医療費の自己負担額が高額となった時に高額療養費として自己負担限度額以上の金額が戻ってくるように、公的介護保険の自己負担額が一定以上となった場合には高額介護サービス費として上限額を超えた分の金額が戻ってきます。どのような制度なのかや自己負担限度額、何が支給対象となるかなどについて紹介します。
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高額介護サービス費とは
高額介護サービス費とは、公的介護保険の1か月間の自己負担額の合計が所得に応じた上限額を超えた場合に、その超過額について払い戻しを受けられる制度です。公的介護保険によって自己負担額は1割(所得によっては2割または3割)に抑えられますが、それでも多くの介護サービスが必要となった場合には自己負担額がかさむことがあります。しかし、上限額以上の負担については払い戻しを受けられるのです。
自己負担の限度額
2021年7月まで
区分 | 負担の上限(月額) |
---|---|
現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方 | 44,400円(世帯※1) |
世帯のどなたかが市区町村税を課税されている方 | 44,400円(世帯)※2 |
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市区町村民税を課税されておらず、かつ、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人※1) |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
- ※1 世帯とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指し、個人とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。
- ※2 以下の①と②の両方に該当する場合は年間(8月から翌年7月まで)の上限が446,400円となります。(2020年7月までの時限措置)
- ①同じ世帯のすべての65歳以上の方(サービスを利用していない方も含む)の利用者負担割合が1割
- ②世帯が現役並み所得者世帯に該当しない
2021年8月から
区分 | 負担の上限(月額) |
---|---|
課税所得690万円(年収約1160万円)以上 | 140,100円(世帯※1) |
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
市区町村税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市区町村民税を課税されておらず、かつ、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人※1) |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
※1 世帯とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指し、個人とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。
例えば、世帯の自己負担の上限が月24,600円の世帯で1か月間の自己負担の合計が35,000円となった場合、差額の10,400円が払い戻されます。
介護保険で将来の介護生活に備えよう
支給対象とならないのは?
高額介護サービス費の対象となるのは公的介護保険の自己負担部分(1割~3割負担の部分)です。ただし、以下のような費用は高額介護サービス費の対象とはなりません。
- 特定福祉用具購入や住宅改修にかかる負担
- 施設における居住費(短期入所の場合は滞在費)および食費
- 理美容代などの日常生活に要する実費
- 生活援助型配食サービスにかかる負担等
介護に関連する費用であれば何でも支給対象となるわけではありません。もともと介護保険の対象外となる費用に加えて、ポータブルトイレや入浴補助用具などの特定福祉用具の購入費用や手すりの設置などの住宅改修にかかる費用については高額介護サービス費の対象外となりますので注意してください。
高額介護サービス費の手続き方法
高額介護サービス費の支給対象となる場合にどのように手続きをすればよいのか、その流れを説明します。
- 上限額を超えた金額の負担が発生すると、お住まいの自治体から高額介護サービス費の支給申請書が送られてきます。
- 申請書に必要事項を記入・押印します。
- 自治体指定の窓口に持参したり郵送したりします(お住まいの自治体の指示に従ってください。)。
- 申請が受理されると申請時に指定した口座に振り込まれます。
- 2回目以降については初回に指定した口座に自動的に振り込まれます。
申請期間は支給対象となった介護サービスが提供された月の翌月1日から2年間となっています。お住まいの自治体から申請書が届いたら忘れないうちに手続きを済ませましょう。
自己負担分を民間介護保険でカバー
民間の介護保険は必要?
高額介護サービス費によって介護サービス費の自己負担額は一定の金額に抑えられます。介護費用に備えるうえで、民間の介護保険に入る必要性はあるのでしょうか。
その答えとしては、年金を含む収入や預貯金でなどで介護費用をカバーしきれない場合や介護状態になった時に面倒を見てくれる人がいない場合などでは民間の介護保険も加入を検討した方が良い、となります。なぜなら、公的介護保険では介護費用のすべてをカバーすることはできず、また、したがって公的介護保険の自己負担額が高額になった時に支給される高額介護サービス費ではカバーしきれない金額が出てくるからです。
実際に、生命保険文化センターが実施した令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によれば、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。また、介護期間の平均は61.1か月となっています。この数字から計算すると、介護期間全体で平均約600万円の費用がかかることになります。こうした費用負担に耐えられそうにないのであれば、民間の介護保険に加入することも考えた方が良いでしょう。
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まとめ
公的介護保険の1か月間の自己負担額の合計が所得に応じた上限額を超えた場合、その超過分の金額が高額介護サービス費として払い戻されます。初回は自治体から申請書が届くので忘れずに申請を行いましょう。2回目以降は初回に申請した口座に自動的に振り込まれます。なお、公的介護保険の対象とならない費用や特定福祉用具購入費用、住宅の改修費用については高額開度サービス費の対象とはなりません。
介護費用の準備において、高額介護サービス費の存在を認知しておくことは大切ですが、上述の通り介護費用のすべてが対象となるわけではありません。自己負担する介護費用として一時費用が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円かかるという調査もあるので、こうした費用負担に耐えられそうにない場合は民間の介護保険に加入することも考えましょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。