がん保険のコラム

乳がんで切除された乳房の再建は保険適用されない? 治療法により異なる?

投稿日:2022年12月20日 更新日:

乳がんの切除により変形または失われた乳房をできる限り取り戻すために行う乳房再建手術。乳房再建の方法は「皮弁法」や「シリコンインプラント法」「脂肪注入法」など様々な手段があります。しかし健康保険が適用されるものとされないものがあるということをご存知でしょうか? 現在乳がんを発症していない方も、もし今後乳がんに罹患した際にどのような方法で乳房再建できるのか、自己負担額もあわせて確認してみましょう。

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健康保険が適用される再建方法は?

自家再建

患者自身のお腹や背中の組織(自家組織)を使用して胸に移植する方法です。保険適用で自己負担額は30万円~60万円程度になります。

腹直筋皮弁法

腹部の脂肪の多い部分を切開して皮膚、脂肪、筋肉の一部を切り離し胸に移植して乳房を作る方法です。個人差はありますが腹部は脂肪が取りやすく柔らかいため、ボリュームのある乳房や下垂した乳房の形成に向いています。

デメリットは腹部に傷がつくため正面から見た時に傷跡がわかりやすいこと、腹部に傷をつけ筋肉を切るため出産予定のある人や、仕事やスポーツで腹筋をよく使う人には向いていないといった点が挙げられます。

広背筋皮弁法

背中を紡錘形(レモンのような形)に切開して皮膚、脂肪、腹筋を、血管をつなげたままの状態で皮膚の下をくぐらせて前に持っていき乳房を作る方法です。傷がつくのが背中になるため正面から見た時に目立たなかったり、腹直筋皮弁法に比べて手術時間が短く合併症も比較的少ないというメリットがあります。

しかし背中にあまり脂肪がない人は再建に必要なだけの脂肪を取れないため、そういった患者は腹直筋皮弁法のほうが良いでしょう。

穿通枝皮弁(大腿部、大網、臀部など)

穿通枝(せんつうし)とは筋肉の中や下を通る太い血管から枝分かれして脂肪層や皮膚に向かって走っている細い血管のことです。腹直筋皮弁法や広背筋皮弁法は血流を保つために筋肉ごと血管を持ってくる手術法ですが、穿通枝皮弁は筋肉の中を通っている血管(穿通枝含む)だけを取り出し、穿通枝および穿通枝の血液の流れの先にある脂肪層と皮膚を移植します。

体の様々な部位から組織を取ることができる上に、組織を取ってくる部分の機能をできるだけ損なわずに温かく柔らかな乳房を作ることができるというメリットがあります。しかし組織を取ってくる部分に傷ができてしまったり、一本の穿通枝で広範囲の皮弁への血流を賄おうとすると血行が悪くなり部分壊死や脂肪壊死という状態になり固いしこりができてしまうというデメリットもあります。

参考 Medical Note 穿通枝皮弁による乳房再建の特徴

インプラント

人工物であるシリコンを使った乳房再建は主に乳房切除術(全摘術)を行った患者が対象です。2013年7月からラウンド型、2014年1月からアナトミカル型(乳房の形に近いより自然な型)の保険適用が開始されており、比較的最近保険適用された再建法です。健康保険適用になるのは全摘術の乳房の再建に限られ、その場合自己負担額は40万円~60万円程度になります。

シリコンインプラントは2回に分けて手術を行います。

1回目:ティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)

乳がん手術後にティッシュエキスパンダー(組織拡張器)を大胸筋の下に挿入して傷を閉じます。退院後、ティッシュエキスパンダーは2~3週間に1回程度の通院で生理食塩水を注入して徐々に拡張させ、皮膚を伸ばして安定させるまで6ヶ月程度そのままにします。

2回目:シリコンインプラントへ入れ替え

2回目の手術でティッシュエキスパンダーを取り出し、シリコンインプラントに交換します。この後希望により乳輪乳頭を再建します。

シリコンインプラントは自家再建での乳房再建に比べて手術時間や入院期間が短く体への負担も小さいというメリットがあります。また、乳房以外の部位を傷つけません。

その一方でデメリットも数多くあり、下記のような状況を望まない人にはインプラントによる再建術はおすすめできません。

  • 手術を2回行う必要がある
  • 感染や破損、広範囲の皮膚壊死が起きた場合は人工物を取り出す必要がある
  • 手術後に人工物の位置が移動し再手術が必要になることがある
  • 仰向けになった時や動いた時に乳房の自然な移動がない
  • 再建乳房の形は変わらないため加齢と共に健康な方の乳房が下垂すると左右差が生じる 等

保険適用の再建手術は高額医療費制度対象に

保険適用となる医療費の自己負担額(医療機関や薬局の窓口で支払った額)が高額になり一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合は、高額医療費制度の対象となり差額が戻ってきます。加入先の医療保険者(健康保険証を発行している機関)に申請書を提出する必要があるので、忘れずに申請しましょう。

更に1年間の医療費が一定額を超過した場合は確定申告で医療費控除を対象となるため、こちらも忘れないように留意しておきましょう。

脂肪注入法は2022年現在は健康保険適用外

脂肪注入法

患者から吸引した皮下脂肪を注入する脂肪注入法は今大きな注目を集めている乳房再建術で、以下のようなメリットがあります。

  • 入院期間が短い
  • 体へのダメージが少ない
  • 本物に近く形が自然、質感が良い
  • 自家再建と異なり傷跡が目立たない
  • シリコンインプラントと異なりメンテナンスが不要

脂肪も吸引できて乳房再建にも活用できていい事づくし…と思われますが、デメリットとしては以下が挙げられます。

  • 術後の状態や患者が痩せ型で皮下脂肪が少なかったりすると脂肪注入法が不適応となることもある
  • 実施できる医療機関が限られている
  • 健康保険の適用外(自由診療)のため患者の費用負担が大きい

脂肪注入は一度の手術で全て行うわけではなく、少量を複数回に分けて注入していく必要があります。更に脂肪の精製には特殊な専用機器を使用し、脂肪の定着率を上げようとするほどコストがかさみ片側100万円~の自己負担額がかかります。保険適用外のため高額医療費制度も利用できません。

脂肪注入法は近々保険適用になる動きがあると言われていますが、残念ながら2022年12月時点では保険適用外となっています。

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がん保険で治療にかかる費用をカバー

がん治療は入院と手術だけで終わらず、退院後も定期的な通院治療が必要になる患者も多く、中には退院後に体調不良が続いたため思うように働けなくなり、転職や休職を余儀なくされるケースも。就業時間の短縮や休職により収入が減少してしまった場合も、がん保険の通院保障や診断一時金で生活費をカバーできます。

また、乳房再建術を受けることで給付金を貰える特約があるがん保険もあります。お金の問題で治療の選択の幅を縮めたくないと考えている方は、いざという時に備えてがん保険を検討してみませんか?

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