介護保険のコラム

要介護認定はどのような基準で行われるの?

投稿日:2020年3月24日 更新日:

公的介護サービスは申し込めばすぐに受けられるものではなく、要介護認定を受ける必要があります。また、民間の介護保険でも保険金支払の基準に要介護認定を用いているものがあります。このように、要介護認定は介護に関連するサービスで重要な役割を担っていますが、どのような基準で要介護認定が行われているのでしょうか。

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要介護認定の基準

要介護度はどれくらいの介護サービスを行う必要があるのかをもとに判定します。訪問調査の結果から推計される、その方に対して行われると思われる介護に要する時間(要介護認定等基準時間)の合計が何分かで要介護度の一次判定がなされます。

要介護度認定等基準時間は次の5つの分野ごとに計算されます。

直接生活介助 身体に直接触れて行う入浴、排せつ、食事等の介護等
間接生活介助 衣服等の洗濯、日用品の整理等の日常生活上の世話等
問題行動関連介助 徘徊、不潔行動等の行為に対する探索、後始末等の対応
機能訓練関連行為 嚥下訓練の実施、歩行訓練の補助等の身体機能の訓練及びその補助
医療関連行為 呼吸管理、じょくそう処置の実施等の診療の補助等

各分野で計算した要介護認定等基準時間の合計で要介護度の一次判定がされます。要介護度の認定基準は以下の通りです。

要支援 5分野の要介護認定等基準時間が25分以上32分未満またはこれに相当する状態
要介護1 5分野の要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態
要介護2 5分野の要介護認定等基準時間が50分以上70分未満またはこれに相当する状態
要介護3 5分野の要介護認定等基準時間が70分以上90分未満またはこれに相当する状態
要介護4 5分野の要介護認定等基準時間が90分以上110分未満またはこれに相当する状態
要介護5 5分野の要介護認定等基準時間が110分以上またはこれに相当する状態

出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

※要介護認定等基準時間は1分間タイムスタディという特別な方法による時間であり、実際に家庭で行われる介護時間とは異なります。

要介護度の判定は、介護認定審査会において一次判定結果を原案として、要介護度別に示された複数の「状態像の例」の中から要介護認定を受けるお年寄りの状態像に近いものを選び、それの属する区分に応じて最終判定がなされます。

身体状態の目安

要介護認定の基準は上述の通りなのですが、各要介護度で実際にどのような身体状態であるかはわかりづらいです。そこで、要介護度別に身体状態の目安も紹介します。

介護認定 身体状態の例
自立(非該当) 歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能であり、かつ、薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態
要支援1

要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態

食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、立ち上がりや片足での立位保持などの動作に何らかの支えを必要とすることがある。入浴や掃除など、日常生活の一部に見守りや手助けが必要な場合がある。
要支援2

生活の一部について部分的に介護を必要とする状態

食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、ときどき介助が必要な場合がある。立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い。問題行動や理解の低下がみられることがある。この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。
要介護1
要介護2

軽度の介護を必要とする状態

食事や排泄に何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱は何とかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下がみられることがある。
要介護3

中等度の介護を必要とする状態

食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりや片足での立位保持などがひとりでできない。入浴や衣服の着脱などに全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。
要介護4

重度の介護を必要とする状態

食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要。立ち上がりや両足での立位保持がひとりではほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護5

最重度の介護を必要とする状態

食事や排泄がひとりでできないなど、日常生活を遂行する能力は著しく低下している。歩行や両足での立位保持はほとんどできない。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「公的介護保険で受けられるサービスの内容は?

要介護認定の結果に納得がいかない場合は?

判定された要介護度によって受け取れる介護保険サービスの限度額や民間の保険の給付対象となるかが変わってくるので、要介護度の判定に納得がいかないということも出てくると思います。そうした場合は2つの対処方法があります。

まず一つ目が各都道府県に設置されている「介護保険審査会」に審査請求(不服申し立て)を行うことです。審査請求の期限は判定を知った日の翌日から起算して3か月以内です。なお、審査請求で求められるのは行政処分の取り消し(ここでは要介護認定の判定の取り消し)です。審査請求が通っても再び要介護認定の申請を行うことになります。

もう一つの方法が区分変更申請を行うことです。区分変更申請は本来、認定の有効期間中に本人の状態などに変化があって要介護度の区分が変わったと判断した段階で行うものですが、実態としては要介護認定に不服な人が利用する場合があります。ただし、再度審査されても希望の区分に認定されるわけではないということには注意が必要です。

まとめ

要介護認定は訪問調査の結果から推定される、5つの分野での要介護認定等基準時間の合計から一次判定がされ、それを原案として介護認定審査会で最終判定がなされます。判定が不服な場合は、介護保険審査会に審査請求をして判定の取り消しを求めるか、区分変更申請を行います。なお、再度審査を行っても希望通りの要介護度に認定されるわけではないことには注意が必要です。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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