日本は世界に類を見ないスピードで超高齢社会に突入しました。出生数は最低を更新し続けているにもかかわらず、平均年齢は男性81.64歳女性87.74歳と上昇し、高齢化は今なお加速し続けています。この超高齢社会のなかで認知症も増加をしているのをご存知でしょうか?2012年には7人に1人だった認知症は、2025年には5人に1人が罹患するといわれています。軽度認知障害(MCI)も入れると2012年時点でも400万人(4人に1人)が罹患しています。
年齢別に見ますと、高齢になるにしたがって認知症になる確率が明らかに増えていくのがわかります。また、男性に比べて女性の方が患者数はやや多くなっています。
1、認知症とはどんな病気?
では、認知症とはどのような状態を言うのでしょうか?
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。次いで多い血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる認知症です。
初期は、加齢による単なる物忘れに見えることが多いでしょう。しかし、仕事や家事など普段やってきたことでミスが増える、お金の勘定ができなくなる、慣れた道で迷う、話が通じなくなる、憂うつ・不安になる、気力がなくなる、現実には見えないものが見える、妄想があるなどのサインが出てきたときには、専門機関に相談してみましょう。
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症にはいくつかの種類があります。アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。症状はもの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。
次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症です。障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状はゆっくり進行することもあれば、階段状に急速に進む場合もあります。また、血管性認知症にアルツハイマー型認知症が合併している患者さんも多くみられます。
その他に、現実には見えないものが見える幻視や、手足が震えたり歩幅が小刻みになって転びやすくなる症状(パーキンソン症状)があらわれるレビー小体型認知症、スムーズに言葉が出てこない・言い間違いが多い、感情の抑制がきかなくなる、社会のルールを守れなくなるといった症状があらわれる前頭側頭型認知症といったものがあります。
認知症のサイン
もの忘れ(記憶障害)
- 数分前、数時間前の出来事をすぐ忘れる。
- 同じことを何度も言う・聞く。
- しまい忘れや置き忘れが増えて、いつも探し物をしている。
- 約束を忘れる。
- 昔から知っている物や人の名前が出てこない。
- 同じものを何個も買ってくる。
時間・場所がわからなくなる。
- 日付や曜日がわからなくなる。
- 慣れた道で迷うことがある。
- 出来事の前後関係がわからなくなる。
理解力・判断力が低下する。
- 手続きや貯金の出し入れができなくなる。
- 状況や説明が理解できなくなる、テレビ番組の内容が理解できなくなる。
- 運転などのミスが多くなる。
仕事や家事・趣味、身の回りのことができなくなる。
- 仕事や家事・趣味の段取りが悪くなる、時間がかかるようになる。
- 調理の味付けを間違える、掃除や洗濯がきちんとできなくなる。
- 身だしなみを構わなくなる、季節に合った服装を選ぶことができなくなる。
- 食べこぼしが増える。
- 洗面や入浴の仕方がわからなくなる。
- 失禁が増える。
行動・心理症状(BPSD)
- 不安、一人になると怖がったり寂しがったりする。
- 憂うつでふさぎこむ、何をするのも億劫がる、趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなる。
- 怒りっぽくなる、イライラ、些細なことで腹を立てる。
- 誰もいないのに、誰かがいると主張する。(幻視)
- 自分のものを誰かに盗まれたと疑う。(もの盗られ妄想)
- 目的を持って外出しても途中で忘れてしまい帰れなくなってしまう。
2、物忘れとは何が違う?
もの忘れには、正常なものと認知症をうたがえるものがあります。正常なもの忘れと認知もの忘れには、加齢によるものと認知症によるものがあります。加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いの区別ができればよいのですが、現実にはなかなか難しいものです。
認知症に気づくためには、次のようなサインが役立ちます。
もの忘れの為に日常生活に支障をきたしているかどうか。
日常生活で重要ではないことや知識(タレントの名前や昔読んだ本の題名など)を思い出せないのは加齢によるもの忘れの範囲内ですが、自分の経験した出来事を忘れる、大事な約束を忘れるなどの場合は、認知症のサインかもしれません。
本人が忘れっぽくなったことを自覚できなくなっているか。
もの忘れがあっても、自覚があり続ける場合は加齢によるもの忘れの範囲内かもしれません。最初はもの忘れを自覚していても、次第にもの忘れをしていることに気づけなくなり、話の中でつじつまを合わせようとすることがあれば認知症のサインかもしれません。
もの忘れの範囲は全体か。
経験の一部を忘れるのは加齢によるもの忘れの範囲内ですが、経験全体を忘れるのは認知症のサインかもしれません。例えば、朝ごはんのメニューを詳しく思い出せないなら加齢によるもの忘れでしょうが、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるようなら認知症のサインかもしれません。
3、認知症になったら相続対策はできない?
相続対策をする際に重要になってくることがあります。それは本人の判断能力です。自分の財産を誰にどのように残したいのか?財産を持っている本人が決める必要があります。重度の認知症になってしまうと、判断能力がなくなってしまいますが、初期の認知症では判断能力が残ることが多いです。また、現在は進行を遅らせたりする薬も出てきています。認知症は早く見つけて、早く受診すると進行を遅らせることができるため、早期発見が重要です。この早期発見の時期なら相続対策も可能だと思われます。この時期に任意後見人を立てておくとさらによいでしょう。エンディングノートの作成は、認知症の進行を遅らせることにも効果が期待できます。
4、相続準備ができない人
病気が進行して判断能力がなくなってしまったり、判断能力があったりなかったりの状態になると、相続対策はできなくなります。それでも後々困るからと、無理に遺言を書いてもらったりすると、相続発生後にもめる原因にもなりますし、そもそもその遺言は無効になる可能性があります。
5、早めの対策が重要!
今後ますます認知症の罹患数が増えていく中、自分も認知症になる可能性があることを念頭に、元気なうちに相続対策を行いましょう。認知症と診断されてからでも判断能力があれば対策は可能ですが、後々もめる可能性はゼロではありません。相続の内容に不服のあるご家族がいれば、裁判になる可能性もあります。できれば健康なうちに、ご家族でよく話し合って相続対策を行うと、相続発生後ももめることなく、笑顔相続が実現できるはずです。ぜひ相続対策は早めに行いましょう!
筆者:菊池あかり
保有資格:看護師、上級相続診断士、終活カウンセラー上級、グリーフケアアドバイザー、福祉住環境コーディネーターなど
経歴:急性期病院、地域医療などで看護師として勤務していた。5年前より夫と共に空き家再生を手がける。空き家再生をしていく中で相続対策の重要性を実感し学ぶ。現在は空き家再生と共に相続相談も行っている。 笑顔相続サロン®千葉 代表
一橋香織の笑顔相続道正会員