相続のコラム

相続対策は家族とのコミュニケーションが大切!

投稿日:2021年9月1日 更新日:

筆者は35歳で既婚、家族構成は妻・息子が2人、両親と3世帯の同居です。
職歴は今まで証券会社を2年、小学校教諭を6年、保険会社を4年経験しています。
そんな金融知識、相続の知識がある30代という立場からコラムで発信したいと思います。
読者の方が年配の方なら息子が、若い方なら同世代が話していると思って読んでいただけると嬉しいです。

親族が加入されている保険をご存じでしょうか

筆者は生命保険の営業をしていますので、両親の生命保険は把握しています。
年間100名ほどの20代~30代のお客様と商談をしていますが、ご両親の生命保険の加入状況を知っている人とは、未だに1人も出会いません。
どこの保険会社で加入しているかも知らない人も多いです。
この状況は何が問題になるでしょうか。
30%という数字について注目頂きたいと思います。

阪神淡路大震災や東日本大震災で、生命保険金を受け取った人が約30%と言われています。
しっかりと保険料を払っていたのに、約70%の人が保険金を受け取れていないのはなぜでしょうか。

それは、遺族の方が亡くなった方の加入していた生命保険会社を把握していなかったからです。
生命保険金は保険会社に死亡届けを提出して、保険金を請求した時に、初めて支払われるものです。しかし3年間請求されなければ、時効を迎えて支払われません。
阪神淡路大震災の時は火事で、東日本大震災の時は津波で家が無くなってしまったので、保険証券も無くなってしまいました。もちろん保険証券は再発行できますが、どこの保険会社で加入していたか把握していればできるという話です。

約70%の遺族の方は個人が加入していた保険会社を把握しておらず、火事や津波で保険証券が無くなってしまったため、故人がどこの保険会社でどんな担当者から加入していたかを、知るすべが無くなってしまいました。
このようなご家庭が今なお多いとしたら、これからも保険金の給付率は良くならないのではないかと思います。
ご自身に万が一のことが起こったときに、残された家族が困らないように加入する生命保険のはずが、保険事故が発生したときに保険金が支払われなければ故人の思いは報われません。

親族に自分の資産について話をしやすい空気がありますか

では、なぜそのような問題が起こるのでしょうか。
それは日本独特のお金についての話はタブーという雰囲気があるからだと思います。

筆者自身、保険業に携わることになり初めて両親の生命保険を見せてもらいましたが、父が見せにくそうにしていたのを覚えています。
もしかしたら、勝手な思い込みかもしれませんが。

相続について学びを深めていくと、両親の資産に対する想いを知っておくことはとても大切だと感じるようになりました。
しかし、貯蓄額や年金額、投資商品の内訳、不動産の状況を親に質問するのはとても聞きにくく、現在でも一部分しか把握できていません。

先日母方の祖母の家の名義が、亡くなった祖父の名義のままだという事を知り、自分のすぐそばに相続でもめる種があることに驚きました。(祖父母とも亡くなっており、母のきょうだいは叔父が一人。叔父は結婚して子が2人)相続を学んでいたからこそ、空き家のリスクを知り、名義について聞くことができ、母も悩んでいたことを知ることができました。
そうでなければこの問題に気付くことは無く、母や叔父が亡くなると、どんどん相続人が増えてしまい、とてもややこしい相続問題に発展していたはずです。

今このコラムを読んでくださっている方々は、普段、お子さんに自分の資産の状況を伝える機会を持たれているでしょうか。もしくは、相続以外でも、お子さんからの意見があった時、話をきちんと聞いていますか?
是非、お子さんとコミュニケーションをとられることをお勧めします。

若くても親の事について悩んでいる人は多い

生命保険の商談では、必ず家系図を書いて相続の問題がないかヒアリングをするのですが、
「心配なんやけど、その話をすると父親が嫌がる」
「両親はしっかりしているから何か対策してるんちゃうかな」
「どうやって話をすれば良いですか」
といった声が多いです。

資産を築かれたのはご両親なので、この話の主役はご両親です。子は、いずれ自分たちに降りかかってくるので、ご両親の資産について心配をしているものの、気を遣ってなかなか口出しできないものです。

筆者自身もそうです。
父との関係はわるくありませんが、性格や価値観が違うので、些細なことで意見が食い違います。もめたくないので、腹を割って話をすることができていません。
子の立場から勝手なお願いをさせていただけるなら、主役である両親のほうから家族が集まる機会に話をしてくれないかなと願っています(笑)
介護や相続についてご両親が思っている以上に子は心配しているものなので、お盆やお正月に集まる機会があれば、話を切り出してみてください。

そうはいってもご両親から唐突に話を切り出すのは難しいと思います。

そこで筆者から一つ提案があります。
それは、家族の思い出のアルバムの整理です。

家族でアルバムの整理をしながら思い出を振り返るのです。

「両親がどんな幼少期を過ごしてきて、どうやって出会って、どんな経緯で今の土地に住んで、どんな思いで子育てをしてきたのか」を家族で共有し
その延長として、「だから資産をこんな風に残したい。」と話をすると、お互いに気持ちよく家族のルーツを知ることができ、幸せな気分でその後も付き合っていけるのではないでしょうか?

健康寿命は約70歳です。人間はいつまでも健康ではいられません、健康に話ができるうちに家族で話をしてみてください。

自分の資産を把握していますか

家族に資産を伝えるにしても自分の資産が把握できていないと伝えられません。
預金、保険、不動産、証券など年齢を経るにつれて資産は多様化していくと思いますが、ご自身の資産は把握されているでしょうか。
筆者の祖父が亡くなった時は、どこにあるかわからない山の土地がいくつかあり、とても困ったそうです。少しですが相続税も発生しました。このコラムを読まれたら、ぜひご自身の資産目録を作ってみてください。

筆者は先日ビットコインを購入しました。
ただ、購入したことを家族は全く知りません。もちろんどこの取引所で買っているかも分かっていません。最近はネットバンクやネット証券など携帯やパソコンが開けないと、存在が確認できない資産も増えています。
こういう、資産については必ず資産目録に記入するようにしてください。

自分の資産を家族が分かるようにしておく

せっかく築いた資産も、自分が死んでしまって誰にも気づかれなければ無駄になります。
家族にオープンに話せるなら良いですが、もし言いにくいようなら、エンディングノートや遺言がおすすめです。
特に公正証書遺言は費用が掛かりますが、相続手続きが簡易になりまた、自身の財産を遺言ののっとって残したい方に残すことができますし付言事項といって想いを遺せる部分もありますので、全員必須で書いておいた方が良いと、感じています。

最後に

ここまで子の目線で書かせていただきましたが、筆者も2児の父なので、親として皆さんに伝えたことを対策しておかなければいけません。
まだ35歳だからとか、仕事が忙しいからとか、は関係ありません。
このコラムを書きながらまだ半分くらいしか対策できていないなと反省しております。
筆者自身、大切なことから目を背けずに、家族と向かい合っていきます。

このコラムが皆さんの気付きになれば幸いです。


小谷 祐介(コタニ ユウスケ)
奈良教育大学保健体育科卒業
証券会社に2年勤務
小学校教諭に6年勤務
外資系金融機関で4年間勤務
今年度から保険代理店EXE Insuranceで勤務

金融機関と教育機関に勤めた経験から、
親のマネーリテラシーが子どもに影響を与えることに気付き、
親向けにセミナーを展開している。

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