相続のコラム

おひとりさまが認知症になったときの事前の備えとは

投稿日:2021年4月26日 更新日:

認知症になったからといってすぐにひとり暮らしができなくなるわけではありません。

しかし、身近に家族がいる方とは違って医療や介護、福祉など周囲のサポートを受けて生活する必要があります。認知症でも住み慣れた自宅で長く過ごすためには、元気な時から自分の老後をイメージし準備をしておくことが必要です。

認知症は誰もが発症する可能性がある

2025年には、65歳以上高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。長生きをすればするほど認知症になる確率が高くなり、80代前半では約2割、80代後半では約4割、90代前半では約6割、95歳以上では約8割もの人が認知症になるとのデータがあります。認知症は決してまれな病気ではなく、誰もが年を取れば発症するリスクがある、ごくありふれた病気なのです。

認知症有病率は高齢者の15% 日本では生涯半数が認知症に罹患

【参考データ】国立長寿医療研究センターもの忘れ研究センター「認知症はじめの一歩」より

認知症にはレベルがある

アルツハイマー型認知症がもっとも多いタイプと言われ、認知症と診断される高齢者の約6割を占めています。アルツハイマー型認知症の多くは時間をかけて進行するため発症からの経過期間は7、8年から15年ほどで症状も発症初期(軽度)、中期(中度)、後期(重度)へとゆるやかに進行するのも特徴です。

進行のスピードは、治療やケア、環境、周囲からのサポートなどに左右され個人差があります。おひとりさまは認知症が進みにくいというケースも見られますが、早期に発見して内服治療を始め、周囲のサポートを受けることで進行を緩やかにし、環境を整え穏やかに暮らすことが重要となります。

初期(軽度)

初期の段階で、記憶をつかさどる脳の「海馬」という部位の神経細胞が冒されることから、記憶障害(もの忘れ)の症状が目立ちます。理解力や判断力・集中力の低下、怒りっぽくなるなどの症状も見られ、徐々に日常生活に支障が出てきます。

中期(中度)

記憶障害が加速し新しい出来事は覚えられません。場所や時間なども分からなくなり季節感も失われるため昼夜逆転の症状や季節に合った服装が選ぶことも難しくなります。目的なく外出する徘徊や夜間に妄想が増え、家事や着替え、入浴など段取りや手順が分からなくなることで日常生活ができなくなってくる時期です。多くの場面でサポートや介助が必要となります。認知症介護の中で最も大変な時期で、適切な判断ができなくなり火の不始末などから在宅での生活が困難と判断される場合もあります。

後期(重度)

表情が乏しくなり反応がなくなります。コミュニケーション能力が失われ意思の疎通ができなくなり会話もできない状態に陥ります。尿意や便意を訴えることがなくなり、尿、便の失禁が常態化しオムツを付ける必要があり介護の手間が重度化していきます。

身体機能が低下すると、歩行や座位を保てなくなるため、最後は寝たきりに移行することもあります。後期になると在宅での生活はできなくなり施設入所となる方が多く見られます。

おひとりさまが認知症になって困ること

認知症の症状はさまざまです。とくにひとり暮らしで認知症が進行すると困ることが大きく2つあります。

お金の管理ができない

まずは、金銭管理が難しくなります。カードや通帳を紛失する、ATMの操作方法がわからなくなる。暗証番号もわからなくなるなどの問題が起こってきます。

介護サービスを受けることができない。

自分が受ける介護サービスの内容が理解できず、契約ができない状態になれば必要な介護サービスを受けることができなくなります。つまり、身体状況の悪化から入院が必要となった場合や、認知症の症状の進行から在宅では生活ができなくなり有料老人ホームへの入居や特別養護老人ホームなどの入所の契約を結ぶことができなくなるのです。

財産管理や介護サービスを事前に任意後見人に頼んでおくことのメリット

認知症の症状が進み、判断能力が不十分になったときに、あらかじめ契約しておいた財産管理や介護サービスに関する事務を任意後見人が行うことができます。

まずは、元気な時に信頼できる任意後見人を選びましょう。

どんな人が任意後見人になれる?

未成年や破産している人を除けば、誰を後見人とするかは自分で選ぶことができます。家族や友人・知人、専門家(相続診断士、弁護士、司法書士、行政書士など)、自分が信頼できる人に依頼することが大切です。

契約内容を決めておくことができる

契約の内容は自分で決めることができます。

例えば

「通帳を預かって管理してほしい」
「日常的な生活の支払いもしてほしい」
「できる限り住み慣れた自宅で過ごせるようにしてほしい」
「認知症が進行したら希望する施設に入所手続きをしてほしい」
「入院することになったらこの病院に入院させてほしい」

など、財産管理の方法や介護サービスなどの日常生活のサポート内容の希望を細かく契約できることが特徴です。

任意後見契約の結び方と報酬

契約書は公正証書で作成する必要があります。後見人を家族や友人・知人に依頼する場合でも専門家に相談しましょう。任意後見人への報酬は、本人と任意後見受任者との間で自由に決めることができます。一般の人が任意後見人になる場合の報酬は3万円以下で設定されることが多いようです。家族の場合は無報酬にすることもできます。専門家に依頼する場合は、月3万~5万円の報酬が相場だと言われています。報酬はいずれも本人の財産の中から支払うこととなります。

任意後見の開始

本人の判断能力が低下したときに、任意後見受任者や家族が家庭裁判所に、任意後見監督人の選任の申し立てを行い、任意後見監督人が選任されると任意後見契約が開始されます。

この任意後見監督人は、本人に不利益なことがないように任意後見人を監督します。任意後見監督人は弁護士や司法書士が選任され、この監督人にも月1万~2万円程度の報酬が掛かることがデメリットと言えます。

判断能力の衰えがなければ任意後見契約を使う必要はなく、あくまでも備えとなります。

また、判断能力が落ちたかどうか自分では判断しにくいものです。おひとりさまの場合は、自分の判断能力が落ちたときにすぐに申立てがしてもらえるように「見守り契約」の併用と、身体の機能が衰えて身体が動かなくなった時や長期入院、長期入所の備えとして「財産管理委任契約」を同時に契約しておくことをおすすめします。

もし、おひとりさまが何も対策せずに認知症になったら

高齢者のひとり暮らしで心配な認知症。症状が悪化し生活費や医療費などのお金の管理ができにくくなってきた。または、身寄りもなく入院や入所の際の契約をどうするかなど、周囲の人が心配し法定後見人選任の申立てを行うことが多くあります。

判断能力が不十分になってからの申立てとなり、自分の希望するサポートが受けられるかどうかわからないのが現状です。

法定後見制度とは

認知症や精神障害などで判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度です。

本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれます。

判断能力の有無や程度は医師の診断書などで判断し、類型により、後見人等に与えられる権限や職務の範囲が異なります。

申立てができる人は、本人・配偶者・四親等内の親族等・市町村長・検察官などに限られ家庭裁判所に選任申立てを提出し、後見人等を選任してもらうこととなります、

後見人になってほしい人として、身内の名前を書くことはできますが、あくまでも裁判所が選任するため、面識のない専門職が後見人等になってしまうことも多々あります。

選ばれた後見人等が「財産管理」と「身上監護(しんじょうかんご)」を行います。

「身上監護」とは、本人が安心した生活が送れるように生活や健康に配慮し、適切な契約を行うことを指し、具体的には、介護保険などの障害福祉サービスの利用手続き、入院の時の病院の手続きや支払いなどをすることです。

まとめ

おひとりさまが認知症になって困ることはお金の管理ができなくなることと自分の身体や生活を守ることができなくなることです。認知症になり困る状態になることを考え、事前にサポート体制をしっかり準備しておけば、問題を切り抜けやすくなります。適切な生活支援を受けること、お金の管理などの支援を受けることでひとり暮らしは可能です。認知症になってしまったら…と不安になるのではなく、自分の今の生活を振り返り、この先どう暮らしたいのかを考え備えることが大切です。

この記事を読まれた方が前向きに対策に取り組むきっかけになれば幸いです。


笑顔相続サロン®京都代表 京都相続診断士会会長
株式会社ここはーと相続事務所代表取締役
小笹 美和(おざさ みわ)

上級相続診断士、終活カウンセラー1級、介護支援専門員などの資格を持ち、
得意分野は介護・認知症・終活・相続のコンサルタント。介護福祉業界に長年勤め、
ケアマネジャーや訪問調査員などで高齢者と1,000件を超す面談実績を持つ。高齢者
にわかりやすい説明とヒアリング力で介護にも強い相続診断士として活動中。

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