相続で揉めるとは実際どのくらいの金額で揉めているのでしょうか。
私の家に限ってそんなことはないとよく言われますが、しかし意外と相続財産が少ないほど揉める割合が多いのです。
こちらは~遺産分割事件のうち認容・調停成立件数~遺産の価格別~となります。
出典:最高裁判所の司法統計年報 遺産分割金額別訴訟割合(平成29年度)
親が亡くなり、子どもたちが相続することになった場合、特に主人(あるじ)となる父が亡くなり母と子ども達の関係性でも既にトラブルが発生する可能性があります。
相続人一人の発言で思うような遺産分割もできず、なかなか相続手続きが進まないことも。
そのような場合、ある程度の知識があれば、そのまま子ども1人の発言を鵜呑みしなくていい場合もあります。
今回は父が亡くなったあと母ときょうだい間で起こりがちな相続争いをはじめ、相続の分け方などの基本知識や相続人で意見がまとまらないときどうすればいいのか書いておきます。
目次
1. 相続人で起こりがちな相続争いの例
(1)相続できるモノ・できないモノ
いったい何が相続財産の対象になり、何が対象にならないかご存知ですか。
相続の対象になるのは、被相続人が所有していた財産や権利、負債関係となります。
現金預貯金、株式、投資信託、不動産、車、貴金属、骨董品、掛け軸、絵画等、借金も含め遺産相続の対象となります。また賃貸人・賃借人の地位や損害賠償請求権などの権利関係も相続されることになります。お墓や仏壇などの祭祀(さいし)財産、雇用契約の地位、養育費請求権や支払い義務、生活保護や年金受給権、国家資格や生命保険を受け取る権利など故人に一身専属的な権利義務は相続財産の対象になりません。
(2)相続人で起こりがちな事
主人(あるじ)となる父が亡くなると、母と子らが父の遺産を分けるのですが、遺言書がない場合はこんな争いになる場合があります。
母親の自宅を売却して現金を分けてと
相続人が母と長男、長女、二男の4人と仮定。
母は二男夫婦と孫2人の5人家族
長男は結婚して別に家を建て子供2人
長女は他県に嫁いでご主人の両親と同居
自宅の土地、建物は亡き父の名義
土地建物評価 6,000万円
現預金500万円
有価証券300万円
死亡保険 妻受取1,000万円
相続財産を簡単に計算 6,800万円
非課税枠は3,000万円+(600万円×4)=5,400万円
例えば法定相続分に分けるとすると
母1/2 子1/6 となります。
単純に数字だけみると
母 3,400万円
長男 1,133万円
長女 1,133万円
二男 1,133万円
相続税はそれぞれの負担分で分けるとして、
現金有価証券だけでは単純に割り切れない部分が出てきます。
だいたい揉める時は、必ず法定相続分貰えるものだと思っているからなのでしょう。
足りない分は住んでいる家を売却して現金化する様に勧める子が1人でもいると、なかなか遺産分割は進まない事になります。今まで住んでいた家を売却するとなると、今後の母の年齢や身体の状態により、どう変化するのかも心配な事になります。
現在は民法での家督相続は法律上廃止されていますから、それぞれのご家族の関係性がとても重要視される部分となります。
不動産分割の仕方
幾つか不動産をお持ちの方は、どれをどう分けたら良いのか分からず、遺産分割が進まないケースもあります。
実家と、収益不動産をお持ちの方は、不動産の利回りが良い悪いで分ける事すらできない状況の方がいます。まずは生前に古いものや空室の多いものなどリフォームも良いですが、その時勢により場所変えをする、いわゆる売却して土地替えして建て替えるなど、相続しやすいようにバランスをみておく事も必要です。
長男が葬式費用分多く相続できるように主張
長男が喪主として被相続人である親の葬式や四十九日などの法事を執り行うにあたり、かかる費用を遺産分割の際に主張してくる。
生前、嫁が被相続人の介護をしていたので考慮してほしい
二男夫婦が生前両親と同居して、嫁が父の介護をしていたので、「寄与分」としての主張をしてくる場合もあります。法律ではこのような言葉になってしまいますが、結局はこれも今までのご家族の関係性で成り立つ事だと思うのです。長男や長女はそれで自分達が交代で世話をしなくて済んだのですからそこをどう捉えるのかはそのご家庭毎に違ってきます。
兄が多額の生前贈与を受けている
長男が家を出て実は父が生前に贈与してそのお金で建てていた場合もあります。
例えば土地の取得に渡していたとか、長男の土地は父名義、建物は長男の住宅ローンで支払い中などといったケースはかなりあります。
被相続人が亡くなったとは、相続人が所有の登記がどうなっているのか確認する事が必要となります。
2. 相続人1人の身勝手な主張を鵜呑みにしないこと
(1)遺言がない場合
長男に「すべての遺産を相続する」と思い込んでいる方が稀にいます。
配偶者がまだ元気に生活している時にも、「長男である私がすべて相続する」と家督相続のように考えている方も稀にいますが、すべて相続する事はできません。
「相続放棄の書類が長男から送られてきたのでどうすればいいですか」
と言った話しもかなりの割合であります。相続人すべてがその内容に合意しなければそれを実行することはできません。遺言書があるわけではないのですから、話し合いをすることになります。
遺産分割協議書は、相続人全員の署名捺印が必要となります。
遺言書に「長男にすべての遺産を相続させる」と書いてあっても、他の相続人には「遺留分」が認められますから0円になる事はないでしょう。
詳しくは専門家の方にご相談下さい。
(2)遺留分って何⁉︎
遺留分とは、亡くなった被相続人のきょうだい以外の法定相続人に最低限保障される遺産取得割合になります。配偶者や子どもなどは被相続人が亡くなったときに財産を相続する権利を持っています。
遺言や贈与によって相続人の遺産取得分がなくなったり減らされたりしても、最低限遺留分までは取り戻しが可能です。兄が「遺言があるからお前には遺産をやらない」と言っていたとしても、弟は遺留分を主張していくことができます。
(3)遺留分が認められる人
- 配偶者、夫や妻が法定相続人になる場合、遺留分が認められます。
- 子、孫などの「直系卑属」子や孫、ひ孫などの被相続人の直接の子孫を「直系卑属」と言い、遺留分が認められます。
- 親、祖父母などの「直系尊属」親や祖父母、曾祖父母などの被相続人の直接の先祖を「直系尊属」と言い、遺留分が認められます。
- 被相続人の孫やひ孫などの直系卑属については、代襲相続の場合にのみ遺留分が認められます。
(4)遺留分が認められない人とは?
- 被相続人のきょうだいや、きょうだいが先に亡くなっている場合に相続人となる甥姪には遺留分が認められません。
また、その兄弟姉妹の子である甥や姪が代襲相続する場合でも、遺留分は認められません。
- 相続放棄した人やその子どもなど
相続放棄した場合は遺留分失います。また、その子どもや孫なども代襲相続がないので認められません。
- 相続欠格者や廃除された相続人
被相続人を殺したり遺言書を隠したりして相続欠格となった人、相続人から廃除された人には遺留分が認められません。
3.遺言書で「自宅を継いだ二男に全ての財産を相続する」
遺言書があり、「二男にすべての財産を残す」と遺言書に記載があり、意義が有れば遺留部分侵害請求を起こすこともできます。
詳しくは専門家にご相談ください。
4.まとめ
相続の場合は、きょうだいだけの場合だけでは無く、ご主人が亡くなり妻と子どもとなった場合でも揉める事があります。生前にご家族と良くコミュニケーションを取り、ご家族とどんな関係性を持っていたのかに尽きるのではないでしょうか。お互いの役割を自覚して、ご両親と一緒に住んで介護状態の世話をしてくれている人の存在も認めて、尊重する心を持ち続けたいと思います。
まずは生前にどのように遺産分割するのか、それができるのかを検証してみる事も必要だと思います。
昆 充芳(こん みよし)
笑顔相続サロン®新潟TUNAGUみんなの相続診断士事務所代表
MFC合同会社代表社員
CONEXEED株式会社代表取締役
相続診断士・終活カウンセラー・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち相続にまつわるお困り事を頼りになる各相続に関する専門士・士業達とチームを組み生前の贈与・遺言書から相続発生までワンストップでトータルにサポートしております。相続に関する相談を誰に頼んだら良いのか判らない時には是非ご相談ください。
生前整理から亡くなった後の事務手続きまでのご相談を受け付けております。
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