両親が住んでいた家屋を相続したものの、「無料でもいいから、誰かに譲りたい!」と考えている方は少なくありません。
都会の便利な場所であれば話は別ですが、そもそも資産価値の低いような家屋の場合であれば、売却や賃貸利用することもできません。
仮に相続放棄しても、管理義務が残ってしまいますから、それも有効な手段ではないでしょう。
固定資産税だけ無駄に支払うことになるくらいなら、譲渡したいと考えることは当然のことのように感じます。
ここでは、そのようにお困りの方に対して、無料譲渡する方法について、また無料譲渡した際の税金面や補助金についてご紹介していきましょう。
目次
相続した空き家を譲渡したい!5つの譲渡方法
- 自治体への寄付
- 空き家バンクの活用
- 地縁団体への寄付
- 空き家の隣地の所有者
- 公益法人などへの寄付
空き家を売却することはとても難しく、また譲渡であっても困難を極めることも珍しいことではありません。
そのような状況の中でも、可能性が考えられる譲渡方法を5つご紹介します。
自治体への寄付
相続した空き家の寄付を受け付けている自治体があります。
ただし、自治体によって対応は異なっており、また仮に寄付を受け付けているとしても家屋の状況によって断られてしまうことがあるために注意が必要です。
相続した空き家で困るのは「固定資産税」の存在。
その固定資産税を徴収するのは自治体であり、収入源としている自治体が利用価値の低い家屋を引き受けてしまうと、自治体としても無駄な管理コストが発生してしまいます。
特に、老朽化が進んでいるものや利用価値の低い場所にある家屋であれば、断られるケースも多くなっています。
ただ、自治体がその地域での事業を検討しているような場合では、引き取りを検討してくれる可能性もありますから、相談してみることをおすすめします。
まずは、自治体に連絡して、土地の寄付を受け付けているか確認してみると良いでしょう。
空き家バンクの活用
自治体では「空き家バンク」によって空き家物件の情報をホームページなどで公開して、田舎暮らしや地域への定住の推進を進めています。
空き家バンクはすでに20年以上も前から推進されてきた制度ではありますが、近年になって知られる存在となりました。
運営しているのは、ほとんどが自治体であり、問い合わせをすればどのような物件なのか知ることができるのはもちろんのこと、公共機関や天候など、暮らしに関することも教えてもらうことができます。
何よりも運営が民間企業ではなく自治体であるというのが、大きな信頼に結び付いているのです。
都会での生活を続けている中で、田舎暮らしや地方移住に憧れる方は一定の割合で存在します。
テレビや雑誌などで、田舎暮らしの特集をご覧になった方は多いのではないでしょうか。
特に現在はインターネットやスマートフォンが普及したために、田舎暮らしといってもそれほど不便に感じることは少なくなっています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響によってリモートワークが推進されたことも、田舎暮らしや地方移住の選択肢が増えた理由として挙げられます。
うまく活用すると、譲渡や売却、賃貸が可能となるでしょう。
地縁団体への寄付
地縁団体とは、地域にある町内会や自治会などであり、市町村などで認められ法人格を付与されている団体は「認可地縁団体」と呼ばれています。
小さな団体ではありますが、何かしら利用用途がある場合には、寄付を受け付けてくれる可能性があります。
特に認可地縁団体の場合であれば、税金面での優遇措置があるため、空き家の受け入れがしやすい状況にあるのです。
そのため、空き家の地域にある地縁団体が、認可地縁団体なのかどうか確認しておくといいでしょう。
また場合によっては、土地家屋を探している隣人を紹介してもらえる可能性もあります。
空き家の隣地の所有者
個人で譲渡を引き受けてくれる可能性が高いのが、空き家の隣地の所有者でしょう。
自身が所有している土地を広げることができますので、譲渡ということであれば受け入れやすいのではないでしょうか。
仮に、修繕などが必要な場合でも、修繕費用や解体費用を負担するなどの交渉によって、前向きに検討してもらえるかもしれません。
ただし、個人に対する譲渡の場合には、登記費用をはじめ、贈与税の負担も必要になることをしっかりと説明しておく必要があります。
公益法人などへの寄付
地域で活動している社会福祉法人やNPO法人などの公益法人では、地域活動のために活用できる家屋の寄付を受け付けていることがあります。
公益法人とは、公益財団法人や公益社団法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、NPO法人(特定非営利活動法人)などのことを指しています。
もし、空き家の家屋に住んでいた両親が、老人ホームに入居されているような、公益法人と関わりがあったならば、相談してみると良いのではないでしょうか。
その空き家を活用して、地域福祉などのために利用を検討されるかもしれません。
空き家の譲渡での費用や税金面、補助金について徹底解説
空き家を譲渡する場合には、費用や税金の負担が必要となります。
ただ、非課税制度や補助金・助成金制度を活用することもできますので、どのような制度が存在するのか理解しておくことが大切です。
所有権移転登記費用
空き家の寄付や譲渡が決まった場合、その相手側に所有権移転登記する必要があり、その費用がかかります。
一般的にこの所有権移転登記は司法書士が行っており、登録免許税や司法書士に対する報酬を合わせて10万円~30万円程度の費用が必要となります。
不動産売買においては、通常、買主がこの費用を負担することにはなりますが、寄付や無料での譲渡の場合には、どちらが負担するのか決めておかねばなりません。
空き家を個人に譲渡したときの税金
個人が所有している空き家を、別の個人に譲渡や寄付する場合には、税金が発生することがあります。
個人が個人に対して空き家を譲渡する際には、その行為が「贈与」として扱われることになるからです。
空き家を譲渡する贈与者には税金がかかることはありませんが、譲渡を受ける受贈者には贈与税が課されることになるのです。
空き家を法人に譲渡したときの税金
個人が、法人に対して空き家を譲渡する場合、その法人が営利法人(一般的な企業)であれば、譲渡した個人には所得税が、譲渡を受けた法人には法人税がかかることがあります。
無料で譲渡する場合に所得税が課せられることに疑問を感じるかもしれません。
これは「みなし譲渡所得」と呼ばれるもので、資産を時価で譲渡したとみなされることによって、所得税が発生することになるのです。
土地・家屋の時価から、土地・家屋の取得価額及び譲渡の際に必要となった必要を差し引いて、税額が計算されます。
また、法人に対しては、受贈益として法人税が課せられることになります。
公益法人などに譲渡した際の非課税特例
上記の通り、法人に対して空き家を譲渡した際には課税されることになりますが、公益法人などに対する寄付で、空き家が教育や福祉、文化の向上に寄与するものであれば譲渡所得税を非課税とする制度が設けられています。(先述の、自治体・認可地縁団体への寄付も同様の取扱いがあります。)
公益法人は公益財団法人や公益社団法人だけではなく、社会福祉法人や学校法人、宗教法人、NPO法人(特定非営利活動法人)などが対象となっています。
非課税になる要件として、教育や福祉などへの貢献に寄与していることと、その寄付から2年までにそれら公益のために活用することが必要となっています。
空き家に対する補助金をうまく活用する
地方自治体においては空き家が社会問題となっているために、空き家対策として利用できる補助金や助成金制度を設けています。
各自治体によって内容や要件は異なりますが、譲渡の際にうまく活用すれば、修繕や解体のための費用負担を軽減させることができます。
例えば、横須賀市では「空き家に対する解体助成制度」として解体工事費用の1/2、上限35万円まで補助しています。
また海老名市では「空き家活用促進リフォーム助成金」として、空き家のリフォームに対して、工事費用の1/2、上限50万円の助成を行っています。
自治体の情報を調べてみるといいでしょう。
まとめ
空き家を譲渡する方法をはじめ、譲渡する際の費用や税金、補助金制度などについて詳しくお伝えしました。
空き家を相続したものの、資産価値が低く、固定資産税の支払いや管理に悩まされているという方は少なくありません。
ただ、空き家をうまく活用したいという個人や法人を探し出すことによって、うまく譲渡することができます。
その際には費用や税金の負担が発生することがありますが、非課税制度や助成金、補助金をうまく活用できないか、検討することも大切です。
大希企画株式会社(ダイキキカク) 取締役
一般社団法人士希の会(シキノカイ) 理事
笑顔相続道正会員
宮川 大輝(ミヤガワ ヒロキ)
相続診断士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士などの資格を持ち、
全国の空き家空き地の利活用アドバイスを行っております。
2年連続で国土交通省の「地域の空き家・空き地等の利活用等に関するモデル事業」実施者に採択頂いております。今年度は、日本全国の空き家空き地500件以上の解決事例があります。
大垣浩子税理士事務所 代表
笑顔相続道正会員
税理士・相続診断士 大垣 浩子
大手税理士法人、中堅税理士法人での勤務を経て、税理士事務所を開業いたしました。
現在は、個人のお客様、中小企業のお客様を中心に業務を行っております。
税理士と相続診断士の資格を生かし、資産税に関する業務にも力を入れております。