります。倒れた親に代わって子どもが、医療機関に説明することとなります。その際に、何もわからないでは治療が遅れたりする場合もあります。
親の医療情報
- 身長、体重、血液型
- かかっている病院
病院名・診療科・担当医師・連絡先・通院目的
親だけで暮らしている場合は特にかかっている病院がわからないことがあります。親が突然倒れたら、聞けない状態かもしれません。こうした医療情報は、目の届く冷蔵庫などに貼っておくようにするなど親にも勧めてみてください。病院の情報は、歯科や眼科なども把握しておきましょう。
親が過去にかかった病気や手術歴
かかりつけの病院以外救急搬送され入院した場合は治療にかかる前に、必ず聞かれるのは過去にかかったことがある病気や手術歴、アレルギーの有無です。アレルギーの内容によって生死にかかわることもあるので必ず確認をしておきましょう。なるべく子どもの頃の治療歴も含めて聞いておいてください。
- 病名・症状
- 入院した病院
- 手術の内容
- 治療の内容
- 入院期間
- 飲んでいる薬(お薬やお薬手帳の保管場所を確認しよう)
- 飲んでいるサプリ
- アレルギーの有無(過去にアレルギーの症状が出たことがないかなど確認)
入院時に必要な身元保証人
入院の手続きをする時に、住所が異なる親族など「身元保証人」を求められるケースがあります。また、手術を受ける場合は主治医から説明を受け「同意書」にサインをします。捺印を求められることもあるので印鑑も持参しましょう。
●身元保証人とは
入院・手術費用を本人が支払うことができない場合は身元保証人が支払わなければなりません。退院や転院の責任や万が一本人が亡くなった場合には、遺体を引き取る責任があることも意味します。
① 金銭の保証
② 退院、転院の手配
③ 亡くなった場合の身柄引き受け
④ 本人が意思表示できない場合の対応
このように、身元保証人は重大な責任を負うこととなります。頼れる家族や親族がいない場合は早めに対処しておくことが重要です。
入院時に必要なお金
入院保証金は病院によって異なりますが5万~10万程度、クレジットカードが可能な病院もありますが現金での支払いでないと受け付けてくれない病院もあります。入院保証金以外に医療費や入院中に使ったタオル類や病衣などのリース料などの支払いもあります。親の預金通帳がどこにあるのかわからない。キャッシュカードの暗証番号がわからないなど親の銀行口座からお金が引き出せなければ子どもが都度立て替えることとなります。立て替えるのにも限度があります。もしもの時に、親の銀行口座からお金が引き出せるように、対策しておきましょう。
親の情報を聞き出すタイミングが大事
親が元気なうちにもしもの時の入院の話や看取りの話、相続の話を子どもから切り出すと「縁起でもない、親のお金を狙っているのか!」などと思われ聞き出せないこともあります。しかし内心、親自身も「子どもに迷惑をかけたくない」「入院したらどうしよう」など考えているものです。タイミングを見計らって話をしてみましょう。
●タイミング①親の兄弟姉妹、友人が倒れた時
親の兄弟姉妹や親しい友人が入院してその連絡を受けた時やお見舞いにいった時など、入院する際の情報を聞き出す絶好のタイミングです。その後、入院した人が、退院した後どうなったかなどを聞き出すと、親の退院後の考えを引き出せることもあります。その後の様子も聞き出してみましょう。
●タイミング②お盆やお正月など家族が集まる時
家族が集まる時に、親だけでなく他のきょうだいと意見を交わしておくと実際に親が入院した時にスムーズに連携ができます。親にいきなり亡くなった後の話をするのではなく、親戚や友人の様子などを聞いてみて、「実はね…だれだれが入院して」などきっかけになりそうな会話が出てきたら、親ともしもの時を話し合いができるタイミングです。
●タイミング③親の兄弟姉妹、親しい友人が亡くなった時
子どもから親に話を切り出す時に話しにくい内容は「看取り」と「相続」に関することです。親にまだまだ実感がなく、自分は元気で他人事と思っている時は伝わらないこともあります。しかし、親の兄弟姉妹や親しい友人が亡くなった時は自分事として考えてくれるタイミングとなります。しかし、身近な人が亡くなった時に話を切り出すタイミングで気をつけたいのは、片方の親を亡くした時です。残された方の親が精神的に落ち込んでいることもあるので無理をしないようにしましょう。
まとめ
なるべく来てほしくない「もしもの時」…ただ、突然やって来た時になるべく慌てないようにするための準備を行っておくことの大切さをお伝えしました。いきなり「もしもの時はどうしたい?」と親に聞いても親もどう答えたらいいのかわからないのではないでしょうか…いずれにしても、一度に全部聞き出そうとはせず、聞きやすいところから少しずつ情報を集めノートに書きだしていきましょう。そして、ふだんから親だけでなく、きょうだいともコミュニケーションを取ることが大事です。
小笹 美和(おざさ みわ)
笑顔相続サロン®京都代表
全国相続診断士会事務局 京都相続診断士会会長
株式会社ここはーと相続事務所 代表取締役
(一社)社会整理士育成協会 事務局長
笑顔相続アカデミー教授 相続コンサル実務塾講師
上級相続診断士、終活カウンセラー1級、介護支援専門員などの多数の資格を持ち、
終活・相続・介護を専門分野とする相続コンサルタント。
介護福祉業界に長年勤め、ケアマネジャーや訪問調査員などで高齢者との1,000件を超す面談実績を持つ。高齢者にわかりやすい説明とヒアリング力で介護にも強い相続診断士として相続や介護相談を受けている。