緩和型医療保険のコラム

脂質異常症(高脂血症)でも医療保険に入ることはできる?

投稿日:2020年4月14日 更新日:

食の欧米化や運動不足などにより、脂質異常症の診断を受ける人が増えています。一般に、健康状態に問題があると医療保険に加入しづらくなりますが、コレステロール値や中性脂肪値が異常と診断されてしまった場合、医療保険に入ることはできるのでしょうか?

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脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールの値や中性脂肪の値が基準値より高い、あるいはHDL(善玉)コレステロールの値が基準値より低い状態です。以前は高脂血症と呼んでいましたが、HDLコレステロールが低い場合も問題が起こるため、2007年に「脂質異常症」と名称が改められました。

多くの場合、脂質異常症だけでは特に自覚症状はありません。健康診断の血液検査で指摘されて初めて気が付く人も多い病気です。しかし症状がないからといってそのまま放置してしまうと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や狭心症の要因ともなります。
脂質異常症と診断されたら決して放置することなく、食事や運動などのライフスタイルに気を付けるようにしましょう。また、それでも改善しない場合は薬による治療も必要となります。正しく治療をして命に係わる症状にまで進行させないことが大切です。

脂質異常症の診断基準(空腹時)
分類名 項目 基準値
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dL以上
境界域高LDLコレステロール血症 120~139mg/dL
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール 40 mg/dL未満
高トリグリセライド血症 中性脂肪
(トリグリセライド)
150 mg/dL以上

脂質異常症でも医療保険に入れる?

脂質異常症でもコレステロール値や治療の状況によっては通常の医療保険に入れる可能性があります。過去にコレステロール値が高いと診断を受けても、その後の投薬や生活習慣の改善により現在の数値が一定の範囲内に収まっていれば加入できるケースもあるのです。基準となるコレステロールや中性脂肪の数値は保険会社によって異なります。症状が軽く、大きな病気にかかったことがなければ、場合によっては無条件や保険料割り増し等の条件付きで通常の医療保険に入れることがあります。

告知が必要

脂質異常症と診断されてから保険に加入する際には必ず保険会社に告知する必要があります。告知する内容としては以下のようなものになります。

  • 治療開始の時期
  • 現在のコレステロール値、中性脂肪値
  • 服薬中の薬の名称
  • 合併症の有無
  • 健康診断の結果

なお、脂質異常症であることを隠すことや、コレステロール値や中性脂肪値を低く申告して申し込むのは告知義務違反となります。もし嘘をついて加入しても、保険金が支払われない場合や契約自体が解除される場合があります。保険会社への告知は嘘をつかずに正しく行うようにしましょう。

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なぜ保険に入りにくくなる?

脂質異常症は、血液中のLDL(悪玉)コレステロールが増えて血管の壁に付着し血管が細くなる状態を引き起こしますが、普段の生活では自覚症状がないため気付きにくい病気です。また、HDL(善玉)コレステロールは増えたLDLコレステロールや血管壁に付着したコレステロールを取り除いて肝臓へ戻してくれるため、HDL値が低い場合も脂質異常症となります。 血管が細くなったまま放置すると動脈硬化を招き、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こすリスクが高くなります。

脂質異常症になると健康な人よりも入院や手術をする可能性が高くなり、保険会社としては保険金を支払わなければなりません。そのため、医療保険への加入が難しくなってしまうのです。

脂質異常症でも入れる保険は?

通常の医療保険に申し込んだけれども加入を断られてしまったという場合でもまだあきらめる必要はありません。次に紹介する引受基準緩和型医療保険であれば加入できる可能性があります。

引受基準緩和型医療保険

引受基準緩和型医療保険とは、「持病があっても入りやすい」などと宣伝されている医療保険で、保険会社が契約を引き受ける基準が緩やかになっています。 健康状態に関する告知が3~5項目程度の「はい」か「いいえ」で答えられる質問となっていて、それにすべて「いいえ」と答えることができれば申し込みが可能となっています。告知項目は以下のようなイメージです。

  • 現在入院中ですか?
  • 過去3か月以内に入院や手術、検査をすすめられたことはありますか?
  • 過去2年以内に病気やケガで入院したことや手術をしたことはありますか?
  • 過去5年以内にがん(悪性新生物)で入院または手術をしたことはありますか?

※あくまでもイメージです。告知項目は保険会社によって異なります。

脂質異常症の悪化も保障される

引受基準緩和型医療保険では、もし脂質異常症が進行して心筋梗塞や脳卒中等になってしまった場合でも保障対象となることが多いです。責任開始日前にすすめられていた入院・手術に対しては保障されませんが、症状の悪化でさまざまな合併症の危険がある脂質異常症にとってはメリットといえます。
特に重度の脳卒中になった場合は手術や治療の後もリハビリをおこなうため、入院期間が数か月から半年と長期化することもあります。手術代や入院代などの費用を気にせずに治療に取り組みたい場合には、引受基準緩和型医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。

通常の医療保険でもいえることですが、契約を引き受ける基準は保険会社によって異なります。A社では入れなかったけどB社では加入できたということも起こり得ます。医療保険に入りたいという場合は保障内容を比べるという意味でも複数の会社を比較してみることが大切です。

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引受基準緩和型医療保険のデメリットは?

引受基準緩和型医療保険は持病がある方でも入りやすいというメリットがありますが、当然いくつかのデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか紹介します。

保険料が割高

引受基準緩和型医療保険は通常の医療保険と比べて保険料が高くなっています。持病がある方は健康な方と比べて入院や手術をする確率が高いので、保険金を請求する確率も高くなります。多くの保険金が請求されるのに保険料が通常の医療保険と同じでは保険を運営していくことができません。したがって、引受基準緩和型医療保険は通常の医療保険と比べて保険料が高くなっているのです。

一定期間は保障が半分になる商品もある

商品によっては、加入後1年間など一定期間内の入院給付金や手術給付金などの給付額が50%に削減されます。脂質異常症と関係がない病気・ケガによる入院や手術であっても保障額が減らされてしまうので注意しましょう。なお、最近ではこの保障が削減される期間がない保険商品も出てきているため、気になる方は複数の保険会社の商品を比べてみることをおすすめします。

特約が少ない

引受基準緩和型医療保険では通常の医療保険と比べて特約の種類が少なくなっていることがあります。入院や手術以外にも様々なことに備えたいと思っていても該当する特約がなく、保障をあきらめざるを得なかったり別の保険を探さなければいけなかったりすることもあるのです。また、特約が用意されていても通常の医療保険のものよりも保険料が高く設定されていることもあります。

引受基準緩和型医療保険では、保険料が割高になる、保障が削減される場合もある等のデメリットもあります。加入を検討する場合には保障内容と保険料のバランスを踏まえた上で、継続的に保険料を支払っていけるかを考えた方がよいでしょう。なお、心筋梗塞や脳卒中などの合併症が起きてしまった後はさらに加入へのハードルが上がる可能性があります。医療保険が必要な場合は症状が悪化する前に検討することが大切です。

脂質異常症でも入れる保険を探してみる

脂質異常症を改善するには?

生活習慣病の一つである脂質異常症は、食事や運動によってコレステロール値や中性脂肪値の改善が期待できます。数値が低くなれば合併症の予防につながるだけでなく、通常の医療保険に加入できる可能性も出てきます。ここでは、生活習慣を見直すポイントを説明します。

原因

そもそも脂質異常症の主な原因として、①肥満 ②糖尿病 ③更年期 ④高血圧 ⑤喫煙 ⑥遺伝 ⑦低コレステロール血症 があげられています。

予防

生活習慣病の改善は①禁煙 ②食生活の是正 ③身体活動の増加 ④適正体重の維持と内臓脂肪の減少 が基本の4つの柱です。

①禁煙:喫煙は善玉コレステロールを低下させます。喫煙によって発生する一酸化酸素が動脈の一番内側の壁(細胞)を破壊し、動脈硬化を促進させます。また、煙草に含まれているニコチンは血管を収縮させ血圧を上げてしまいます。

②食生活の是正:総エネルギー量や脂質摂取量を適正に保ちましょう。
 ・1日の総エネルギー量の目安 適正エネルギー摂取量=標準体重*×25~30kcal  
*:標準体重=〔身長(m)〕×〔身長(m)〕×22
 ・1日の脂質摂取量の目安 1日300mg以下

③身体活動の増加
 適度な運動をすることにより、善玉コレステロールが増え、中性脂肪が下がります。汗ばむ程度の軽い有酸素運動を1日30分以上を毎日、最低1週間に3回以上(180分/週以上)行うようにし、長く続けることが大切です。
有酸素運動:早歩き、水泳、水中歩行、サイクリング、ラジオ体操、社交ダンスなど

④適正体重の維持と内臓脂肪の減少
 動物性脂肪を少なくし、植物性・魚肉性脂肪を摂取するようにしましょう。また、動物肉より魚肉、大豆蛋白を多く摂取しましょう。

治療法

治療法としては食事療法、運動療法、薬物療法の3つがあり、基本的に3~6か月の十分な食事療法と運動療法ののちに薬物療法が開始されます。生活習慣改善への努力が限界に達していると薬物療法が開始されることが多いです。
なお、不十分な食事療法のもとでは薬剤の効果は減少してしまう為、薬物療法が開始されても、食事療法と運動療法を平行して行うことが望ましいです。

食事療法

①栄養バランスの良い食事をとりましょう。
コレステロールを下げるための食事でも、健康な体を維持するために必要な栄養をとることが前提です。
蛋白、糖分、脂質、ビタミン、カルシウムや鉄などのミネラルなど、偏ることなく摂取することが大事です。

②植物性脂質を多く、動物性脂質を控えめにとりましょう。
動物性脂肪には血液中のコレステロールを上げる働きのある飽和脂肪酸が含まれています。植物性脂肪に含まれている不飽和脂肪酸は血液中のコレステロールを下げる働きがあります。
肉より魚を多く摂りましょう。1日の摂取量の目安は白身魚では1切れ、青背の魚では1/2切れ、赤身の肉類では60~80gです。1日の脂肪摂取量は50~60g未満とし、動物性脂肪1に対して植物性脂肪2の割合で摂取しましょう。魚の脂肪は働きから植物性に入ります。イワシ、サバ、マグロには高度不飽和脂肪酸が含まれ、コレステロールを下げ、動脈硬化を予防します。

③食べ過ぎは禁物です。総カロリーをチェックしましょう。
食べ過ぎなどでカロリーを摂りすぎると脂肪合成を高めてしまうので、標準体重を守るようにしましょう。

④食物繊維は多く摂りましょう。
野菜、果物には食物繊維が多く含まれ、コレステロールの排泄を促します。穀類、野菜類、果物類、いも類、藻類、きのこ類などに食物繊維が多く含まれています。コレステロールの多い食品を食べる時はこれらの商品も同時に加えバランスをとりましょう。

⑤甘いものの摂りすぎに注意しましょう。
菓子や甘い果物などの糖分の摂りすぎは、肥満の原因になります。また、善玉コレステロールを低下させる働きがある為、なるべく少なめにしましょう。

⑥コレステロール摂取量に注意しましょう。
コレステロールの摂取は1日ほぼ300mg以下にしましょう。目安としては、高LDLコレステロール血症の場合、卵1日25g(1/3個)、牛乳は低脂肪で150mLです。
モツやレバーなどの内臓部分はコレステロールを多く含むので控えましょう。
コレステロールを上げる心配のない植物性蛋白(大豆食品など)や、魚介類(内臓を含まない)を積極的に摂りましょう。

⑦味付けは薄味にしましょう。
血圧に注意し、調理は酸味、香味野菜、スパイスなどを上手に使いましょう。
1日の食塩量を10g以下とし、特に血圧の高い人は1日6g未満にしましょう。

⑧ビタミンE、C、カロチンを摂りましょう。
コレステロールの酸化を防ぎ動脈硬化を進めにくくします。果物は1日1個(1日80~100kcal以内)、いも類、緑黄色野菜、種実類を十分に摂りましょう。
製造後日数を経て保存の悪い加工食品は過酸化脂質が多く、動脈硬化や肝障害の原因となるので、避けましょう。

⑨お酒はほどほどにしましょう。
適量のアルコールは体によいですが、飲みすぎると血液中の中性脂肪を増やします。
適量のアルコールの目安(1日):ビール1本(中瓶)、日本酒ならば1合、ワイン2杯

積極的に食べた方がよい食べ物

・魚:ブリ、サバ、サンマ、イワシなど
・大豆とその加工品:豆腐など
・繊維質の多いもの:キノコ類、海藻、こんにゃくなど
・いも類:サツマイモ、ジャガイモ、サトイモなど
・緑黄色野菜:カボチャ、ホウレンソウ、ブロッコリー、ニンジンなど
・果物:リンゴ、キウイ、ミカンなど

運動療法

早歩き、水泳、サイクリング、ジョギングなどの有酸素運動が効果的です。ポイントは太ももやお尻の筋肉をダイナミックに動かすことです。
運動の強さは「ちょっとキツイけれど運動できる」程度を目安にすると良いです。この強度については、一般に中等度の強度の有酸素運動(最大酸素摂取量の約50%前後もしくは「心拍数=138-(年齢÷2)」)を行うことが勧められています。

薬物療法

薬剤療法で使用される主な薬剤の特徴と副作用です。

薬剤 特徴 副作用
・HMG-CoA還元酵素阻害薬
・プロブコール
・陰イオン交換樹脂
・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
・フィブラート
・ニコチン酸誘導体
・EPA
・植物ステロール
・血液中のコレステロールや中性脂肪の量を下げる。
・末梢の血管を拡げて血圧を下げる。
・血を固まりにくくして血栓ができるのを抑えて血液の流れをよくする。
・肝臓の働きを改善する。
・いらいら、動悸、頭痛、不安、うつ(不定愁訴)等の症状を改善する。

・横紋筋融解症
脱力感、手足のしびれまたはこわばり、筋肉の痛み、赤褐色尿

・肝機能障害
体がだるい、白目が黄色くなる、吐き気、食欲不振、皮膚のかゆみ、皮膚が黄色くなる、尿が黄色い

・過敏症
発熱、疲れやすい、体重減少、関節や筋肉の痛み、青あざができる、まぶた・唇・舌の腫れ、息苦しい、蕁麻疹

・心室性不整脈、湿疹(プロブコールのみ)
意識消失、めまい

・出血傾向
鼻血、歯茎の出血、青あざができる、血が止まりにくい

・皮膚障害
紅班、脱毛、光線過敏、発疹

・腸管穿孔、腸閉塞
高度の便秘、持続する腹痛、嘔吐

まとめ

脂質異常症はそのまま放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中の要因にもなるので、治療状況や現在のコレステロール値などによっては通常の医療保険に入ることができない場合があります。しかし、通常の医療保険に入れなくても引受基準緩和型医療保険であれば加入できる可能性があります。保険料が割高などのデメリットもありますが、医療保険に入りたいという方は検討してみましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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