私が死んでしまったら子供はどうなるの?
「もし自分が新型コロナに罹ってしまって、万が一亡くなってしまったら、と考えたら急に不安になりました」ある日、お客様が漏らした言葉でした。
この方は、40歳代シングルマザーで小学生のお子様が2人の合計3人の家族構成の方です。ご自身が万が一亡くなられた時、遺された小学生の子供たち2人で、遺族がやるべき事を全てこなす事が出来るのだろうか?という漠然とした不安を口にされたのです。
それを聞いて筆者もハッとしました。確かにそうです。人が亡くなられた後、遺された遺族がやるべき事は想像以上に沢山あります。万が一の時、遺された小学生のきょうだい二人でこれらの事に取り組もうとした場合、一体どの様な事になってしまうのかをお客様と一緒に想像してみることにしました。すると数多くの問題点や不安な点が浮き彫りになりました。とても子供二人でこなせる課題ではないことがはっきりしました。
また、いざという時に、頼める大人がいたら良いのですが、そのような家族ばかりではありません。
例えば
- 配偶者と死別されていて、実家や親せきも遠方か疎遠になっていて頼めない。
- そもそも配偶者から子供を離す目的で離婚したので、出来たら連絡も取ってほしくない。
など様々な事情により頼ることができる大人がいないというケースも多々あります。
実際この家族の近くには頼めそうな大人は見当たりませんでした。そこで、課題を洗い出すとともに、その課題を乗り越える対策を考えてみる事としました。
まずは、人が亡くなった後やるべき主な事柄を洗い出してみましょう。
亡くなった後にやるべきこと
基本の手続き(役所への届け出等期限が決まっている届け出が多い)
(ア)死亡届を役所に提出し同時に火葬(埋葬)許可を受ける
(イ)健康保険証の返還
(ウ)世帯主変更届
(エ)運転免許証の返還
(オ)在職中の場合は、死亡退職届や未払い給与、退職金等の受取
(カ)必要な条件に当てはまる方は準確定申告
などが一例です。亡くなられた方の置かれた状況によって必要事項は異なります)
もらう手続き(保険や年金等を受け取る手続き)
(ア)死亡保険金の請求
(イ)入院給付金の請求
(ウ)高額医療費の請求
(エ)葬祭(埋葬)費用の請求
(オ)死亡一時金の請求
(カ)遺族厚生年金や未支給年金の請求
などが一例です。(在職中か否か、年金の種類等により手続きは異なります)
引き継ぐ手続き(個人の財産を引き継ぐ(名義変更)手続き)
(ア)自動車の名義変更や自動車保険の名義変更
(イ)住宅の火災保険契約や生命保険等の変更
(ウ)電気ガス水道NHK受信料等の名義変更
(エ)銀行口座の解約、払い出し
などが一例です。(財産内容等により手続きは異なります)
やめる手続き(故人が契約していたサービス等をやめる手続き)
(ア)クレジットカードの解約
(イ)携帯電話の解約
(ウ)インターネット契約等様々なサブスク契約。
などが一例です。(まずはどのようなサービスを受けていたかを知るところからです)
法律上の手続き(相続人の確定や遺産分割、相続税の申告など)
(ア)相続人の確定
(イ)遺産をどのように分けるのかを決めて遺産分割協議書を作成する
(ウ)相続税の申告(必要な場合)
(エ)借入金の整理
などが一例です。
手続以外での最重要課題
最後になりましたが、上記の手続以外に最も大事な事があります。それは子供の生活をどのように支えていくかという事です。
子供に遺す財産を、子供の将来を考えどのように分配するか。進学や就職その他のタイミングでどの様に渡していくか等をシミュレーションし理想の通り分ける方法とその手段を作っておく必要があります。
この様に詳細を洗い出すことにより、遺された小学生のきょうだい二人きりでは、到底対応出来る事ではないという事がわかりました。
そこで、この課題を乗り越えるための対策を具体的に考えてみました。
具体的な対策とは?
1.課題の洗い出しと、「見える化」
最初に課題の洗い出しと理想の対策を検討します。
自分が亡くなった後必要な事務手続きについて具体的に洗い出し、どの様な事を準備する必要があるかを「見える化」します。その後、洗い出した課題に対して、自分や家族のために必要だと思われる対策を検討します。
この時、エンディングノートを活用することで、課題と対策の方向性を「見える化」する事がスムーズに出来ます。
2.亡くなった後の事務を第三者に委任する契約
必要に応じてですが、自分が亡くなった後の必要な事務手続き(前章参照ください)を第三者に委任する契約を生前に結んでおくことが可能です。
「死後事務委任契約」と言って生前に自分が亡くなった後の事を自分で決めて第三者に託しておく契約です。自分らしい人生の終い方を自分で決めておく事ができ、第三者が責任もって実行してくれるので、遺された子供たちの負担はかなり軽減しますね。契約は公正証書により契約しておくことが大切です。
3.理想的な遺産分けを形にする方法
子供の将来を考えて、理想的な遺産分けの方法を検討します。そして理想的な遺産分けを形にする手段を「遺言」で準備します。そうすることで、法定相続に縛られることなく子供一人一人の将来に寄り添う形で遺産分けが可能となります。
「遺言」では、「遺言執行者」と言って、遺言の通りに財産分けをする人を指定する事が出来ます。ここでも、第三者が責任をもって遺産分けをしてくれるので安心です。
「遺言」は、公正証書で作成する事がベストです。
4.生前のまさかについて
生前のまさかについても検討と対策が必要です。
身体が弱くなってしまい、一人で行動がとれなくなった場合の財産管理や身辺看護の事。更に、認知症等になってしまい後見が必要となってしまったケース。
亡くなる前に訪れるだろうと考えておくべきリスクかもしれません。
この様な場合の対応も、事前に第三者(家族に依頼も可能)に依頼しておく事が出来ます。
「財産管理委任契約」や「任意後見契約」という契約がそれにあたります。こちらも公正証書で作成する事が基本です。
終活や相続の準備は全ての方に必要
今回の相談者はエンディングノートを使用して課題の洗い出しを行い、「公正証書遺言」「任意後見契約」「死後事務委任契約」を公正証書で作成したことで、ほっとひと安心されていました。
シングル父母にとっては、もし自分に万が一のことがあった時、遺された子供たちはどうなるのか?という観点から検討しておくことは年齢を問わず大切な事であると言えます。
ただ、この事はシングル父母に限ったことではありません。もしご自身に万が一の事があったら、遺された遺族はどうなるのか?また、生前にやっておくべきことはないか?という観点からじっくり考えてみる時間を設けてもいいかもしれませんね。
人間誰にでも最後の日はやってきます。事前に終活・相続対策を行い不安を取り除くことで、その日までの人生を楽しく前向きに過ごす事が出来るはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
栗原久人
笑顔相続サロン®静岡代表
FP事務所 LP想暖や代表
保険代理店 有限会社シー・フィールド代表取締役
上級相続診断士・終活カウンセラー・ファイナンシャルプランナー(AFP)生前整理カウンセラー・住宅ローンアドバイザー
ファイナンシャルプランナー歴・保険代理店経営歴共に20年、ライフプランや家計の見直し等の相談件数は2000件以上。
2019年笑顔相続サロン®静岡を開設 特に相続診断士×ファイナンシャルプランナー×終活カウンセラーの要素を活かした、終活+生前+相続のトータル対策を得意としている。
【連絡先】
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