子供の教育資金を貯める方法として昔から学資保険が多く使われてきました。しかし、マイナス金利の影響で学資保険の返戻率が下がってしまったことから、新たにできた投資に関する非課税制度の「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」を検討する人も増えてきています。
ジュニアNISAやつみたてNISAとはどのようなものなのか、学資保険とどちらがよいのかについて紹介します。
目次
ジュニアNISA、つみたてNISAとは?
まずはジュニアNISAとつみたてNISAがどのようなものなのかを紹介します。
概要の比較
ジュニアNISAとつみたてNISAについて細かく説明する前にそれぞれの概要を表にまとめました。
ジュニアNISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
対象者 | 日本在住で0歳~19歳 | 日本在住で20歳以上 |
金融機関変更 | 不可 | 可(1年に1度) |
取引主体者 | 原則、親権者等 | 本人 |
非課税投資枠 | 80万円/年 | 40万円/年 |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長20年間 |
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資からの運用益 | 一定の要件を備えた投資信託等への投資からの運用益 |
買付方法 | 一括、積立 | 積立のみ |
払い出し制限 | 18歳になるまで払い出し制限あり※ | なし |
※ジュニアNISA廃止後の2024年以降は払い出し制限なし
ジュニアNISAとは
ジュニアNISAとは、日本に住む0歳~19歳までの未成年者を対象に、年間80万円までの非課税投資枠で購入した上場株式や投資信託、ETFなどから得られた譲渡益(値上がりした株式などを売却して得られた利益)、分配金・配当金の税金が非課税になる制度です。
非課税期間は最長5年間なので80万円×5年間で最大400万円まで非課税枠内で投資することができます。ただし、ジュニアNISAは現状では2023年までの期間限定の制度なので、ジュニアNISAの枠内で購入できるのは2023年までです。
ジュニアNISAの口座の名義は未成年者(子供)ですが、運用の主体は親権者等です。年間80万円までなので贈与税の基礎控除(年間110万円)の中で子供に資産を移動することができます。また、教育資金として利用するのが主な目的であるため、原則として18歳まで払い出しすることはできません。災害時などを除き、途中で出金した場合は利益について非課税にならずに遡及して課税されます。なお、ジュニアNISAが廃止される2024年以降は払い出し制限が撤廃されます。
つみたてNISAとは
つみたてNISAとは、日本在住で20歳以上の人を対象に、年間40万円までの非課税投資枠で購入した投資信託等から得られた譲渡益、分配金・配当金の税金が非課税となる制度です。
非課税投資枠は年間40万円とジュニアNISAよりも小さいですが、非課税期間が最長20年間と長く、40万円×20年間で最大800万円まで非課税で投資することができます。ただし、つみたてNISAは現時点では2037年までの期間限定の制度なので、つみたてNISAの枠内で投資信託を購入できるのは2037年までです(2042年までに延長見込み)。
つみたてNISAで購入できるのは一定の要件を満たした投資信託等のみです。資産形成の基本である長期・積立・分散投資を実践できるよう、販売手数料がゼロ、信託報酬(投資信託を管理・運用してもらうための費用で、保有している間投資家が支払い続ける費用)が一定の基準以下などの要件を満たした商品しか購入できません。失敗しにくいように初めから商品が絞り込んであるのが特徴です。
学資保険とどちらがいい?
子供の教育資金を貯める方法として、学資保険とジュニアNISA、つみたてNISAはどれがよいのでしょうか。
学資保険、ジュニアNISA、つみたてNISAの比較表
学資保険 | ジュニアNISA | つみたてNISA | |
---|---|---|---|
収益性 | 低 | 高 | 中 |
安全性 | 高 | 低 | 中 |
途中解約(払い出し) | 可能だが元本割れする可能性あり。 | 原則不可(2023年まで)。解約する場合は運用益に対して遡及して税金がかかる。 | 可能。元本割れするかは運用成績による。 |
利益に対する税金 | 課税対象。控除額内で収まればかからない。 | 非課税 | 非課税 |
その他の特徴 | 契約者死亡時の払込免除などの保障を付けることができる。 保険料が生命保険料控除の対象 | 口座の名義は子供。 贈与税の控除額内で子供に資金を贈与できる。 | 投資可能な商品が限られている。 一般NISAと併用できない。 |
学資保険が向いているのは?
学資保険が向いているのは子供の教育資金に対してできるだけリスクは取りたくない人です。保険料が払えずに途中で解約してしまったり、契約している保険会社が倒産してしまったりしなければ、満期等に契約時に定められた金額を受け取ることができます。あらかじめ受け取れる金額が分かっているので資金の計画を立てやすいというメリットもあります。
また、契約者に万が一のことがあった場合も保険料の払込が免除されて満期時に予定通り保険金を受け取れる特約を付けることができます。親が死亡したり高度障害を負ったりして教育資金を用意できなくなることを防ぐことも可能です。
ただし、デメリットとして学資保険ではあまり資金が増えないということがあります。また、商品によっては満期まで保険料を支払っても返戻率が100%を下回る(元本割れする)ものもあります。教育資金を貯めるという面では、安全性は高いですが大きく増やすこともできないのが学資保険です。
ジュニアNISAが向いているのは?
ジュニアNISAが向いているのは資産に余裕がある人です。ジュニアNISAは投資の運用成績によって大きく利益が出る可能性もありますが、逆に大きく減る可能性もあります。また、原則として子供が18歳になるまで払い出しができません。そのため、元本割れしたら教育資金を用意できないという状況の人はジュニアNISAで教育資金を用意するのには向いていません。最低限の教育資金は用意する目途が立っていて、さらに使える教育資金を増やしたいという場合はジュニアNISAで投資にチャレンジしてみるのもよいかもしれません。
つみたてNISAが向いているのは?
つみたてNISAが向いているのは教育資金を貯めるのに多少のリスクならとっても良いという人です。つみたてNISAは制度上、長期に運用した場合のリスクが抑えられています。そのため、大学の入学資金など投資期間が十分に確保できる場合は、一般の家庭でも十分に選択肢に入るのがつみたてNISAです。とはいえ、投資なので元本保証はありません。資金が必要となる直前にリーマンショックのような状況になれば大きく元本割れすることもあり得ます。
教育資金を貯めるのにリスクは取れない、あるいは取りたくないという場合には学資保険の方が向いているでしょう。一方で教育資金を増やすための多少のリスクは許容できるのであれば、つみたてNISAの利用を考えてみてもよいでしょう。
まとめ
教育資金を貯めるのに、学資保険ではなくジュニアNISAやつみたてNISAを検討する人も出てきています。それぞれに収益性やリスクが異なるので、家庭の状況に応じてどの手段で教育資金を貯めるのか決めるとよいでしょう。
資金が十分にあって教育資金を取るのにリスクを散ることができるのであればジュニアNISA、多少のリスクであれば許容できるので学資保険より増やすことを狙いたい場合はつみたてNISA、教育資金を貯めるのにリスクは取れない、リスクは取りたくないという場合は学資保険というのを基本に検討してみましょう。