厚生労働省「令和2年患者調査」によると、貧血の総患者数は21.2万人で多くの方が貧血となっていることが分かります。長年貧血に悩まされているという人も、健康診断などで指摘されて初めて気が付いたという人もいるでしょうが、医療保険に加入する際に貧血であることは何か悪い影響はあるのでしょうか?
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貧血でも医療保険に入れる?
貧血の場合で医療保険に加入できるかは、貧血の程度や貧血となっている原因によっても変わります。貧血の程度が軽かったり、完治から一定の期間が経過していたりすれば問題なく医療保険に加入できる場合もあります。しかし、貧血の症状が重かったり貧血の原因として他の病気が隠れている可能性があったりして、入院や手術のリスクが高いと判断されたら医療保険の加入は難しくなります。
一口に貧血といってもその症状や原因は様々であり、また、保険会社によって加入の判断基準は異なる部分があります。貧血であれば絶対に医療保険に加入できないということはないので、貧血の症状や原因、ヘモグロビンの値、入院の有無などを正確に告知の上で実際に医療保険に申し込んでみるのがよいでしょう。
一般の医療保険に加入できなかったときは?
仮に一般の医療保険に申し込んで加入を断られてしまったとしても、まだあきらめる必要はありません。引受基準緩和型の医療保険であれば加入できる可能性があります。
引受基準緩和型医療保険とは、漢字の通り、保険会社が契約を引き受ける基準を緩和している医療保険です。「持病があっても入りやすい」などと宣伝しているのを見聞きしたこともあるのではないかと思います。どのように緩和しているかというと、健康状態に関する告知が3~5項目程度の「はい」か「いいえ」で答えられる質問になっていて、それにすべて「いいえ」と答えられるのであれば申し込み可能となっています(過去の保険料の支払状況など健康状態に関すること以外で契約できないこともあります)。
告知項目は保険会社によって異なりますが、イメージとしては以下のような形になっています。
- 現在入院中ですか?
- 過去3か月以内に入院や手術、検査をすすめられたことはありますか?
- 過去2年以内に病気やケガで入院したことや手術をしたことはありますか?
- 過去5年以内にがん(悪性新生物)で入院または手術をしたことはありますか?
※あくまでもイメージです。告知項目は保険会社によって異なります。
入院や検査をすすめられたからその前に加入しておくということはできませんが、貧血など健康状態に不安があっても加入しやすくなっています。また、通常の医療保険にも言えることですが、引受基準は保険会社によって異なります。そのため、同じ人でもA社では加入できず、B社では加入できるということが起こりえます。保障内容を比較する意味でも、複数社の医療保険を検討してみるのがよいでしょう。
引受基準緩和型医療保険のデメリットは?
健康状態に不安がある方でも入りやすい引受基準緩和型医療保険ですが、それゆえ、一般の医療保険と比べるとデメリットといえる部分もあります。どのようなデメリットがあるのか紹介します。
保険料が割高
引受基準緩和型医療保険は通常の医療保険と比べて保険料が高くなっています。持病がある方や健康状態に不安がある方は健康な方と比べて入院や手術をする確率が高いので、保険金を請求する確率も高くなります。多くの保険金が請求されるのに保険料が通常の医療保険と同じでは保険を運営していくことができません。したがって、引受基準緩和型医療保険は通常の医療保険と比べて保険料が高くなっているのです。一般の医療保険に加入できる方が高い保険料を払って引受基準緩和型に入る必要はないので、先に一般の医療保険の加入を検討するのがよいでしょう。
一定期間は保障が半分になる商品も多い
加入後1年間など一定期間内は入院給付金や手術給付金などの給付額が50%に削減される商品も多いです。自分が加入時に抱えている健康不安とは関係がない病気・ケガによる入院や手術であっても保障額が減らされてしまいます。契約を引き受ける基準を緩和しているので、保険会社側のリスクを低減させるためにこうした設計となっているのです。しかし最近ではこの保障が削減される期間がない商品も出てきています。
特約のバリエーションが少ないことがある
引受基準緩和型医療保険では選択できる特約の種類が同じ保険会社の通常の医療保険と比べて少なくなっていることがあります。入院や手術以外にも様々なことに備えたいと思っていても該当する特約がなく、保障をあきらめざるを得なかったり別の保険を探さなければいけなかったりすることもあるのです。また、特約が用意されていても一般の医療保険のものよりも保険料が高く設定されていることもあります。
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貧血だとなぜ保険に加入しづらくなる?
貧血の場合、その症状や原因によっては一般の医療保険に加入することは難しくなります。「たかが貧血」と思うかもしれませんが、なぜ貧血だと医療保険の加入がしづらくなるのでしょうか?
貧血で医療保険に加入しづらくなるのは、健康な人よりも入院や手術の可能性が高くなるからです。貧血になる人も多く、また、体も貧血の状態に慣れてしまうので軽く考える人も多いですが、貧血の状態というのは血液が酸素を運搬する能力が低下していることになります。そのため、体内に酸素を供給するために心臓の働きが過多となってしまう恐れがあります。重い貧血を放置していると、高拍出性心不全を招くことも考えられます。
また、貧血となっている原因として別の病気が潜んでいることもあります。子宮筋腫などの子宮の病気により月経過多で貧血となることもありますし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍など消化器系で出血を起こしていて貧血となることもあります。重篤なものとしては白血病の初期症状として貧血となっている可能性もあります。
このように、貧血の場合は健康な人よりも入院・手術の可能性が高く、特に症状が重い方や貧血の原因が分かっていない方は医療保険の加入がしづらくなってしまいます。
貧血とは
健康診断では血液検査において赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビンの値が測定されており、それらの値によって貧血を判断することが出来ます。
では、それらの数値以外にも貧血の特徴とはどんなものがあり、貧血とはそもそもどういう病気なのでしょうか。
貧血の定義
貧血とは、血液中で酸素の運搬をしている赤血球を構成するヘモグロビンという物質が少なくなっているために起こる病気です。赤血球は主に蛋白質・鉄・ビタミンB12・銅・葉酸・ビタミンB6等多くの栄養素で作られていますが、その鉄の欠乏により血液中の赤血球やヘモグロビン濃度が減少し、体内の酸素が少なくなる状態であり、様々な赤血球系の異常が貧血の原因となっています。一般的に若年~中年女性に多く発症されます。
貧血状態では頭痛、めまい、動悸、息切れ、易疲労感、眼瞼結膜蒼白などの症状がみられます。
ヘモグロビン濃度基準値は一般的に成人男性の場合14~18g/dL、女性の場合は12~16 g/dLといわれています。
したがって、成人男性では14 g/dL未満、成人女性では12 g/dL未満が貧血の基準値となります。
貧血の症状
貧血の症状は①血液酸素運搬機能低下による症状、②循環血液量の減少による症状、③貧血に対する生体の代償による症状、④貧血を起こす基礎疾患による症状に分類されます。
それぞれの症状は以下の通りです。
①血液酸素運搬機能低下による症状
脳、心筋、筋肉は酸素需要が高い為、以下のような症状がみられます。
・脳の症状:めまい、頭痛、耳鳴り、失神、集中力欠如、傾眠など
・心筋の症状:狭心症、心不全など
・筋肉の症状:脱力感、易疲労感など
②循環血液量の減少による症状
・急性出血の際のショック
③貧血に対する生体の代償による症状
・心臓:動悸、頻脈、心雑音、
・肺:息切れ、起坐呼吸(臥床すると呼吸苦が生じる)
・皮膚の蒼白など
④貧血を起こす基礎疾患の症状
・子宮筋腫による過多月経、消化管腫瘍による下血、腹痛など
貧血は血液検査で知ることが出来る赤血球恒数により主に5つに分類されています。その中でも頻度が高い「鉄欠乏性貧血」について紹介します。
鉄欠乏性貧血
体内の鉄需要が供給を上回り、赤血球のヘモグロビン合成が低下して起こる貧血であり一般に若年~中年女性に多くみられます。貧血の中で最も頻度が多く、日本では貧血の約2/3を占めています。
原因
鉄欠乏性貧血は、潰瘍や痔などの出血や妊娠・分娩・授乳、成長によって鉄の必要度が高くなることが原因となります。
男女共通のものでは、慢性消化管出血、痔出血、出血性腫瘍など、女性特有のものでは、子宮筋腫、性器出血、出産による失血、過多月経などが多くなっています。
また、特に若い女性では無理なダイエットによる偏食・節食で栄養不足となり、起こる場合もあります。
鉄欠乏性貧血に特徴的な症状
鉄欠乏性貧血にみられる特徴的な症状としては、頭痛、めまい、動悸、息切れ、易疲労感、異食症などの他に以下のような症状がみられます。
・爪の中央がスプーンのように曲がり先が反る「さじ状爪」
・眼を「あっかんベー」の状態にしたときにまぶたの裏側が白くなっている「眼瞼結膜蒼白」
・舌が赤くなり表面が平滑化した「舌乳頭萎縮」
治療法
体内に鉄を十分に貯えるために、貯蔵鉄が十分に回復するまで鉄剤を経口投与するのが基本的な治療となります。
鉄剤の特徴と副作用
鉄剤とは、血液中の酸素を体内に運ぶ赤血球を構成するヘモグロビンをつくるときに必要な鉄分の不足を補い、食欲不振、疲労感、頭痛、労作時の息切れなどの貧血の症状を改善する薬です。
主な副作用は以下のとおりです。
副作用 |
症状 |
---|---|
消化器症状 |
食欲不振、胃部不快感、吐き気、便秘、下痢 |
過敏症 |
発疹、かゆみ |
肝機能障害 |
体がだるい、疲れる、熱がある、皮膚や白目が黄色くなる |
食事療法のポイント
鉄分を多く含む食品を効率よく摂取し、鉄分の吸収をよくする動物性蛋白質、ビタミンC、赤血球生成を助けるビタミンB12、葉酸を多く含む食事をとることが大切です。食事に含まれる鉄には、野菜類に含まれる吸収の悪い非ヘム鉄と、肉類に含まれる吸収の5~10倍も良いヘム鉄があります。貧血の症状がひどい人はヘム鉄を多く含む食品を摂ることも大切です。
ビタミンB12は、肉類、卵、牛乳等に含まれており、葉酸は、緑黄色野菜、レバー、乳製品等に含まれています。
成人の1日の鉄所要量は男性の場合10mg、女性の場合12mgです。なお、妊婦・授乳婦は赤ちゃんの分も必要となる為、1日15~20mg必要です。
鉄分を多く含む食べ物
ヘム鉄を多く含む食べ物 |
非ヘム鉄のみを含む食べ物 |
||
---|---|---|---|
食品名 |
鉄(mg)/100g | 食品名 | 鉄(mg)/100g |
豚レバー |
13 |
干しひじき |
55 |
あさり |
7 |
ほうれん草 |
3.7 |
めじまぐろ |
4 | 大豆(乾) | 9.4 |
牡蠣 |
3.6 | 小松菜 | 3 |
牛肩肉 |
2 | 煎り胡麻 | 9.9 |
煮干し |
18 | 卵黄 | 4.6 |
ビタミンCを多く含む食べ物
食品名 |
VCmg/100g |
---|---|
ブロッコリー |
160 |
いちご |
80 |
みかん |
100 |
ほうれん草 |
65 |
じゃがいも |
23 |
予防策
- 1日の栄養所要量を満たすバランスのとれた3回の食事をとり、効率のよい鉄の補給に努めましょう。
- 睡眠は十分にとり生活が不規則にならないようにしましょう。
- 鉄は徐々に吸収されるので体内への鉄の貯蔵には時間がかかります。薬が処方された場合は自分で量を増減せず根気よく続けましょう。
まとめ
貧血の場合、症状や原因によっては一般の医療保険に加入しづらくなります。しかし、まったく医療保険に加入できなくなるというわけではありません。症状や原因、ヘモグロビンの値、入院の有無などを正確に告知の上で医療保険に申し込んでみるとよいでしょう。仮に、一般の医療保険に加入できなくても引受基準緩和型医療保険であれば加入できる可能性があります。保険料が割高などのデメリットもありますが、健康状態に不安がある方でも加入しやすくなっています。一般の医療保険でも引受基準緩和型の医療保険でも保険会社によって引受基準は異なるので、複数の保険会社の商品を比較してみましょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。