収入保障保険は被保険者が死亡したとき、あるいは高度障害状態になったときに保険金を受け取れる保険です。死亡保険金か高度障害保険金か、また年金形式で受け取るか一時金で受け取るか、保険料負担者と被保険者と保険金受取人の関係によって税金のかかり方が異なります。ケース別に確認していきましょう。
目次
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高度障害保険金の場合は税金がかからない
まずは高度障害状態になったときに受け取る保険金についてですが、これの受取には所得税も贈与税もかかりません。これは、所得税法施行令第30条第1号、所得税基本通達9-20、9-21に基づいています。高度障害保険金は「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に該当するものとして取り扱われるので非課税となっているのです。
なお、保険金を受け取るときには税金がかかりませんが、受け取った保険金を使い切れないまま死亡して相続が発生した場合は、残額については相続税の課税対象となります。
死亡保険金は受け取り方や契約形態によってかかる税金の種類が変わる
死亡保険金の場合、受け取った保険金は課税対象となります。しかし、一時金形式か年金形式か、保険料負担者と被保険者と保険金受取人の関係によって税金の種類が変わります。
保険金を一時金で受け取った場合
一時金で受け取った場合、保険料負担者と被保険者と保険金受取人の関係によって相続税、所得税・住民税、贈与税のいずれかの課税対象となります。
相続税の対象となる場合
夫が自分を被保険者として収入保障保険を契約し、夫死亡時の保険金受取人が妻になっているなど、保険料負担者=被保険者≠保険金受取人の場合は相続税の対象となります。保険金受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は除く)の場合、「500万円×法定相続人の人数」の金額は非課税になります。
所得税・住民税の対象となる場合
夫が妻を被保険者として収入保障保険を契約し、妻死亡時の保険金受取人が夫になっているなど、保険料負担者=保険金受取人≠被保険者の場合は所得税・住民税の対象となります。受け取った保険金から払い込んだ保険料を差し引いた金額が一時所得となります。一時所得は特別控除50万円を引いた残りの金額の1/2が所得税の課税対象です。
贈与税の対象となる場合
夫が妻を被保険者として収入保障保険を契約し、妻死亡時の保険金受取人が子になっているなど、保険料負担者≠被保険者≠保険金受取人の場合は贈与税の対象です。暦年贈与の場合、110万円の基礎控除があります。
保険金受取の事例別の税金の種類
保険料負担者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻や子 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税・住民税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
保険金を年金形式で受け取った場合
保険金を年金形式で受け取った場合、被保険者が亡くなった時と年金を受け取った時の2段階に分けて考える必要があります。
被保険者が亡くなった時
被保険者死亡時には一時金相当額が年金受給権として相続税、あるいは贈与税の対象となります。
保険料負担者=被保険者≠保険金受取人の場合は相続税、保険料負担者≠被保険者≠保険金受取人の場合は贈与税の対象です。相続税の場合は「500万円×法定相続人の人数」の金額が非課税になります。また、贈与税の場合は110万円の基礎控除があります(暦年贈与の場合)。
年金を受け取った時
年金を受け取った時には所得税(雑所得)・住民税の課税対象となります。なお、二重課税を避けるために、被保険者死亡時に相続税・贈与税の対象となった分については課税対象とはなりません。1年目は全額非課税で2年目から徐々に所得税・住民税の課税対象となる金額が増えていきます。
参考:国税庁(相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係)
保険金受取の事例別の税金の種類
保険料負担者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 被保険者死亡時 | 年金受取時 |
---|---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻や子 | 相続税 (年金受給権評価額に対して) |
所得税(雑所得)・住民税 (相続税課税対象分は非課税) |
夫 | 妻 | 夫 | ‐ | 所得税(雑所得)・住民税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 (年金受給権評価額に対して) |
所得税(雑所得)・住民税 (贈与税課税対象分は除く) |
保険金受取人は誰がいい?
収入保障保険の保険金受取時の税金関係について説明してきましたが、保険金受取人は誰に設定するのがよいのでしょうか?まず、保険金受取人に設定することができる人についてですが、原則としては配偶者と二親等以内の親族(両親、子、祖父母、孫、兄弟姉妹)に限られています。その中の誰にするかですが、収入保障保険を契約する目的に従って、つまり、被保険者が死亡することによって経済的に困る人を保険金受取人にするのがよいでしょう。
基本的に配偶者を保険金受取人に指定することが多いですが、シングルマザー・ファザーが契約する場合など子供を保険金受取人に指定したいと思うこともあると思います。そうした場合に注意が必要なのが、未成年の場合は保険金を受け取る手続きができず、親権者や未成年後見人が行うことになっているということです。したがって、自分の意に反した使い方をされないように、未成年後見人を指定する遺言書を用意しておく、子供が成人するまでは保険金受取人を信頼できる大人の人に設定しておくという工夫が必要でしょう。
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保険金受取人が死亡した場合は?
保険金受取人が死亡した場合は速やかに受取人変更の手続きを行いましょう。変更の手続きを行う前に被保険者が死亡した場合には、元の受取人の法定相続人が保険金を受け取ることになります。特に子供がいない場合は元の受取人の両親や兄弟姉妹など元の契約の意図とは違う人に保険金が渡ることとなります。
まとめ
収入保障保険の保険金を受け取る際の税金について説明しましたが、特に年金形式で受け取る場合において複雑な税制となっています。一時金の場合も年金形式の年金受給権の場合も相続税がかかる形式で受け取るのが税負担が軽い傾向にあります。ただし、個別の財産の状況にもよりますので詳しくは税理士等に相談してください。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。