相続のコラム

相続の対策も手続きも共通する初めの一歩 ~相続人と相続財産の調査~

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1. 今、特に不安や問題は無いので、何を準備すればよいか分からない

本人は、争うほどの財産もなければ、家族仲も悪くない。そのような理由から必要性が実感できないので、今から準備しなくても後でよいのでは?そして相続人も相続財産はいらないと言ったので自分は関係なくなった、と思い違いをしている人もいます。

たしかに、生前に準備しなくても、大抵の手続きは死後にすることが可能です。

では、そもそも準備って何?必要?と見当が付かないと思うので、生前と死後の手続きに共通して必要な最初の一歩となる「準備」が何かをお伝えします。

1-1.  相続税がかかるほどの財産がない

相続税がかからなければ、10か月以内に相続税を納税する義務がないということです。

しかし、相続人と財産を調査して、相続人全員で遺産分割協議をおこない財産を引き継ぐ手続き、又は相続人の一部もしくは全員の相続財産放棄の手続きの場合には3か月という期限もあります。

1-2.  一人っ子なので揉めることがない

両親と子が一人の場合は揉めることは無いように思いますが、家族関係にかかわらず手続きはしなければなりません。

相続人は配偶者と子しかいないと家族内でわかっていても、第三者に対し客観的に証明する必要があるので相続人と財産を調査して、遺産分割協議をおこない財産を引き継ぐ手続き、又は相続人の一部もしくは全員の相続財産放棄の手続きの場合には3か月という期限もあります。

1-3.  財産は一切いらない

相続財産を引き継ぐ意志がないと言っても、何もしなくてよい訳ではありません。相続人と財産を調査して、相続人全員で遺産分割協議をおこない、その場で自分の取り分はいらないと主張するか、相続財産放棄の手続きの場合には3か月という期限もあります。

また、財産調査をしなければマイナスの財産があることは見つけにくく、期限内に手続きをしなければ債務を引き継ぐことになります。

このように生前に何もしない場合でも、そのまま何もせずに終わるということはありません。

死後に相続財産を引き継ぐ手続き、または引き継がない手続きの、どちらかを行う必要があります。

その際、財産や家族構成にかかわらず最初にすることが「相続人の調査」と「相続財産の調査」になります。

2.  生前に準備すること

生前対策について多くの人は、遺言書作成と生前贈与が思い浮かぶと思います。

2-1. 遺言書作成

本人の望む相手に望む財産を引き継がせることができます。推定相続人以外の人(法人)を指定することもできます。

特定の相続人に一切財産を渡さないとする場合に、遺留分権利者(*)が誰かを調べるために「推定相続人」の調査は必要です。

そして、争いを避けるために「相続財産」を調査して計算した遺留分相当額を引き継ぐ内容にして作成します

*遺留分権利者・・・遺言や生前贈与に左右されず最低限度の遺産取得が認められている一定の相続人。 配偶者、子・代襲相続の孫、両親・祖父母など兄弟姉妹以外の法定相続人です。

2-2. 生前贈与

相続税がかかる場合の節税を考えて、財産の一部を生前贈与にする対策も増えています。

何をどれだけ生前贈与するかを判断するには、相続税と贈与税を計算して両方のバランスを考えます。

その計算のために、「推定相続人」や「財産を確定」する必要があります。

この他の生前対策に、任意後見制度や家族信託もありますが、それにも戸籍などの身分を証明する書類は必要になります。

3.  生前にも死後にも共通して必要な準備と書類

このように、いずれにしてもどこかのタイミングで何らかの手続きが必要なことは理解されたと思います。

そして、これらの手続きの中で共通して必要なことが「(推定)相続人の調査」と「相続財産の調査」です。

生前に何もしていない場合、遺産分割協議をするにも、相続放棄を考えるにも、亡くなった後1番にしなければいけないことはこの2つです。

生前対策をする場合でも、「(推定)相続人の調査」と「相続財の調査」をして、確定しなければ、遺留分権利者や遺留分相当額も計算できませんし、相続税額の計算もできません。

3-1.  相続人および推定相続人確定の調査で必要となる書類

・亡くなった被相続人の出生から亡くなるまでの連続した戸籍や住民票の除票
・相続人の戸籍や住民票

3-2.  相続財産調査で必要となる書類

・預金口座銀行の通帳やキャッシュカード、残高証明書
・不動産の登記事項証明書、固定資産税納税通知書、不動産の権利書、名寄帳
・証券会社からの報告書、配当金振込先通帳、残高証明書
・車の車検証や自動車税納税証明書
・生命保険の保険証券
・借用書、請求書や督促状、信用情報機関への情報開示請求
・抵当権のある不動産登記事項証明書
・ローンの契約書や引落し銀行口座の詳細
・貴金属や骨董品の査定額

その他、財産によります

4.  生前に準備しておくメリット

推定相続人の調査の必要性
・各相続手続きで相続関係を証明する書類を求められる
・遺産分割協議に参加する相続人の確定
・相続税や贈与税などの計算に必要な情報
・相続させたくない人への対策

相続財産の調査をしておく役割
・全財産を一目で把握できる
・相続放棄する場合の判断の目安になる
・遺産分割協議の話し合いがすぐにできる
・相続税申告の有無を判断や対策を立てる、申告がスムーズ
・相続手続きの計画を立てる目安となる
・不要な債権が付いている、記載間違いがある登記事項証明書を事前に訂正できる

生前にしておく最大のメリットは「相続人間のトラブルの回避」と、「手続きが最短でスムーズに進む」ことです。

たとえ、遺言書作成や生前贈与などの相続税対策ができなかったとしても、本人と相続人が話し合うことで、想いや意思を共有し、相続財産も把握できています。さらに準備する書類も揃っているので、相続人の負担がなくスムーズに最短で手続きを進めることができます。

何の準備もないまま、死後に相続人だけで初めて話し合う場合は、想いを知ることができず、話し合いに必要な戸籍収集や相続財産の把握に時間と労力がかかることで疲弊してしまいトラブルのもとになります。

結局、いつかすることなら「推定相続人の調査」と「相続財産の調査」をしてみてください。頭の中で把握していることも文字にして共有することにより、気持ちの整理と誰に何を引継ぎたいか具体的なイメージがつき、相続対策の何から手を付ければよいかわからない、相談するにも何を話せばよいかわからない、という人にお勧めの第一歩です。


【筆者プロフィール】

行政書士上田静香事務所 https://www.su-souzoku.com/
代表 上田静香(うえだ しずか)
2013年行政書士事務所を開所
一般社団法人相続診断士協会パートナー事務所 相続診断士
笑顔相続道正会員
カリン株式会社 代表取締役 https://www.karin-pono.com/
「お一人様」を「おひとり様」のままにさせない、50歳以上の元気なお一人様の見守り事業
完全紹介制の会「Pono Club」の運営
1. 健康である今、何も対策をしないと相続が起きた時にどんなリスクが起きるのか?を明確にして対策をお伝えします
2. 難しい法律用語を使わずにわかり易い言葉でご説明します
3. 忙しいクライアント様の手間を最小限にします
家族が争うことなく大切な毎日を笑顔で送る生前対策を提案し
悲しみの中で慣れない相続手続きをする大変さや不安を解消します。

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