働けなくなった時の保障としての「就業不能保険」や「所得補償保険」以外にも、高度障害状態となった場合に死亡保険金と同額が受け取れる「高度障害保険金」があります。
でも、高度障害保険金ってどういう時に支払われるのか、障害の程度はどのくらいなのか等、知らないこともたくさんありますよね。
万が一寝たきりの状態となり、高度障害保険金の請求を忘れていて、お亡くなりになってしまうなどの請求漏れがないように、高度障害保険金について解説していきます。
目次
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認定されるポイント
高度障害保険金は、被保険者が責任開始日以降に傷害または疾病を原因として高度障害状態に該当し、また、その状態が治療をしてもこれ以上回復見込みがないと判断された場合に、死亡保険金と同額が受取人に支払われます。もしくは、高度障害状態に該当した翌月以降の保険料が免除となります。
しかしながら、死亡保険金と同額が支払われることからも、認定される条件としてかなり重篤な状態ではないと高度障害保険金は支払われません。では、認定されるポイント3つを紹介します。
高度障害状態とは
まず、約款に定める「高度障害状態」に該当する必要があります。その「高度障害状態」の定義は、各保険会社の約款に記載されており言い回しが異なっていたりしますが、大きな違いはなく以下の通りです。
「高度障害状態」の定義
1,両眼の視力を永久に失ったもの「視力を永久に失ったもの」とは、矯正視力が両眼とも0.02以下で、かつ回復の見込みがない状態のことです。なお、視力の測定は、「万国式試視力表」という検査方法で実施され、1眼ずつ矯正視力を測定されます。
2,言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
「言語の機能を失ったもの」とは、口唇音・歯舌音、口蓋音、喉頭音の4種のうち3種以上の発音が不能で回復の見込みがない状態、言語中枢の損傷による失語症によって音声や言葉による意思疎通が不可能であり回復の見込みがない状態、声帯を摘出したために発音が不可能な場合です。
また、「そしゃくの機能を失ったもの」とはあご・歯・舌の障害等のため流動食以外のものがまったく摂取できない状態です。
3,中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
「常に介護を要するもの」とは、食物の摂取、排便・排尿・その後始末、および衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を必要とする状態です。
4,両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
5, 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
「その用を全く永久に失ったもの」とは、その運動機能を失ったものをいい、上・下肢の完全運動麻痺、または上・下肢においてそれぞれ3大関節(上肢においては肩関節、肘関節および手関節、下肢においては股関節、膝関節および足関節)の完全強直で動かせず、回復の見込がない状態です。
6, 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
片方の腕について手首以上で切断し、かつ、片方の下肢を足首以上で切断、または片方の下肢3大関節(股関節、膝関節、足関節)がすべてまったく動かなくなった状態です。
7, 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
片方の上肢3大関節(肩関節、肘関節、手関節)がすべてまったく動かない、かつ、片方の下肢を足首以上で切断した状態です。
上記1~7のうちいずれか1つでも該当した場合に、「高度障害状態」として認定されますが、思った以上に重篤な状態であると思った方も多いのではないでしょうか。
その為、診断書のみの情報だけでは判断がつかないこともあり、主治医に詳細を確認をするなどをすることから時間がかかってしまうこともあります。経済的負担が大きいため、保険金を早く受け取りたい気持ちがあるかと思いますが、時間に余裕をもって請求しましょう。
後遺障害とは違う
似てる用語で後遺障害がありますが、高度障害とは別物です。
交通事故が原因で怪我を負い、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態(=症状固定)となり、身体的たまは精神的にも将来にわたってその後遺症が残ってしまった状態のことを指します。
そしてその後遺症のうち、後遺障害認定されたものが後遺障害となります。
したがって後遺障害と高度障害は別物であり、後遺障害認定されたから必ずしも「高度障害状態」に該当するとは限りません。
例えば、交通事故により両足を切断することになってしまい、障害等級2級に認定された場合は、「 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの」に該当することから高度障害保険金のお支払いとなります。
しかし、交通事故により左足だけ切断することになってしまい、障害等級4級に認定された場合は、高度障害状態の定義に該当せず、高度障害保険金のお支払いとはなりません。
回復の見込みがない
ポイント2つ目は、上記の「高度障害状態」に該当し、その状態が将来に向かって改善の見込みがない場合に、高度障害保険金の支払い対象となります。
高度障害保険金を請求する際には、一般的な診断書とは異なる各保険会社所定の高度障害保険金請求用の「障害診断書」の提出が必要になります。障害診断書には、症状回復の可能性有無、症状固定についての見解、これ以上症状が改善する見込みがなく症状固定した日を記載する欄があります。
それら診断書記載の内容をもって、症状が改善する見込みがないと判断された場合に高度障害保険金の支払い対象として認定されます。
責任開始日以降が保障対象
ポイント3つ目は、高度障害状態となった傷病、ならびにその原因となった傷病も責任開始日以降に発症および受傷していることが前提です。
なお、その原因となった傷病等が責任開始日以前であっても告知されていて、承認されたものであれば、その傷病等を原因として高度障害状態となった場合はお支払いとなります。
例)責任開始日:2023年8月1日
概要:脳梗塞を発症後に認知症となり、高度障害状態となった。
①2023年9月に「脳梗塞」を発症し、同月に「認知症」の症状が表れ、2023年10月1日に認知症と診断され、同日を症状固定日とした。
→「認知症」と因果関係のある「脳梗塞」の発症、診断、ならびに「認知症」の症状の出現、診断、症状固定日も責任開始日以降である為、「高度障害状態」の要件をクリアすれば高度障害保険金の支払い対象となります。
高度障害状態となった疾病は責任開始日以降であっても、それと因果関係のある疾病が責任開始日より前に発症したものであれば、支払い対象外となります。
②2023年6月に「脳梗塞」を発症し同月に診断され、同年9月に認知症の症状が現れ、2023年10月1日に認知症と診断され2023年10月1日を症状固定日とした。
→「認知症」と診断されたのは、責任開始日以降ですが、「認知症」と因果関係のある原因の「脳梗塞」の発症が、責任開始日より前である為、高度障害保険金の支払い対象外となります。
「高度障害状態」の事例
「高度障害保険金の認定されるポイント3つ」を踏まえたうえでお支払いとなる事例、お支払いとならない事例を挙げて解説します。
お支払いとなる事例
①脳梗塞の後遺症で寝たきり
脳梗塞を発症し、脳出血後に寝たきりとなり、日常生活は他人の手を借りないと送ることが出来ず常に介護が必要な状態となってしまった。
→以下のような「食物の摂取」「排便・排尿・その後始末」「衣服着脱」「起居」「歩行」「入浴」の日常生活動作をいずれも全て自力で行うことが出来ず、回復する見込みがないと医師より判断された場合、高度障害状態の定義「中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの」に該当し、高度障害保険金のお支払いとなります。
自分でスプーンやフォークを使って食べ物を口まで運ぶことができず、他人の手を借りないと摂取することができない。
他人の介抱がないと排泄が自分でできず、また、排泄した後に自力でぬぐうことができない
衣服の着衣・脱着を自力できない
横になった状態から、自力で起き上がることが出来ない
他人の手がないと自分で歩くこができない
他人の介助がないと浴槽に出たり入ったりすることが出来ない
お支払いとはならないケース
他人の介護を要するが、リハビリテーションによって自力で起き上がることや、杖を使っての歩行など、一部身の回りのことができるようになった。
→この場合は、「常に介護を要するもの」には該当しないため、高度障害状態には該当せず、高度障害保険金のお支払いとはなりません。
②糖尿病網膜症による両目失明
糖尿病網膜症が悪化し、両目の視力を完全に失ってしまい回復の見込みもない。
→両目視力を完全に失い、回復の見込みがないと医師より診断された場合は、高度障害状態の定義「両眼の視力を永久に失ったもの」に該当し、高度障害保険金のお支払いとなります。
お支払いとはならないケース
糖尿病網膜症により視力が両目とも0.02以下であるが手術により視力が回復する見込みがある。
→回復する見込みがある場合は「両眼の視力を永久に失ったもの」に該当せず、高度障害保険金はお支払いとはなりません。
③交通事故による下半身麻痺
交通事故により下半身麻痺となり、両足とも全く動けなくなり回復見込みもなし。
→足の3大関節である股・膝・足の関節が全く動かず両足とも完全硬直してしまった場合は、高度障害状態の定義「両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの」に該当し、高度障害保険金のお支払いとなります。
お支払いとはならないケース
事故日は責任開始日前に発生し、下半身麻痺となった。
→支払い対象となるのは、責任開始日以後に発症または受傷したものとなる為、高度障害保険金はお支払いとはなりません。
高度障害保険金が支払われた後の契約
死亡保険金が支払われた場合、その契約は終了いわゆる「消滅」となりますが、高度障害保険金が支払われた後はどうなるのでしょうか。
高度障害保険金が支払われた後も消滅となり、また、医療保険等の給付金がある場合は消滅となることから給付金の請求はできず、死亡保険金についてはどちらかの支払いとなるので高度障害保険金請求後に死亡保険金は請求できません。
なお、就業不能保険等の高度障害保険金の保障がないものは、高度障害状態に該当した症状固定日の翌月以降の保険料が免除となり、その旨が保険証券に裏書されます。なお、過払いとなった保険料がある場合は返金されます。
高度障害保険金はいらいない?
高度障害状態の定義はなかなか厳しいし、該当する可能性も低いことから高度障害保険金はいらないのではないかと思うかもしれません。
しかし、一般的な医療保険等の給付金は、その疾病の治療目的に病院や診療所において入院・手術・通院した場合に支払われる為、例えば、介護の為に老人ホームで寝たきり状態の場合は、治療目的でもなく医療機関ではないことからお支払いの対象外となってしまします。
また、例えば、万が一の事故が原因で植物状態となりこれ以上回復する見込みがない場合、就業不能保険給付金の支払い対象に該当したとしても支払い限度がある為、限界があります。
そんな時、死亡保険金と同額の高度障害保険金を受け取ることができたら、老人ホームや介護費用にあてることができます。いつふりかかるか分からない‟働けなくなる状態”は、医療保険や就業不能保険でもカバー出来なくなった時、高度障害保険金が後ろ盾となってくれます。
被保険者に意思能力がない場合、受取人は誰になる?
高度障害保険金の受取人は基本的には、被保険者です。しかし、被保険者が高度障害状態であることから、被保険者が請求意思能力がない状態であることも考えられます。
そういった、被保険者に請求意思がない場合は指定代理人や成年後見人からの請求となり、受取人も指定代理人または成年後見人となります。
なお、請求者が被保険者、指定代理人、成年後見人によって提出する公的書類もそれぞれ異なり、また、公的書類となると時間もかかりますので、事前に余裕をもって加入保険会社に確認してから請求しましょう。
まとめ
ほとんどの定期保険や医療保険に付帯されている高度障害保険金ですが、認定されるには思った以上に厳しい条件をクリアしないといけません。
重い疾病により働けない状態となってしまった場合、最悪の場合植物状態や寝たきりになってしまう可能性もあります。
そうなると、「特殊寝台」「ポータブルトイレ」「移動用リフト」など様々な費用がかかってしまいます。
また、これ以上改善する見込みがないとなると、費用はかかる一方です。
万が一、高度障害保険金の付帯を忘れていてそのままお亡くなりになった場合、そのまま死亡保険金を払うだけとなってしまいます。
しかし、高度障害保険金が支払われた場合、上記の様な費用に充当することができ、家族の経済的負担だけでなく本人もより良い環境で過ごすことが出来ます。
少しでも思い当たる節があったら、加入保険会社に高度障害状態に該当するか確認して、請求漏れがないようにしましょう。