相続のコラム

高齢者を取り巻く日常生活におけるさまざまな賠償事故に備えましょう

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日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人(2020年現在)と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されております。(厚生労働省 みんなのメンタルヘルス より抜粋)

2007年12月7日、東海道本線共和駅で認知症患者(要介護4、認知症高齢者自立度Ⅳ)が線路に立ち入り、走行してきた列車にはねられた鉄道事故。一審では同居の軽度認知症の妻と別居の長男に鉄道会社から遺族に対して振替輸送費等の損害賠償を命ぜられ、二審では別居の長男が免れ、2016年3月1日の最高裁では鉄道会社の請求を棄却した判決が下されました。
最高裁で棄却されたものの認知症家族の監督責任が別居の子にまで及んだこの事件をきっかけに認知症家族の賠償事故を補償する保険商品(個人賠償責任保険)が注目を集め、公費で保険料を賄う自治体も出現してきています。
この鉄道事故では家族は賠償責任を免れたものの、親族の誰かが「監督義務者」と判断されれば賠償責任が及ぶ可能性も出てきます。

そこで、このように高齢者が関係する事故が起こった場合、損害保険などの保険でカバーできるものなのかどうか、個人賠償責任保険(または個人賠償責任特約、以下同じ)などの補償について、さまざまな事例をまじえて検証してみましょう。
※すべての事例では、各保険会社の約款の違いにより保険の対象可否が変わる場合があります。実際に事故が発生した場合、事故状況や被害内容、家族関係に応じて有無責は個別に判断されます。

まず、個人賠償責任保険とは、他人のモノを壊したり、他人にケガをさせてしまったときなどにおいて、法律上の損害賠償責任を負担する場合に保険金が支払われるもので、ひとつの保険で家族が起こした事故をサポートする保険です。
日本損害保険協会より)

高齢者が関係する次の5つのケースを検証してみましょう。

■85歳のA男さん。最近は足腰が弱り、外出はシニアカー(電動車いす)が頼りとなりました。
ある日、通院のため、公道をシニアカーで移動中に、作動ミスにより歩行者と衝突し、相手にケガをさせてしまいました。この場合、保険金の支払い対象となるでしょうか?

A)多くの場合、支払い対象となります。
個人賠償責任保険では、「車両の所有、使用、または管理に該当する賠償責任」は免責としていますが、主たる原動力が人力である電動自転車や道路交通法上歩行者とみなされる身体障害者用電動車椅子(シニアカー、セニアカー等)は車両に含まれないため、シニアカー運転中に起こした事故は個人賠償責任保険の支払い対象となります。

■B美さんの実母(82歳)は、B美さんが住む隣の県で夫婦二人暮らし。1年前から重度の認知症と診断されています。ある日、家人が目を離した隙に自宅から出て、徘徊により他人を傷つけてしまいました。裁判の結果、B美さんは監督義務を負うと判断されました。この場合、個人賠償責任保険から保険金は支払われるでしょうか?

A)支払い対象となります。
個人賠償責任保険の被保険者の範囲は同居の親族と別居の未婚の子ですが、このケースの場合、同居ではなく別居の母が起こした事件であっても、B美さんに賠償責任が発生し、被保険者(記名被保険者=B美さん)の日常生活に起因する事故にあたるため、支払い対象となります。B美さんの母に認知症の症状がない(あるいは軽度)の場合やグループホームなどの施設に入所している場合はこの限りではありません。グループホーム入所中に問題をおこした親が認知症の場合は施設の責任となる可能性があります。

■ペットのいる生活は癒しを与えてくれるものです。高齢者のみ世帯でも犬や猫などのペットとともに暮らす姿をよく見かけますし、ワンちゃんが高齢者に寄り添ってゆっくりお散歩する姿は微笑ましいものです。
しかし、ペットをめぐるトラブルも近年増えてきており、高齢者を巻き込むケースも見受けられます。
75歳のC郎さんが飼い犬を散歩させているときに、飼い犬が通行人の脛にじゃれついて噛んでしまい、10針も縫う大ケガを負わせてしまいました。保険金の支払い対象となるでしょうか。

A)この場合、飼い主の動物の管理に不注意があると判断され、個人賠償責任保険の支払い対象となります。ただし、通行人にも不用意に手をだすなどの不注意があれば過失相殺も考えられますが、通行人に被害意識が大きいとトラブルを大きくしてしまいがちです。当事者に代わって解決のための交渉をしてくれる示談交渉サービス付きの個人賠償責任保険かどうかのチェックも必要です。

■80歳のE子さんが買い物に出かけるため、横断歩道を徒歩で横断中に、信号無視してきた男子高校生の自転車と接触して転倒し、大ケガを負いました。男子高校生の保護者に治療費等の請求をするために弁護士に交渉を委任する場合、保険の対象になりますか?

A)自動車保険に付帯する弁護士費用特約(日常生活・自動車事故型)で支払い対象となる場合があります。
各保険会社商品の約款の違いや保険の加入時期により取り扱いが変わるので注意が必要です。
自動車事故に限定され、自動車事故以外の日常生活の被害事故におけるケガや持ち物の損害についての損害賠償請求をおこなうために必要な弁護士費用等は支払対象とならない弁護士費用特約も多く存在します。また、被保険者(保険の対象となる者)の範囲は同居の親族と別居の未婚の子です。

■83歳のF田さんは、ご夫妻で長年大切に守ってきた一戸建ての自宅を所有されています。ある日、台風による強風で屋根瓦が飛散し、隣家の自家用車に傷をつけてしまいました。賠償しないといけないのでしょうか?その場合、保険金の支払い対象となりますか。

A)支払い対象となりません。
台風による被害の発生は不可抗力のため、通常、法律上の賠償責任は発生せず、個人賠償責任保険の支払い対象とはなりません。
ただし、屋根瓦が以前から割れたままだったり、はずれたままの状態で放置されていたなどの管理上の過失が認められる場合は法律上の賠償責任が発生し、保険金の支払い対象となる場合があります。

まとめ

ご自身のこと、配偶者のこと、親のこと・・・など、この記事をご覧いただいているかたの立場はさまざまです。
高齢社会が進むにつれ、高齢者を取り巻くリスクは多様化してきています。そんなリスクに対応できる保険の選択も高齢者にとっては困難であり、保険見積書、保険申込書(契約書)、保険証券、約款などの多くの書類を見て理解することも億劫になってくるものです。
お近くの親族の方や信頼できる保険のプロ、相続診断士・終活カウンセラーなどに相談・チェックやアドバイスを依頼するのも、いまできる終活の一環だと思います。


株式会社 みらいふ 常務取締役
京都相続診断士会 事務局
岩井 真紀子(いわい まきこ)

一橋香織の笑顔相続道正会員
相続診断士
終活カウンセラー
ファイナンシャルプランナー
損害保険トータルプランナー
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
昭和61年から保険業に携わり、損害保険・生命保険の取り扱いや事故解決のアドバイスをしている。
また、数々のライフプランセミナーやエンディングノートの書き方セミナー講師をつとめる実績をもち、最近は、おひとりさまの終活・相続のコンサルティングに力を注いでいる。

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