相続のコラム

遺言が無効にならないように!知っておくべき自筆証書遺言作成の注意点

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はじめに

弁護士として相続事件を扱っていると、なぜ簡単な一言でもいいから遺言書を遺してくれなかったのか、あるいは、せっかく遺言書を遺しているにもかかわらず、なぜこのような不明瞭な記載をしたのかと、残念に思うことが多々あります。

最近では、被相続人が自筆証書遺言を数通、公正証書遺言を1通遺した案件の相談を受けました。日付が一番新しい自筆証書遺言だけ重要な部分の記載が不明瞭になっており、そういった自筆証書遺言がどのように取り扱われるのかという相談でした。

せっかく遺言書を作成したのにかかわらず、これでは何のための遺言書かわかりません。
上記のような相談は自筆証書遺言に関して多い相談であり、せっかく遺言を遺すのであれば方式不備や内容不備が問われないよう最低限のルールを知っておく必要があります。

そこで、本コラムでは、自筆証書遺言を作成する際の注意点を取り上げたいと思います。

遺言の種類

そもそも、一般的によく利用されている遺言は、公正証書遺言もしくは自筆証書遺言です。公正証書遺言とは、簡単に説明すると遺言者が公証人へ遺言内容を伝えこれを聞いた公証人が作成する遺言です。

他方、自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自書(自分で書くこと)しこれに押印した遺言です。

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与し方式や内容をチェックしてくれますので、遺言が無効となるおそれはあまりありません。

他方、自筆証書遺言は、遺言者自身が何らのチェックも受けずに作成することができるため、方式不備や内容不備により問題が生じることが多いですが費用がかからない、公証人役場に赴く必要がない、いつでも自宅で簡単に作成できるなど手軽に利用できるメリットがあります。

遺言書を作成する場合、基本的には方式や内容をチェックしてもらえる公正証書遺言を選択する方が無難ですが、手軽に利用できる自筆証書遺言もまだまだ利用されているところです。

では、自筆証書遺言はどのような手順で作成すればいいのでしょうか。

事前準備

自筆証書遺言をいきなり書くことは難しくある程度、事前準備が必要です。

まず、預貯金、不動産、株式等、全ての財産を洗い出しその資産価値を把握しましょう。預貯金の価値の把握は容易ですが、土地・建物の評価額はすぐにはわからないので、どのくらいの価値があるのか調査しておく必要がありす。また、骨董品・絵画などの美術品の場合は、評価が難しく必要があれば鑑定人に依頼して評価額を把握しておくとよいでしょう。

次に、どの財産を誰に承継させるのか、あるいはいくらの割合で財産を承継させるのか、又は、相続人以外の人にも財産を取得させるのかなどを決める必要があります。

なお、遺留分といって特定の相続人には一定額の財産を取得する権利があり、この権利を侵害した場合、遺留分侵害額請求をされることがあります。せっかく遺言書を作成するのですから、なるべく争いにならないよう遺留分にも配慮する必要があります。

加えて、遺言を執行してもらうために遺言執行者を誰にするのかを決めておきましょう。

そして、事前準備がある程度整ったら消えにくいボールペンや万年筆などの筆記具と用紙を準備し、実際に自筆証書遺言を作成してみましょう。

なお、筆記具や用紙について特に決まりはありませんが、平成30年の相続法改正に伴って設けられた自筆証書遺言書保管制度においては、法務局に遺言書を預かってもらうためには用紙はA4サイズで一定の余白が確保されている必要があります。

自筆証書遺言作成の注意点

自筆証書遺言においては、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、これに押印しなければなりません。以下、次の点に留意しましょう。

(1) 日付の自書

日付ですが、遺言が完成した日がわかるよう、例えば、「1月1日」というように記載しましょう。「2022年1月吉日」というような記載は、日付の記載を欠くとして無効とされた判例があるので注意が必要です。

(2) 氏名の自書

判例では遺言者が何人であるかにつき疑いのない程度の表示があれば足りるとされていますが、きちんと「氏」と「名」を記載するようにしましょう。

(3)押印

押印を欠いた遺言書で遺言を有効と認めた判例もありますが、押印を欠くと基本的には無効となりますので、きちんと押印をしましょう。使用すべき印章に制限はなく三文判でも構いません。

(4)財産目録について

平成30年の相続法改正により遺言書に財産目録を添付する場合、その目録について自書は要求されなくなりパソコン書きでもよいことになりました。その代わり、目録の各頁に署名・押印が必要ですので注意しましょう。

(5)全文の自書

全文とは遺言書本文のことであり、この部分は自書が必要です。主に、財産をどのように承継させるのかを記載することになりますが、この内容が不明瞭であると争いへと発展する可能性があります。

財産の承継には、主に、遺贈(特定遺贈、包括遺贈)による方法と、特定承継遺言文言(相続させる文言)による方法があります。

実務では、相続人以外の方に対しては遺贈という方式、相続人に対しては特定承継遺言文言(相続させる遺言)で記載するのが一般的です。

(記載例)
ア 遺言者は、●土地をAに遺贈する(特定遺贈)
イ 遺言者は、遺言者が有する全財産のうち3分の1を、Aに包括遺贈する(包括遺贈)
ウ 遺言者は、●土地を相続人甲に相続させる(特定承継遺言)

なお、遺贈と特定承継遺言文言では法的効果が異なり後の手続きに違いが生じます。

例えば上記アの場合、登記申請は、相続人(登記義務者)と受遺者(この場合A)との共同申請となりますが、上記ウの場合は受益相続人(この場合相続人甲)の単独申請となります(ただし、施行はまだで令和3年の不動産登記法の改正により一定の要件を満たせば遺贈の場合であっても単独申請が可能となります)。

遺贈と特定承継遺言文言の詳細な説明は割愛しますが、きちんと財産を承継させるには決まった文言とその文言の効果を意識して記載しなければなりません。

ところで、仮に、遺言の内容が不明瞭であった場合、当該遺言はどう扱われるのでしょうか。裁判では、可能な限り遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈し、なるべく有効になるように判断されます。直ちに無効となるということはあまりないと思われますが、解釈に疑義が生じるような記載は避けましょう。

(6)付言事項

付言事項には法的拘束力はありませんが、全文の一部として自書の必要があります。付言事項には、遺言者の遺言を作成するに至った経緯、家族や関係者に対する謝辞、後の紛争を回避するために遺留分侵害額請求権の行使の自粛を求める旨などを記載することがあります。

遺族に遺言の趣旨を理解させ結果的に、無用な紛争を回避することにつながるため、付言事項は重要な役割を担っています。

(7)遺言執行者の記載

うっかり忘れやすいのが遺言執行者の記載です。忘れないようにしましょう。

遺言書の訂正方法

自筆で記載する以上、誤字や脱字など間違いが生じることはやむを得ません。

民法では、訂正方法についても厳格なルールが定められており訂正箇所については、二重線で訂正、押印しその上で、欄外に訂正箇所を指摘し「〇字削除」、「〇字加入」等の記入をし遺言者本人の署名をします。

おわりに

自筆証書遺言について、基本的な書き方の注意点を取り上げましたが、いかがだったでしょうか。既に自筆証書遺言を作成されている方であれば、その内容や方式に問題がないか、これから自筆証書遺言を作成しようと考えている方であれば、どのように遺言書を作成するのかの参考になればと思います。また、必要に応じて専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。冒頭での相談者のような方が少しでも少なくなることを願っています。


伸晄(しんこう)法律事務所 弁護士 岩本 貴晴(いわもと たかはる)
昭和49年生まれ。京都所在。現在、相続問題に重点的に取り組む。

相続問題は一度紛争になってしまうと「身内だからこそ許せない」と、感情的な対立が激化し紛争が長期化する傾向にあります。また、法律的にも難しい話も多く、気が付いたら意図していなかった遺産分割になっていたということにならないよう、注意する必要があります。
当事務所では、依頼者の方のお話をよく聞き、法的問題となりそうな点に留意しつつ、事前の紛争防止から事後の紛争処理まで幅広く対応させて頂いております。
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